軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

毎月更新アップシナリオ ネムムの地上任務感想と役得

『奈落』最下層、食堂。

ネムムと妖精メイド達がやや遅めの昼食を終えて、お茶を飲みながら暫し食休みしていた。

地上人に声をかけられるとあからさまに機嫌が悪くなるネムムだったが、『奈落』最下層では相手が妖精メイド達(友人枠)のため朗らかな笑みを浮かべつつ談笑していた。

見た目はとんでもない美少女だが、そのせいか逆に個性が薄くなっている妖精メイドが話題を振る。

「ネムム様、地上の人達ってどのような肌ケアをしているんですか?」

彼女は美容に興味があるらしく、ネムムに地上人の女性がどのような肌ケアをおこなっているのか尋ねた。

ちなみに『奈落』最下層では、美容のための商品も出て販売店に並んでいるため、妖精メイド達はそれぞれ気分や肌・フィーリングにあった物を使用している。

ネムムも女性のため、美容関係には興味があり、地上ではどのような物があるかも一応調べていた。

「そうね自分が調べた限りだと、ポーションを水で薄めたのを美容液として使っているわね。その美容液にもランクがあって、低位のポーションを薄めたのは一般庶民でも買うことができる金額だけど……。高位ポーション(地上基準)タイプは、貴族や上級商人なんかの人達が使っているらしいわ。ちなみに低位ポーション美容液も買えない層は食用の植物油を顔に塗るらしいわよ」

『食用油!?』

話を聞いた妖精メイド達が一斉に驚いた。

眼鏡を掛けた生真面目そうな妖精メイドが、困惑しつつ問いかける。

「植物性とはいえ食用油を塗るなんて……。い、一応、肌の乾燥は防げますかね?」

「確かに乾燥は防げそうだけど、あーし的には自分がやるのは厳しそうっていうか」

ギャル系妖精メイドがあからさまに嫌そうに顔をしかめた。

そんな彼女達にネムムが悪戯っぽい笑みで追加攻撃を加える。

「顔だけじゃないわよ。地上にはリップクリームがないから、代わりに唇を保護するためバター、動物性、植物性油を唇に塗るらしいわよ」

「な、何、そ、その油に対する信頼感は!?」

オタクっぽい妖精メイドがあまりの油推しに思わずツッコミを入れてしまった。

他妖精メイド達も似たような驚きを見せる。

ネムムは望んだ反応が返ってきて満足そうに笑みを浮かべた。

互いに一通りリアクションを終えると、再び美少女過ぎて逆に個性を失っている妖精メイドが話題を振る。

「ネムム様って地上ではとてもおモテになるって聞いたんですけど、地上の男性ってどうなんですか? いい人はいましたか?」

「…………」

この質問にネムムは飲んでいたカップを途中で停止。

鼻の頭に皺を寄せる。

少々予想とは違う反応――もっと敵意だったり、嫌悪感を現すと予想していたが違った。

まるで苦虫と臭い物を同時に味わっているような不快感を示す。

ネムムは重たい表情で口を開く。

「確かに地上では貴族、商人、冒険者、村の若者とか関係なく、言い寄られている。その中にいい人は……というか、いい人、以前に臭いのよ。お風呂が普及していないから」

「臭い、ですか?」

妖精メイド達は返答の意図が分からず小首を傾げた。

ネムムが続ける。

「特に仕事の関係上、冒険者に多く言い寄られるのだけど、彼らを含めて基本、地上の男性陣はお風呂が存在しないから匂いがひどいの。とくに冒険者ギルド内部とかひどいのよ。冒険者って基本男性が多くて、お風呂で汗を流す奴なんてそうそう居ないわ。駆け出し冒険者なんて装備品を手入れするという発想すらないの。だから、装備品すら汗、血、垢なんかで汚れているのよ。その多種多様な臭いが冒険者ギルドに溜まっているのよね。しかも長年臭いが染みついているから、換気してもあんまり意味がないから最悪なのよ……」

ネムムは沈痛な表情で告げる。

「そんな臭い奴らだからたとえ顔立ちが良くても自分的には、その気になる以前に『たまにはタオルで拭くだけじゃなくて風呂に入れ!』、『道具の手入れをしろ!』としか言えないのよね……」

『うわぁ……』

妖精メイド達はドン引きした。

地上の冒険者達の名誉のために補足するが、『奈落』最下層にあるお風呂のように毎日大量のお湯を利用することなど普通はできない。

地上ではお湯に浸したタオルで体を拭くのが一般的だ。

肩まで浸かるお風呂など貴族ぐらいしか入れないレベルである。

また『R ウォッシュ』のように汚れを落とす便利なマジックアイテムカードがあるわけでもない。

むしろ地上側からすればネムム達が潔癖すぎるのかもしれなかった。

「なんというか……お疲れ様です」

「あーしならちょっとたえられないかも。ネムム様、えらすぎ」

「う、ウチも、ち、地上生活無理、無理!」

眼鏡、ギャルっぽい、オタクっぽい妖精メイド達がネムムに同情的な視線を向け、台詞を漏らした。

同情的な視線を向けられるネムムだが、汚物を前にしたような非情から一転、にまにまと幸せを噛みしめるような笑みを作り出す。

「地上では色々大変だけど、役得がゼロという訳ではないわ。こないだ地上で野営しなくちゃいけない時があったの。その時、ライト様と一緒にお夕飯を作ったのよ」

『!?』

ネムムの発言に食休みで一緒にお茶を飲んでいた妖精メイド達だけではなく、食堂に居る者達全員の注目を集めた。

彼女はそれに気づきつつ、惚気るように話を続ける。

「ライト様が地上で買った野菜を剥いて、自分が味付けをしてスープを作ったのよ。ライト様と一緒に共同作業で料理を作ったの。それだけでも幸せなのに、ライト様がスープを口にしてくれて『ネムムの味付けしてくれたスープ、美味しいよ』って褒めてくださったのよ! もう最高だったわ。あれだけで地上で酷い目にあってもあまりあるご褒美だったわ」

ちなみにゴールドは水くみと、他の周囲にいる冒険者パーティー達とコミュニケーションを取っていた。

しかしネムムのピンク色の記憶からはゴールドの存在は消されて、ライトと二人っきりの光景しか脳内には残っていなかった。

このネムムの惚気に妖精メイド達+1名が、心底羨ましがる。

「うーらーやーまーしーいー!」

「ネムム様と立場を代えたい! たとえ地上で臭くて、汚い思いをしてでも!」

「あーしも、あーしも!」

「う、ウチだって、そんなご褒美があるならネムム様と立場を代えたい!」

「(むー!)」

美少女過ぎる、眼鏡、ギャルっぽい、オタクっぽい妖精メイド達が、それぞれ心底羨ましがる声をあげた。

気づけば一人最後にネムムの背後に立ち、羨ましそうに片頬を膨らませる人物がいた。

そこまで自身を主張されたらさすがにネムムでも気づき、背後を振り返ると、『UR 両性具有(ダブル) ガンナー スズ レベル7777』が立っていた。

「す、スズ様! 驚かせないでくださいよ!」

「(むー!)」

ネムムの抗議も無視して、スズは彼女の肩を掴むと子供っぽく揺らし出した。

スズはライトに自分の料理を食べて欲しいと花嫁修業をしている。

にもかかわらずネムムは食べてもらうどころか、ライトと一緒に料理した物を食べ、『美味しい』と感想までもらっているのだ。

スズが心底羨ましがるのは当然といえば当然だ。

『スマネェ、ねむむ。相方ハねむむノコトガ心底羨マシイラシクテナ……』

インテリジェンスウェポンのロックがフォローの言葉を告げた。

ロックが謝罪する間もスズは可愛らしく、頬を膨らませてネムムの肩を揺らし続けた。

そんな拗ねた幼子のような態度のスズを前に、ネムム、妖精メイド達は可愛らしいものを見るような新鮮な目を思わず向けてしまうのだった。