作品タイトル不明
4話 アークvs宙城1
「あれがアークなのか……」
海面を割り、巨大な建造物が姿を現す光景に、一瞬、復讐心を忘れて見入ってしまう。
その光景があまりに幻想的で、驚きに満ちた光景だったからだ。
ただ海面から姿を現したアークは、最初こそ全体的に眺めれば非常に雄大で偉大に見えたが……。
気持ちが落ち着きじっくりと眺めると、所々石材の色が違ったり、『応急処置で間に合わせたのだろうな』という継ぎ接ぎ感が強かった。
ボロボロの中古品を頑張って修復したような印象を受ける。
「!?」
巨大な城らしき建物のバルコニーに人影を発見した。
人影は5人。
一人は見覚えのある細めの男、ヒソミ。
ドレッドヘアーなのがゴウ。
禿頭の男性が、ルカン。
背の低い少年がセスタだろう。
最後の一人……物理的に輝きそうな光を放つ王子様のような人物。
あれが最後の復讐相手ヒロ!
「ヒロォオオオオオオオォォォッ!」
僕は彼の姿を捉えると、アークへの驚きも一瞬で霧散し、怒り、復讐心で一杯になり叫んでいた。
そのままドラゴンを操り、上昇を続けるアークを目指させる。
『――――!』
背後から僕を呼ぶ声が複数聞こえてくるが、視界が赤く染まり、頭は復讐心に支配されて、一刻でも早くヒロの元へと体が動き止まらない。
しかし、アークの上昇は予想以上に速く、ドラゴンの上昇速度では追いつかなかった。
反射的に僕はカードを解放する。
「『SSR 転移』、 解放(リリース) !」
バルコニーでこちらを驚きの様子で眺めているヒロ達の元へ単身突撃!
『SSR 転移』で彼らの目の前に移動して、まずは一発ぶん殴ろうとしたが、
「ッゥ!? 弾かれた!?」
アーク全体を覆う半透明な結界のような物に転移が阻害されて僕は弾かれてしまった。
驚き落下する間も、アークは上昇を続ける。
僕は『SR 飛行』を解放するのももどかしく、アーク上昇を阻止するカードを切る!
「『UR 超重力槍・乱舞』、解放!」
『UR 超重力槍・乱舞』――超重力の槍を複数発射。大抵の物や者は破壊、死亡する。
黒く槍のような超重力が狙い通りアークへ着弾、爆発。
しかし、『UR 超重力槍・乱舞』の攻撃は全てアーク全体を覆う半透明な結界のようなものに阻まれて本体には傷一つ付いていない。
「どれだけ頑丈なんだ!?」
どうやらアーク全体を覆う半透明な結界のようなものはよほど強固らしい。
だが絶対に限界値はある。
『UR 超重力槍・乱舞』以上の破壊力があるカードを使用すれば破壊できるかもしれないが……。
(たとえば『UR 次元伸縮爆発』などを使えば……しかし、威力が高すぎて周囲にも被害が及ぶし……)
『UR 次元伸縮爆発』――次元を歪め、戻る際の膨大な爆発力によって敵に大ダメージを与える。
レベル9999やレベル7777などは問題ないだろうが……。
ドラゴン達は余波だけで死亡確実。
地上にもどれだけの影響が出るか……。
しかし、このまま両親、村の敵を目の前にしてみすみす逃がすなどありえない!
(どうにかしてあの半透明な結界を割るためには……。いや、別にあれを割らずともアークの上昇を止められれば……!)
「ご主人様!」
僕がアイデアを思いつくと同時に、皆より少し早くナズナの乗ったドラゴンが声の届く距離まで近づいてきていた。
どうやら僕の上昇に一番早く気づき追いかけてきたのがナズナらしい。
僕はそんな彼女に向かって、叫ぶように指示を出す。
「ナズナ! 大剣で僕を打ち上げてくれ!」
「!? わ、分かったぞ!」
ナズナは困惑しつつも、僕の指示に素直に同意した。
彼女は大剣プロメテウスを手にドラゴンの背からジャンプ。
僕は位置を調整しつつ、ナズナのプロメテウスの側面へ足を乗せる。
彼女は力一杯、全力でプロメテウスを振り抜き僕を打ち上げる!
「どっ、せい!」
強い衝撃が来ることは分かっていたため、覚悟を決め、腕を交差、奥歯を噛みしめ耐える準備をしていたにも関わらず、一瞬、意識を失いかけてしまう。
それだけナズナは大剣プロメテウスを勢いよく振り抜いたのだ。
打ち出された僕の速度はかなりのもので、あっという間にアークを追い抜く。
さらに雲を突き抜け、眼下におさめた。
(よし! 『SSR 転移』で抜けられなかった雲を予想通り突き抜けられたな!)
『SSR 転移』はイメージした場所に転移することができる。
今回はアークより先、雲を突き抜けた場所に出たかったが、僕は一度もそこに行ったことがなかった。
目視で転移移動しようにも雲が邪魔で出来ない。
なのでナズナに打ち出してもらい雲を突き抜ける必要があったのだ。
あとは目視で『SSR 転移』可能だ!
僕は『SSR 転移』を解放し、さらに雲上より上を目指す。
「『SR 飛行』、『SR 念話』、解放!」
『SR 飛行』で移動した位置に滞空。
『SR 念話』に危機を伝える。
「今からアークを破壊する。僕の予想が正しければ、かなり派手に壊れるだろうから、落下してくる瓦礫……というかアークそのものに注意してくれ」
僕が皆に念話を伝えると、『畏まりました』という複数の返事が返ってきた。
返事を聞いているとちょうど海の時のように雲海を半透明な結界で弾きながら姿を見せる。
ある意味、二回目のため、雲海を割り姿を現すアークに、一回目のような驚嘆さはない。
僕はつまらない玩具を眺めるように、冷たい目で見下ろす。
「絶対に逃がさない。絶対に……だ! 必ず両親、村の皆を殺し、故郷を破壊し尽くした罪を償わせる! その覚悟を今、見せてやる!」
僕は『UR カードホルダー』から一枚のカードを取り出す。
念のために用意したが、このような形で使用することになるとは最初、想像もしていなかった。
しかし、僕はためらいもなくカードを解放する。
「『SUR 宙城(そらじろ) 』、解放!」
『SUR 宙城(そらじろ) 』――宇宙まで飛行可能。永続的に永住し続けることが出来る環境が整っている城。星々間の移動も可能だが、人数制限有り。
カードを解放すると、宙城が姿を現す。
全長約1km。
中心に尖った尖塔がある巨大な城があり、整備された綺麗な庭も存在した。巨大な円の中に城がある。まるで巨大な動く城塞のような印象を受ける。
解放して分かったことだが……。
宙城はヒロ達が乗り込んでいるアークに瓜二つ、どころか全く同じだ。
違いをあげるとするなら、僕が解放したばかりの宙城は新品同然で、アークは粗悪な中古品のような状態だ。どうしてもヒロ達が乗るアークは修理した箇所が無数にあり、状態が良いとは言えない。
だが、宙城とアークは一目で同じ物だと分かる。
二つ並べてみれば一目瞭然だ。
当然、性能もそれほど差はないはず。
解放したばかりの宙城には当然、誰も乗っていない。
そのため自由落下を開始。
アークの真上に解放したので、すぐさま二つが衝突する。
キィイイイィィィ!
耳を覆うような音が雲海上に広がった。
宙城とアーク、どちらにもある半透明な結界が互いに正面からぶつかり、干渉、悲鳴のような音をあげているのだ。
アークは慌てたように位置をずらし、宙城から逃げようとするが――もう遅い。
悲鳴のような音を上げていた半透明な結界が浸食するように剥がれ、宙城を内部へと受け入れ始める。
障壁は同じ障壁&宙城の質量に耐えきれなかったのだ。
そのまま宙城はアークの尖塔に衝突!
がらがらと焼き菓子のように尖塔を破壊していく。
竜人帝国側『ますたー』達はバルコニーに集まっていたが、アークとほぼ同質量の宙城の落下をどうすることもできない。
当然、それだけでは終わらなかった。
アークが逃げるように位置をずらしたせいか、中心ではなく若干端側に向かって宙城が墜ちていく。
当然、そのまま衝突。
アークの大地は当然破壊され、宙城衝突の衝撃に耐えきれず大きくバランスを崩す。
上昇するための装置、超マジックアイテムか何かが壊れたのか、アークは落下を開始する。
雲海上まであがったアークは、再び海に潜る巨大な魚のように雲の下へと沈んでいく。
僕は飛行で後を追った。
雲を抜けると、先に抜けていたアークが大量の大小瓦礫を吐き出しながら、落下し続けていた。
大小の瓦礫は、海上へと墜ちていく。
アークはそのまま竜人帝国首都にでも落ちるかと心配したが、大きくずれた。
落ちていく様子を僕、含めてメイ達、『奈落』最下層メンバーが見守る。
さすがに僕達も落下する宙城+アークの超質量をどうにかすることはできない。
ただ見守るしかなかった。
そのまま宙城+アークは重なりあい、一塊のまま竜人帝国北部山脈を越えて、『奈落』がある無人の森林、海沿い地点へと落下。
その衝撃で大量の土埃が舞い、大陸全土が振動したような衝撃が広がり、山脈も一部が崩れ落ちる。
落ちた宙城+アークだったが、アークにある可燃物に引火したのか落下後、爆発を引き起こし炎上。
一部、森林に引火してしまう。
当然、燃え広がらないように消火活動をするよう指示を出すつもりだが……。
それより先に喜びが僕の胸を支配する。
「これで逃げる手段を失ったね……さぁ、復讐を始めようか!」