作品タイトル不明
『無限ガチャ』毎月更新 隠し通路?
――『奈落』最下層がまだ開発、拡張されている頃。
とある一室に大きなテーブル、複数の椅子が並ぶだけの簡素な部屋にライト、メイ、エリー、アオユキが揃っていた。
テーブルには開発・拡張中の『奈落』最下層設計図が並べられていた。
今回はエリーが拡張中の『奈落』最下層が最終的にどうなるのかライトに説明する場を設けたのだ。
当然、これはあくまで暫定で、将来的に必要な部署、施設、空間などが増えるのを考慮して大分余裕を持った作りになっている。
その説明をエリーが設計図を交えてライトに話していた。
ちなみに難しい話のためナズナの出席は見送られている。
一通り説明し終えると、質疑タイムに。
まず最初にメイが挙手をしてエリーに質問をぶつける。
「基本的に暫定とはいえ『奈落』最下層の開発計画に問題はないかと。ただ一点。ライト様の私室から伸びるこの隠し通路のようなものはなんでしょうか?」
「メイさんのご指摘通り、それは隠し通路ですわ。もし万が一、『奈落』最下層が何者達の襲撃にあい危機に陥った際、ライト神様に脱出していただくための通路ですの」
エリーが胸を張り断言した。
繋がっている先は、『ダンジョンコア部屋』だ。
仮に『奈落』最下層の最奥、ライト私室まで攻め込むことができる敵がいた場合、『ダンジョンコア部屋』まで逃げられるように隠し通路を開発中らしい。
ライトの恩恵『無限ガチャ』は、魔力濃度によって排出されるカードの確率が変動する。逆に言えば、ダンジョンコアが壊されない限り、ライトの恩恵があれば何十年でも籠城は可能だ。まず物資に困ることはない。
そういう意味でライトが真っ先に向かうべき場所はダンジョンコア部屋になるだろう。
当然、『奈落』最下層の重要拠点の一つだからという理由もあるが。
エリーの説明にメイが納得して頷く。
だが、鋭い視線を彼女に向けて、さらに彼女は問い質す。
「ダンジョンコアの部屋に伸びる隠し通路があるのは理解しました。ですが、どうしてライト様の私室から、エリーの部屋までの隠し通路があるのですか?」
「当然、いざと言う時のためですわ! 最悪を想定し、もし敵が何らかの方法で攻めてきて危機に陥った際、『奈落』最下層最高の頭脳で魔術戦力最高峰であるわたくしがいつでもライト神様のお側に駆けつけるようにするための必要な措置ですの。決して他に意図などありませんわ。いつでもライト神様に呼ばれて誰にも気付かれずに夜にお伺いできるようにするためとかではありませんの」
エリーは頬を赤らめながら、『問題ない』と断言した。
彼女の設計管理者権限の横暴に対してメイとアオユキが抗議の声をあげる。
「その理屈なら、私の部屋からライト様の私室に繋がる隠し通路が必要です! エリーには戦闘能力や頭脳では敵いませんが、それ以外の部分や万能性には自信があります! 何よりメイド長としてライト様のお側に誰よりも早く控える使命がありますから! 是非、私の私室からライト様の部屋に通じる隠し通路の設計をしてください!」
「にゃ! にゃにゃぁ、にゃー!」
「あはははは……」
メイとアオユキの主張にライトは一人、微苦笑を漏らし流した。
男性がこういう件に口を挟むのはなかなか難しいというのもあるが……。
とりあえず、メイ、アオユキ、エリーの私室とライトの部屋を隠し通路で繋ぐ案は一時ストップ。
実際に作成するかはまた後日話し合いがもたれることになった。
若干、ギスギスとした空気になってしまったため、ライトが気を利かせて新たな質問をする。
「僕も気になった点が一つあるんだけどいいかな? このダンジョンコアの部屋が設計図を見ると魔術的に何か細工するようだけど、これは?」
「隠し通路もですが、常に最悪を想定しおくべきかと。なので敵が『奈落』ダンジョンに攻めてきて、最下層まで全て乗っ取られた際のことも考えましたの」
正直、『考えすぎだ』と言われてもしかたない。
レベル9999がライトを含めて5人。他高レベルな者達が揃っており、未だに地上に到達できないほど深いのが『奈落』ダンジョンだ。
そんなダンジョンを最奥まで攻略する敵など存在するとは到底考えられないが……。
エリーは万が一に備えて、そうなった場合のことも考えたらしい。
その結果、ダンジョンコア部屋に魔術的細工を仕掛けたようだ。
「ダンジョンコアに仕掛ける予定の術式は、仮に敵が部屋を占拠した際、外部から暴走。ダンジョンコアを爆発させ敵もろとも吹き飛ばすものですの。魔術で色々強化もしますので、理論上、大剣プロメテウスを使わない場合はナズナさんですら爆心地にいたら即死する威力になっていますわ」
『…………』
エリーの説明にライト、メイ、アオユキは想像してその威力に黙り込んでしまった。
ナズナが耐えきれないということはライト達も間違いなく即死する威力ということだ。
彼らが耐えきれないなら、他『奈落』最下層メンバーもその爆発には耐えきれず、死亡するということだ。
「エリー……敵にダンジョンコアを奪われるのは問題ですが、いささか危険過ぎませんか?」
「にゃ~」
メイの不安そうな言葉に、アオユキも賛同するように声をあげた。
しかし、エリーは『ダンジョンコア自爆案』を推し進める視線を崩さない。
「ご安心くださいな、あくまでこれは敵に奪われた際の奥の手。当然、簡単に爆発するようなことはありませんの。普段は何重もの安全装置をつけているので誤爆する危険性はゼロですわ」
現状、まだダンジョンコアの制御ができていないため、転移は使えない。
しかし、敵が最奥まで攻めてくる状況なら、転移が使えている可能性が高いはずだ。
なので、もしダンジョンコアを起爆する状況になったら、まず『奈落』最下層メンバーは全員、転移で退避。
遠距離の安全圏から、起爆すれば敵だけを吹き飛ばすことができる。
なので安全性は非常に高い。
また理論上、起爆させた場合『奈落』最下層を全て吹き飛ばす威力がある。
なのでメリットとして、『奈落』最下層を敵に逆利用されない。
溜め込んでいる物資、『無限ガチャ』カードを奪われる心配がないというのがあった。
そして何より――。
「いざと言う時、『こんなこともあろうかと』なんて、ダンジョンごと吹き飛ばす自爆装置はロマンがありますわ!」
「「…………」」
エリーが瞳をキラキラと輝かせて断言した。
この彼女の発言に対してメイ、アオユキは『何を言っているんだこいつは……』と冷めた視線を向けてしまう。
一方、ライトはというと……。
「エリー……その気持ちちょっと分かるよ。ロマンがあるよね」
「ライト神様……ッ!」
ライトの賛同にエリーは、満面の笑顔を作った。
男の子ライト的には、『最終自爆装置』案が琴線に触れたのだ。
「私も自爆装置にはロマンを感じていた所です! さすがライト様!」
「にゃー!」
ライトが『自爆装置』を肯定すると、否定的意見を出していたメイ、アオユキが一転。綺麗に手のひらを返し賛同した。
最初、あまり反応がよくなかった二人が一転、賛成に回る姿にエリーは思わずジト目を向けてしまう。
「……メイさん、アオユキさんのお気持ちは理解できますが、綺麗に手のひらを返し過ぎではありませんか?」
「あははは……」
メイ、アオユキの態度の変化にライトはもう笑うしかなかった。
とはいえこの場に居る全員の賛成を取り付けたことで、『ダンジョンコア最終自爆装置設置』案が可決。
ライト、エリーだけではなくメイ、アオユキも積極的に意見を出して、さらに『ダンジョンコア最終自爆』の威力を高めるアイデアを出し合う。
こうしてアイデアを盛り込み、エリーの主導で『ダンジョンコア最終自爆装置設置』が作られることになったのだった。