軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2話 情報漏洩

「『巨塔の魔女』にP・A計画がバレた!? しかもアークを隠している場所、『巨塔の魔女』を警戒して前倒しで計画を進めていることもだと!?」

「あ、あくまで推測ですが……」

竜人帝国のとある一室で、カイザーがヒロから聞かされた報告に驚愕の声をあげた。

ヒロ曰く――前倒しになった『P・A計画』から漏れてこの星に残ることになった竜人帝国の『抗議派』が、一発逆転を狙う。『P・A計画』が前倒しになった原因である『巨塔の魔女』を暗殺し、『P・A計画』の前倒しを阻止しようとしたのだ。

当然、計画は失敗。

抗議派上層部は、計画が失敗する可能性も考慮しており、次策……財貨、重要書類などを抱えて親族、腹心達と共に行方をくらます。

恐らく彼らは、『巨塔の魔女』が治める『巨塔街』へ亡命したのだろう。

『P・A計画』で星から脱出できないのなら、竜人帝国を裏切り、重要書類や財貨を交渉材料に『巨塔の魔女』に保護してもらうのが狙いだろう。

結果、『P・A計画』、アークの隠し場所、前倒しになっている情報も『巨塔の魔女』に知られたと考えるのが自然だ。

連日、この星から脱出するための船、アーク修理に尽力していたカイザーは寝不足の青い顔でヒロへと詰め寄る。

「この馬鹿たれが! どうして抗議派に目を光らせていなかったのだ!」

「む、無理ですよ! ボクだって手一杯でそっちに労力を回す余裕はありませんでしたから。だから竜人帝国側に依頼はしていましたが、抗議派の方が必死だったせいか一枚上手で出し抜かれたんです!」

「クソが! 安泰派、いや、竜人帝国には無能しかいないのか!?」

カイザーは出し抜かれた安泰派(宇宙船『アーク』に乗れる竜人帝国の者達)だけではなく、自分達ですら手を出せない『巨塔の魔女』に喧嘩を売り、失敗、亡命した抗議派(宇宙船『アーク』に乗れず、足切りをされた者達)にも毒を吐き出した。

詰め寄ってきたカイザーから、ヒロは2、3歩後退して距離を取り希望的観測を口にする。

「も、もしかしたら『巨塔の魔女』暗殺に失敗した抗議派上層部達は、魔女の報復を恐れて雲隠れしているだけかもしれませんから。あくまで、ボクが口にしたのは予想でしかありません」

「……自分でも信じていないことを口にするな。そんなもの欠片の希望にもならんわ」

ヒロの台詞をカイザーが苦々しい顔で吐き捨てた。

カイザーは寝不足と衝撃的情報で足下がふらつく。

背後に控える 黒(ヘイ) が慌てて体を支えた。

カイザーは体を支えられた状態で、一度深呼吸して気持ちを整えて、自身の足で立ち直るとヒロへと向き直り尋ねる。

「それで余をわざわざ呼び出した用件はなんだ? 想像はつくがな……」

「……『巨塔の魔女』側に『P・A計画』がバレて、隠し場所、前倒し情報も知られたと仮定した場合、すぐさま攻めてくる可能性が高いです」

『貴女を暗殺しようとした竜人種達は、自分達とはまったく関係ない』と言い訳して聞き入れてくれる可能性はどれぐらいあるだろう?

報復として、『P・A計画』を妨害される可能性が高いのは、今までの『巨塔の魔女』の振る舞いから明らかだ。

「さらに今回の騒動に呼応して『C』が目覚め、ボク達の妨害をしてくる可能性も高まっています。なのでできる限り早急に『P・A計画』を発動。この星から脱出したいのですが……アークは動きますか?」

「…………」

情報が漏れないよう、いつもの部屋に現在最も忙しいカイザーを呼び出した理由をヒロがそう口にした。

カイザーは暫し黙り込み頭の中で計算する。

「……搭乗人員を減らせば、飛べる。搭乗人員を減らせばそれだけ重量が軽くなり、内部の酸素、飲料水などの消費も減らせる。星に移住後、働かせる予定の他種族奴隷達を乗せる余裕はない。一応、万が一に備えて宇宙空間でも修理可能な資材は搬入済みで、残りの修理は飛び立った後で十分カバー可能だ。それ以外はほぼ問題なし。推進システム、デブリ対策シールド、環境維持機構など問題なく稼働させることができる」

「それぐらいなら問題ありません。今すぐ出発する準備に取りかかってもらいます。カイザーさんもそのつもりでお願いします!」

「チッ! 最後まで面倒をかける!」

ヒロの要望にカイザーは舌打ち、悪態をつきながらも行動を開始した。

ヒロも彼の後に続き部屋を出る。

いよいよ『P・A計画』が実際に開始されようとしていた。

☆ ☆ ☆

『奈落』最下層、玉座。

僕の目の前に『奈落』最下層、最高戦力が揃い踏みしていた。

僕は目の前の戦力を頼もし気に眺めながら、口を開く。

「ミキ自身、竜人帝国側『ますたー』達について知っていることは多くはなかった。それでも僕の両親を殺害、故郷を破壊、にーちゃんを奴隷墜ちさせ怪物化、ユメに苦労をしいる原因となったヒロの情報は僅かながらでも得られた」

ヒロは男性、竜人帝国側『ますたー』のリーダーでまとめ役。

リーダーを務めるだけあり、実力、レベルともに高いとか。

戦闘を実際に見たわけではないが、ミキ曰く『自分ではどうあがいても勝てないから、絶対に戦いたくない人物』らしい。

きざったらしい性格でミキ的には趣味が悪い人物だとか。

この情報をもってミキは恩赦を与える予定だ。

さすがに一時『奈落』最下層から戦力が出払うので、彼女は未だ牢屋の中だが、将来的には牢から出して一室を与える予定である。

「彼らは『P・A計画』――プロジェクト・アークというものを前倒しで発動し、この星を脱出、『C』という存在から逃げようとしているらしい。アークという乗り物で宇宙? というのを旅して『C』がいない自分達が暮らせる新しい惑星を探すのが目的らしいね。正直、宇宙、宇宙船、惑星と言われても僕にはいまいち理解できないけど……」

僕は軽く肩をすくめた。

改めて殺意を滾らせ告げる。

「唯一、分かっているのは絶対に竜人帝国側『ますたー』達を逃がさないということだ。僕の両親、村の皆を殺害、故郷を完膚なきまでに破壊しつくした、その片棒を担いだ奴らをみすみす逃がすなど絶対にしない! 捕らえて必ず復讐を遂げてやる!」

後半は感情が激しくなり、獣のような雄叫びになってしまった。

玉座の間に僕の声がビリビリと響き渡る。

気持ちを落ち着かせるためにも、一呼吸置いてからエリーへと尋ねる。

「エリー、確実に竜人帝国側『ますたー』達を捕らえるための準備はできているかい?」

「はい、もちろんですわ! 『奈落』最下層の最高戦力を全て出しますの!」

エリーは僕に声をかけられ嬉しそうに瞳をキラキラと輝かせながら告げた。

彼女の言葉通り、メイ、アオユキ、エリー、ナズナのレベル9999が全員揃っている。

他アイスヒート、メラ、スズ、レベル7777。

アオユキ配下のフェンリル、ケルベロス、 不死鳥(フェニックス) などもそろい踏みだった。

「一応、念のため『奈落』最下層の位置、関係がバレないように皆さんには『巨塔の魔女』の配下のふりをして頂く予定ですの」

出発する際、ドラゴン達の背中に乗って移動する予定だ。

その際、『SSR 認識阻害フードマント』や『SSR 道化師の仮面』系統の隠蔽アイテムを皆に身につけてもらう予定だ。

「もちろん、『奈落』最下層に残る者達の安全にも配慮するためレベル5000級には残って頂きます。またわたくし達が出立している間は一時、『奈落』最下層の総責任者をウルシュさんに指名いたしましたわ」

「ウルシュなら滞りなく総責任者を全うしてくれるだろうね」

「ライト様のご期待に応えられるよう尽力させて頂ければと思います」

『UR 雷鳴の統括者 ウルシュ レベル5000』が深々と頭を下げた。

見た目は天使の輪っかが浮かぶ可愛らしいコーギーだが、実力、状況判断能力、責任感等、僕達がいない間、『奈落』最下層を任せるにはぴったりの人材だ。

当然、僕に異論などない。

僕は手放しで褒める。

「さすがエリー、完璧な準備だよ!」

「勿体ないお言葉ですわ」

「僕も彼らを絶対に逃がさないため管理倉庫から、あのカードを取り出しておいたし、これで確実に竜人帝国側『ますたー』達を取り逃がすことはないだろうね」

僕は満足そうに頷きながら、玉座から立ち上がり宣言する。

「僕の両親、村人達を殺し、故郷を焼き払ったツケを払わせに行こうか! さぁ、最後の復讐を始めよう!」

この宣言に玉座に集まった皆がやる気に満ちた声で答えた。

皆の鬼気迫る声に玉座の間が吹き飛ぶと勘違いするほど、皆、気合いに満ちあふれていたのだった。

こうして竜人帝国への侵攻が開始する。