作品タイトル不明
13話 ライトvsルカン4
水中を足になったヒレで思いっきり蹴る。
その力で素早く水中をルカンに向かって接近。
杖を構えつつ、勢いに乗せて突く!
ルカンは慌ててその場を離脱し、回避に専念しだした。
さすがに水中での移動はあちらが一枚上手だ。
未だ足のヒレに慣れていないのもあり、どうしても反応が遅れてしまう。
「!」
レベル、戦闘、攻撃、防御能力など基本的に僕がルカンを全て上回っている。
そのことに気がついてさきほどまであった余裕を崩していたルカンだったが、しかし水中移動だけは自分が一枚上手だと、未だ慣れていない僕の足ヒレの動きに光明を見いだしたようだ。
彼はそのアドバンテージを利用し、とにかく僕から距離を取る。
距離を取ると、雷対策で骨魚を中心にモンスターを召喚。
僕から逃げつつ、距離を取り、配下のモンスターをけしかけて削り倒すつもりのようだ。
骨魚モンスターが、僕を目指して襲いかかってくる。
杖で突き、腕や足ヒレで骨を砕き倒していく。
その間にルカンは素早く距離を取り、補充するように配下モンスターを召喚する。
一見すると、僕が不利に見えるかもしれないが……。
ルカンが逃げ回り、召喚モンスターで僕を削り倒そうとするなら、こちらも別の手段、新たな『無限ガチャ』カードを切ればいいだけだ。
僕は新しいカードを取り出す。
(『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』、 解放(リリース) !)
解放と同時に黒い靄のようなものが生まれて、水中に解けて消えた。
一瞬、ルカンはカードを警戒し、顔をこわばらせる。
しかし、カードが解放されても、何の変化も起きない。
次第に、『はったりか?』とこちらを見くびった態度を現し出すが……。
その態度は長くは続かなかった。
まず最初に変化が起きたのは骨魚モンスター達だ。
元気に泳ぎ、僕に襲いかかってきた骨魚モンスター達だったが、真っ白な骨が黒ずみ出す。
数秒もかからず、黒ずみが全身に広がり、脆くなった骨が水流の動きにすら耐えきれず砕けて粉々になってしまった。
骨魚モンスターだけではない。
「!?」
ルカンの鼻から血が流れ出た。
次は目から、血が流れ出す。
彼はようやく自身に起きている異変に気づき、苦しげに胸を押さえる。
ルカンは毒に犯されたのだ。
『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』は、たとえ毒物無効化を所持していても貫通し、死に至らしめる猛毒である。
そんなものが水中に混じったら、どうなるか?
結果は火を見るより明らかである。
また説明した通り『たとえ毒物無効化を所持していても貫通し、死に至らしめる猛毒』だ。
僕自身、ただではすまない。
体中を針で刺すような痛みを感じだし、ルカン同様、目、鼻から血が流れ出す。
血のせいか、視界が赤く染まってしまう。
使用者の僕自身、毒に感染して血を流していることに気づいたルカンが驚愕する。
『まさか自分を倒すことができないから、毒物で共倒れを狙ったのですか!?』と言いたげに、彼は胸を押さえながら、目を限界まで開き訴えてきた。
もちろん、僕自身、そんなつもりは一切ない。
再び新たなカードを取り出す。
(『UR 超解毒(スーパー・デトックス) 』、解放!)
『UR 超解毒(スーパー・デトックス) 』は、たとえ、どのような猛毒でも回復させるカードだ。
僕は『UR 超解毒(スーパー・デトックス) 』で、『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』を回復させる。
軽く腕で顔を拭うと、流れ出る血は止まっていた。
『UR 超解毒(スーパー・デトックス) 』の力で、『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』を回復させたからだ。
僕が『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』から回復したことをアピールするように笑う。
ルカンはまさかこれだけ強力な毒物から回復するとは想定していなかったらしく、再び驚愕の表情を作り出した。
そんな彼の驚きを確認しつつ、僕は追撃を再開。
ルカンは突撃してくる僕から逃げるため、苦しげに胸を押さえつつも逃走を開始する。
距離を取り、時間を稼ぐ打開策を模索するが、
「…………!」
逃走を始めてすぐに吐血。
体を動かしたせいで『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』がより全身に回ってしまったのだ。
僕は近づき、杖を突き出す。
ルカンは辛うじて体を捻り回避。
その動きを読んでいた僕は、一回転し、足ヒレで彼を殴り飛ばした。
大型動物に殴られた小動物のようにルカンが、吹き飛ぶ。
全身を壁に叩き付けられ、再度、吐血する。
この吐血は毒物の結果ではなく、壁に叩き付けられたダメージによるものだ。
毒と壁に叩き付けられたダメージによって、ルカンの顔色は非常に悪い。
彼は壁に寄りかかりながら、僕を見上げる。
ルカンは絶望顔ではなく、何かを確信したかのように笑っていた。
彼は億劫そうに口を動かすが、さすがに水中にいるため言葉は分からない。
僕は『SR 念話』を解放する。
メイ達には繋がらなかったが、目の前に居るルカンなら問題はないようだ。
『口を動かされても水中だと通じないから、念話で繋がらせてもらった。降伏するなら、情報をとりたいから受け入れるけど。犯した罪の重さによって処罰を下すから、命の保証はしないけれどね』
『……こんなこともできるのですね。つくづく規格外ですね』
『SR 念話』はそれほど高いレア度ではない。
なので『規格外云々』と言われても微妙な気分になるだけだ。
彼の発言を微妙に感じつつも、再度降伏をうながす。
『いちおう褒め言葉として受け取っておくよ。もう一度、言うけど降伏するなら受け入れるけど?』
『降伏? ありえませんね。むしろ、こうして戦ってみて私の直感が正しかったことを実感しました。この世界が狂ってしまったのは「巨塔の魔女」が原因ではない。貴方だ! 貴方が全ての原因だ! 故に貴方だけはたとえ、私達の切り札を動かしても、確実に殺します』
『…………』
『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』がいよいよ体中に回り、息も絶え絶えにもかかわらずルカンは僕を殺す気概をまだ失っていない。
(この状況から逆転できる切り札があるということか?)
僕は毒で弱っているルカンを前にしても、気を抜かず、彼だけではなく、周囲にも注意を飛ばす。
彼は続ける。
『貴方の名前を伺っても?』
『…………』
迷う。
相手は瀕死で、この絶望的な状況からでも逆転できる切り札がある風な発言をしていた。
とはいえ、ここから逆転を許すほど僕は甘くない。
たとえどのような攻撃、脱出方法、敵増援が来たとしても防ぐ自信はあった。
なので名前ぐらい名乗っても問題ないのだが……。
どうしても、嫌な予感がぬぐえない。
名前といえど少しでも情報を渡したくないと考えてしまう。
結果、僕は黙り続けてしまった。
ルカンが溜息を漏らす。
『名前すら教えてくれないとは、残念です。……最終的には虫のように殺すのだから、名前を知ったところで意味などないのですがね!』
『!?』
ルカンが僕に向かって魔方陣を複数作りだした。
そこから魚型モンスターが大量に姿を現し、僕へ向かって突撃してくる。
――しかし、無意味だ。
未だ『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』が残留する水中に魚型モンスターを放っても死亡させるだけだ。
巨体で口先が尖りのこぎりのような魚モンスターが、少し泳いだだけで全身から血を吹き出し死亡。
鋭い歯がある小魚モンスター達など、姿を現した時点で即死。
七色の派手な『いかにも毒があります』と言いたげな、複数の魚型モンスターは、毒耐性があるお陰か他とは違ってすぐに死亡はしなかった。しかし、『UR 死神猛毒(デス・ポイズン) 』の前で多少の毒耐性など無意味だ。
僕に攻撃が届くことはなく息絶えて、血を流し死体に代わる。
正直、今更魚型モンスター召喚など無意味でしかないはずだが……。
(これがルカンの言う『切り札』なのか? ッゥ! ちが――ッ!?)
魚型モンスターが彼の『切り札』ではないことに気づいた。
魚型モンスターを召喚した理由は、彼らが流す血、死体などによって僕の視覚を遮る、目隠し状態にするのが狙いだ。
その目隠し状態を利用して、ルカンが最後の力を振り絞るように僕へと急接近!
気配を消してすぐ側まで接近してきたルカンへと振り向く。
同時に彼の内側で魔力が暴走していて、ルカンが何を狙っているのか理解する。
目が合った彼の表情、瞳には一切の絶望的暗さはない。
ただ純粋に笑っていた。
ほぼ同時に僕のすぐ側でルカンが内側から自爆したのだった。