作品タイトル不明
5話 アークvs宙城2
――時間はアーク出発前まで戻る。
「全員搭乗しましたね? セスタくん、爆弾のセットはどうなってますか?」
「問題無いよ、予定通りセット完了済み!」
「ではカイザーさん、アークを発進させてください!」
『分かった! シールドは展開するからありえんと思うが、爆破後、落下してくる瓦礫が万が一シールドを突破してきたら対処を頼むぞ!』
伝声管に向けてリーダーであるヒロが声を上げると、カイザーからの返答が戻ってきた。
竜人帝国側『マスター』、竜人帝国の要人達が乗り込んだアークが、ヒロのかけ声によってついに星から脱出するため動き出す。
アークは半球型に大地に立つための巨大な爪が下方についている。
上部には巨大な尖塔の城、広い大地と錯覚するような草原と平地があり、畜産動物が多数存在し、湖には魚すら泳いでる。
城壁もあるため一見するとまるで、頑丈な要塞タイプのスノードームのような見た目をしていた。
アークが浮き上がると同時に、半透明のシールド(宇宙に出た際、デブリ、人体に有害な光線、熱などを遮る結界のようなもの)が展開。
最初はゆっくりと上昇する。
ゆっくりと上昇するアークを見守るようにヒロ、ルカン、ヒソミ、セスタ、ゴウがバルコニーに立ち近づいてくるダンジョン天井を見上げていた。
彼らは別に星から脱出する高揚感でバルコニーに並んでいる訳はない。
カイザーが先程口にした通り、デブリすら弾く半透明のシールドに守られているが、爆破後落下してくるダンジョン天井の瓦礫がもしかしたらシールドを突破してくる可能性もゼロではない。
タイミング悪くシールド機能が一時、問題が起きて停止するかもしれないからだ。
その際、アークを破損しないよう手動で防ぐためヒロ達が雁首そろえてすぐに飛び出せるようバルコニーに待機しているのである。
段々、近づいてくるダンジョン天井にゴウが焦りの声をあげる。
「……おい、このままだと天井にぶつかるぞォ。セスタ、いつ爆発して天井を壊す――」
『ドン』とゴウの台詞を遮るようにダンジョン天井が爆発。
がらがらと大きな塊の岩石が雨あられと落ちてくるが、シールドがしっかりと機能しているため、内部に瓦礫が落ちてくることはない。
ちなみにアークが保管されていたダンジョンのダンジョンコアは既に取り外されている。
なので物理的に壁を破壊することが出来るのだ。
予定通り、爆破が起きるとセスタが楽しげに声をあげる。
「よっしゃ! さすが僕様ちゃん! タイミングばっちりだね!」
ナズナから逃げ出すのと、彼女から受けた攻撃でセスタは左腕、右脚、右目を失った。
右目は眼帯、失った手、足はヒソミがフレッシュゴーレムを作る技術で作った義足を使用している。
彼は残った左目を輝かせて自画自賛を口にした。
ダンジョンの天井が破壊されると、次は大量の海水が流れ込んでくる。
天井と同時に、海中に出るまでのルートも一緒に爆破、開通させたのだ。
当然、海水はシールドに阻まれて、内側にまで入ってこない。
アークはそのまま海底に出る。
水圧がかかるが、特にシールドに変化はなく、そのままどんどん速度を上げて海中を進む。
途中で、大型のモンスターがアークに気づき、突撃してくるが、突き破ることが出来ず弾かれて気を失ったのか動かなくなってしまった。
そんなモンスターをセスタが、指を指して笑う。
「あははは、馬鹿っでー! 頭ぶつけて気絶してやんの」
「まぁ海中だど半透明なシールドはより見え辛くなっていますから」
なぜかヒソミがフォローを入れた。
アークはどんどん海中を進み、すぐに海上へと到着。
そのまま海水を振り払い青空の下へと姿を現す。
『おおぉ~』とバルコニーに居る誰もが感嘆の声をあげた。
暗い海底から、どこまで続く色鮮やかな青空の下に出たのだ。
まるで自分達の明るい未来を暗示するような光景に、声を漏らすのも仕方ないだろう。
――そんな輝かしい未来の暗示はそう長くは続かなかったが。
「あの……あれなんですかね?」
最初に気づいたのはヒソミだった。
別に彼の勘が良い訳ではない。
ただ太陽が眩しくて視線をそらしたら、たまたま視界に入ったのだ。
最初は小さい豆つぶのようだった。
しかし、その小さな豆つぶが酷く不安を煽り、皆に問いかけてしまったのである。
ヒソミの声に、バルコニーに並ぶ皆が目を細めて遠くに居る存在を確認した。
すぐに皆、近づいてくるものがドラゴンの集団だと気づく。
『!?』
ドラゴンの集団=『巨塔の魔女』。
その図式がすぐに成り立ち、誰しもが驚愕する。
ヒロは慌てて伝声管に駆け寄り声をあげる。
「カイザーさん! 速度をあげてください! 『巨塔の魔女』が近づいてきてます!」
『!? もう来たのか!? いくらなんでも早すぎるだろうが!』
カイザーは文句を言いつつも、アークの速度が目に見えて上がる。
さっさとこの星から脱出するため、ぐんぐん加速していく。
「おい! もっと速くならねぇのかァ! なんか一匹、めちゃくちゃ速く近づいてくるぞ!」
ゴウが叫ぶ。
一匹のドラゴンが、アークに気づくと集団から抜け出し加速度的に近づいてくるのだ。
「てか、上に乗っていた子供? みたいのが消えて弾かれた! あれってもしかして転移?」
「あっ、弾かれましたね。シールドって転移まで弾くんですね、知りませんでした」
「なんですかあのえげつない攻撃魔術は!?」
普段、身につけている『SSR 道化師の仮面』とは別系統の仮面で顔を隠したライトが、単騎でアークに突撃してきたのだ。
セスタ、ルカン、ヒソミの順番にアークに乗り込もうとするライトの動きにいちいち感想を漏らした。
しかし、ライトは転移も失敗、攻撃魔術は弾かれアーク内部に乗り込むことができない。
にもかかわらず彼は諦めるという言葉を知らないのか、すぐさま別の行動に移る。
ナズナの大剣に乗ると勢いよく発射。
そのまま雲海に突入してしまう。
ライトの意味不明な行動に、バルコニーにいるマスター達は皆、『?』と首を傾げる。
転移もできず、戦略級攻撃魔術でもシールドには傷一つつかなかった。
伊達に宇宙空間から内側を守るシールドではない。
シールドが雲海を切り裂き、上昇する。
このまま子供の妨害など一切合切無効化して、大気圏を突破し、宇宙空間に出れば竜人帝国側『マスター』達の勝利だったのだが……。
『!?』
バルコニーにいた全員が驚愕で目と口を限界まで開く。
なぜなら雲海を切り抜けたら、先程の少年が一人居て、彼が何かマジックアイテムを起動。
気づくと、自分達の上、アークの上空にライトが顕現させた『SUR 宙城』が姿を現したのだ。
『SUR 宙城』はマスター達が乗っているアークのことだ。
つまり、新品のアークが目の前に突然、姿を現したことになる。
ヒロが青い顔で伝声管に縋り付き叫ぶ。
「か、カイザーさん、回避してください! このままでは新しいアークがボク達のアークに接触してしまいます!」
『? 何を言っているんだ貴さ――ッ!?』
キィイイイィィィ!
耳をつんざくような音がアークに響き渡る。
音だけではない。
激しい振動もアーク全体に広がる。
シールドとシールドが干渉しあう。
その際の衝撃、振動がアーク全体に広がっているのだ。
異変を感じとったカイザーが、すぐさま舵を切るがもう遅い。
大量の瓦礫、水圧、デブリ、宇宙の有害なもの全てを遮るシールドだが、同じシールド&質量を防ぐほどの力はなかった。
むしろ、顕現されたばかりの『SUR 宙城』の方が新しい分、そちらの方がシールドが強固だったせいかもしれないが……ライトの狙い通り、同質の物同士をぶつけた結果、シールドが飽和。
『SUR 宙城』がシールド内部に侵入して重力に従い落下してくる。
「このままでは不味いですよ! セスタ殿、爆発でなんとかあれを外にはじき出してください!」
「ヒソミさん! そんなこと出来るわけないだろう!?」
ヒソミの指示にセスタがすぐさま反論の声を返した。
いくら爆発のスペシャリストであるセスタでも、アークとほぼ同質量の『SUR 宙城』をはじき出す爆発など作り出すのは不可能だ。
そのまま『SUR 宙城』がアーク内部の尖塔に触れ、質量に耐えきれず崩壊していく。
『――!!!』
落下する瓦礫、粉じんが舞い上がり、『SUR 宙城』すらも接触で破壊されていく。結果、落下してくる瓦礫が倍増する。
アークに居るマスター達は何もできず、ただただ破壊、落下、衝撃に翻弄されるだけだった。
アークは何もできずそのまま地上へと落下。
可燃物に引火したのか炎を燃え上がらせる。
まるで物語の終演を告げるカーテンコールのように真っ赤な炎がアークを包み込んだのだった。