作品タイトル不明
14話 ライトvsルカン5
ルカンが召喚した魚型モンスター達を、僕へとけしかける。
未だ『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』が残留する水中に魚型モンスターを放っても死亡させるだけだ。
しかし、彼の狙いは魚型モンスター達で僕を倒すことではない。
魚型モンスターの死体、血などで視界を遮り、急接近。
自爆し、共倒れを狙ったのだが――。
(……念のため『SSSR 強固結界』を 解放(リリース) したけど、必要なかったかな?)
『SSSR 強固結界』――『SSR 結界』より、攻撃、魔術などを防ぐ強固な結界を作る。
僕はルカンの接近、自爆による道連れに気づくと、『SSSR 強固結界』を 解放(リリース) 。
念のため体を丸めて両腕ガードもしていたが、ルカンの自爆は、『SSSR 強固結界』の破壊までにはいたらなかった。
その程度の爆発なら、仮に『SSSR 強固結界』がなくても道連れにされることはなかっただろう。
(後からだから言えることだけど、ね。しかし……ルカンの言っていた『私達の切り札』って、この自爆のことなのかな?)
ナズナから聞いたゴウの自爆偽装の線も考えたが、ルカンの一部欠けた首が結界越しの水中に浮いている。
念のため『無限ガチャ』カードで、隠れていないか調査するが……。
隠れている様子はない。
この場に居るのは僕だけだ。
自分で気配を探るも、ルカンが隠れている様子はやはりない。
まず間違いなく彼は死亡した。
(死亡したのは確実だ。でも、だとしたら、『貴方だけはたとえ、私達の切り札を動かしても、確実に殺します』なんて口にするか?)
最初、ルカンが『私達の切り札』と口にした際、『私達』とは、竜人帝国側『ますたー』達の内部にまだ彼の仲間、『しー』のスパイが紛れ込んでいるのかと思った。
だが落ち着いて考察できるようになると、それはありえない。
仮に竜人帝国側『ますたー』達内部にまだルカンの仲間、『しー』のスパイが居たとして、自爆がその切り札というのは腑に落ちなかった。
ルカン自身の自爆が、僕を殺すためと情報を渡さないための切り札なら、『私達』と表現するのも妙だ。
なぜなら、ルカンだけが自爆し死亡しているのだから。
『達』と告げるのは間違っている。
また僕がルカンと同じ立場なら『「私達」と口にして、他にも、竜人帝国側「ますたー」達の内部に「しー」のスパイが居ます』なんて情報は漏らさない。
むしろ、漏らさず、竜人帝国側『ますたー』達の内部にもう『しー』のスパイがいないと誤認させたほうが色々物事を有利に運べる。
ルカンのような裏で動く人物がその考えに至らないはずがない。
短い戦闘だが、それぐらいは理解できるし、そんなことも分からない者にスパイがつとまるとは思えなかった。
(これは僕の直感でしかないが……最後のルカンの自爆。あれが彼の『最後の切り札』じゃない。切り札はもっと他にある)
しかも、自爆する間際、ルカンは一切絶望していなかった。
『僕を確実に殺せる』と自信満々で自爆した。
むしろ、最後の自爆攻撃は、僕を道連れにするためではなく、情報を渡さないための自死の意味の方が大きかったのか?
……だが、なぜかそうは思えなかった。
(死の瞬間、ルカンは笑っていた。まるで僕と再会して、今度は逆の立場――僕を絶望的状況に追い込み、今回の屈辱を自身の手で晴らせるのを楽しみにしているような死に際だった。決して、『情報を渡さないための自死』なんて生ぬるいものじゃない……)
そんな風に思ってしまえるのほど、ルカンの最後の自爆は不気味なものだった。
(…………)
結界の内側で僕は暫し思考した後、これ以上は情報が足りないので考えても仕方ないという結論に達し、数秒ほど沈黙する。
(……とりあえず、気持ちを切り替えよう。まずは考えるよりメイ達と合流し、僕の両親を殺し、故郷を破壊しつくしたヒロを捕らえるために先に進もう!)
ルカンの破損した頭部は一応回収しておこう。
エリーなら、この状態からでも情報を吸い出すことができるかもしれない。
他にも外部と連絡を取る手段がないか模索しよう。
ルカンの話を信じるなら、僕達は強制的に転移させられた。
なので今頃、あの場に居なかったメイ、アオユキ、エリー、ナズナ以外の『奈落』最下層メンバーは地上に置いてきた形になる。
今頃、皆、僕達が突然転移して姿を消したせいで驚き、慌てているはずだ。
(まずはひとつずつ、できることをしていこう)
僕は気持ちを切り替えると、自分にできることをひとつずつこなすため行動を起こすのだった。
☆ ☆ ☆
ライトがルカンを倒し、新たな行動を起こそうとする頃。
他の者達はというと……。
――ナズナは未だ一人、ダンジョンを進んでいた。
「ご主人様! メイ! アオユキ! エリー! どこだ!」
ダンジョンを勘で進み、そのたびに罠を起動。
回避、破壊していた。
最初はアトラクションとして楽しんでいたが、誰とも合流できずただ進むだけなので飽きてしまった。
ナズナは誰とも出会わないせいで、だんだん寂しくなり、声にも寂寥感が漂い始める。
下手なトラップより彼女にたいしてダメージを与えているほどだ。
「みんな! マジでどこに行ったんだよ!」
ナズナは全身を串刺しにするトラップを破壊後、思わず寂しげに叫んでしまうのだった。
☆ ☆ ☆
――メイはとある広場で 黒(ヘイ) と戦闘を繰り返していた。
「『 魔力糸(マジック・ストリング) 』、縛!」
「…………」
全方位から『 魔力糸(マジック・ストリング) 』が襲いかかり、敵を拘束。
そのまま身動きを押さえ込んでいい、糸を絞り圧死、切断を強化してバラバラに引き裂いてもいい。
捕らえられればだが。
黒は全方位からの攻撃を黒刀一本で切り裂き無力化。
そのままメイとの距離を縮めて、黒刀を振るう!
「『 魔力糸(マジック・ストリング) 』、集、剣!」
彼女は黒の接近に慌てて、『 魔力糸(マジック・ストリング) 』、を収束、真っ白な糸の剣を作り出した。
全、『 魔力糸(マジック・ストリング) 』を収束させたため、先程のように切り裂かれることはない。
メイはそのまま黒と鍔迫り合いをする……が、自身の不利を同時に悟る。
(レベル差はあれど、私は戦闘が苦手。相手は実力者で戦い慣れている。このままではかなり不利ですね)
メイはなんでもこなせる万能メイドだ。
だが、それ故に戦闘能力はそこまで高くない。
むしろ、戦闘する味方のサポートが得意なタイプである。
今回のように一人で実力者と戦うのを苦手にしているのだが……。
現状、自分一人しかいないため、そんな弱音を吐いている場合ではない。
慣れない戦闘、黒と切り結びつつも、どうにか倒す手段を模索するのだった。
☆ ☆ ☆
――逆にアオユキは1対2でも有利に戦闘を進めていた。
「にゃ!」
「こ、このクソ猫がァ!」
「ご、ゴウ! た、助けて!」
『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』で片足を拘束されたセスタが、ゴウを目がけて鈍器のように勢いよく振るわれた。
涙目のセスタを見捨てることができなかったためか、ゴウは回避ではなく、正面から受け止める。
当然、セスタの体重+アオユキの腕力+『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』により、レベル9000台のゴウでも耐えきれず、ダンジョン広場の壁にセスタ共々叩き付けられた。
「にゃ~!」
アオユキは追撃の手を緩めず、セスタから外した『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を蛇のようにうねらせて、再度投擲!
セスタ、ゴウと重なった二人へ『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を叩き込む。
再びダンジョン壁に強い衝撃が走った。
アオユキが2対1でも優勢なのは――ナズナによってセスタは、右目は眼帯、左腕、右足を失っている。
現在はヒソミがフレッシュゴーレムを作る技術で作った義足を使用している。
元の手足に比べればどうしても性能は落ちた。
結果、ゴウの足を引っ張る形になる。
またゴウはごりごりの近接戦闘型。
アオユキは中間距離を得意としている。
結果、足手まといを抱えたゴウ達を一方的に追い詰める結果になっているのだ。
ただし、あくまでこの優勢は『現状では』だ。
まだ決着はついていない。
この後どうなるかはまだ予断を許さなかった。
☆ ☆ ☆
最後、エリーはというと――。
無事に海水エリアを抜け、広い通路へと出た。
しかし、その広い通路は巨大なヒル、ナメクジ型モンスターの巣だった。
思わずエリーが叫ぶ。
「どうしてわたくしだけ、このような気持ち悪いモンスターに襲われないといけないんですの!?」
他がどうなっているかは分からないが、エリーは『自分だけ気持ち悪いモンスターと戦っている』というなぜか確信を持って思わず叫んでしまう。
彼女は叫びつつも倒すための攻撃魔術を発動させるのだった。