軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『無限ガチャ』小説8巻宣伝SS エリーの魔術実験失敗

「し、失敗してしまいました!」

『SUR 禁忌の魔女エリー レベル9999』が、休日を利用し、趣味の魔術研究のため『奈落』最下層、訓練場を利用していた。

朝から時間をかけて、大規模な魔方陣を描き、理論通り魔術が動くか、うきうきと起動したら……。

理論にミスがあったのか失敗してしまった。

結果、予想外の失敗による反動がエリーを襲ったのだ。

その失敗による反動とは……。

「まさか強制的に肉体年齢を下げられるなんて……」

エリーは魔術の失敗による反動によって子供の姿になってしまった。

子供の姿になったせいで、着ていた衣服はぶかぶかになり、足下に落ちてしまう。

帽子も大きくなりすぎて視界を塞ぐため、溜息交じりにとるしかない。

「肉体年齢的にユメ様と同じか、下手をすれば若いですわね。10、9歳というところですの。正直、失敗したからといってこのような結果になるのは予想外ですわ。どこにミスがあったのかしら……。いえ、問題点の洗い出しをしている場合ではありませんわね。さっさと元の姿に戻りませんと。こんな姿を誰かに、とくにライト神様に見られでもしたら生きていけませんわ!」

『奈落』最下層で最も魔術に長けている自分が魔術で失敗した。

そんな恥ずかしい姿をライトに見られたくなかった。

別にライトはエリーが魔術で失敗した姿を見ても、落胆、失望もしないが……。

『好いている殿方には常に美しい自分を見て欲しい』というエリーの乙女心的に、現在の姿をライトに見られたくなどないのだ。

「とにかく、誰かにこんな姿を見られる前に元の姿に戻りませんと……。ですが、失敗のせいか魔力が上手く使えませんわ。すぐに元に戻るのは難しいですの。一応、念のため魔方陣に安全装置として、効果を1日に限定していましたので、明日には元に戻ると思いますが……」

問題が起きても、1日経過すれば元に戻るように魔方陣に安全装置を設定していた。

魔方陣の起動に失敗しても、絶対にこれだけは必ず動くようにしている。

なので幼女化したエリーも、明日には元に戻るはずだ。

彼女が全裸で形の良い顎に手をあて考え込む。

「幸い、今日はお休み。誰にも見られず自室に戻って籠もればこの姿を誰にも見られることはありませんわ。問題はどうやって誰にも見られず部屋に戻るかですの……。あと衣服をどうにかしませんと。さすがにアイテムボックスに子供服なんて入れていませんし……」

魔力が使えれば、魔術でどうにかする方法もあるが現在は使えない。

裁縫技能があれば、落ちている衣服をリメイクすることもできるが……。

当然、エリーにそんな技術はない。

だが、無い物ねだりしてもしかたなかった。

エリーは割り切って頭を回転させる。

「アイテムボックスに入れているマジックアイテムを組み合わせて、現状を打破するとしましょう。いくつか使える物があったはずですし」

「エリー、休日に申し訳ありませんが、少々確認したいことが――」

「!? め、メイさん!?」

冷静に所持しているマジックアイテムを駆使して、問題を解決しようとした矢先。

メイがエリーに仕事関係で確認しなければならない内容ができたため、訓練場に顔を出したのだ。

突然のことだったため、エリーは隠れることもできずその場で硬直。

メイも予想外なエリーの姿――金髪、全裸、幼女姿に普段から冷静沈着な表情を驚きに変える。

暫しの沈黙――最初に動いたのはメイだ。

彼女は真顔でツカツカとエリーに近づくと……彼女の頭を撫で出す。

「め、メイさん……」

「…………」

「め、メイさん! 頭を撫でるだけではなく、頬をぷにぷにするのはおやめくださいな!」

「はっ!? わ、私としたことが、あまりに可愛らしい姿についつい愛でてしまいました」

エリーの抗議にメイが冷静さを取り戻した。

どうやらメイは幼女エリーの姿があまりにも可愛らしく、我を失い愛でてしまったようだ。

メイは一度、離れると軽く咳払いしてから問う。

「エリーでいいのですよね? どうしたのですか、その姿は?」

「…………」

エリーは苦虫を噛みつぶしたような表情を作った。

よりにもよってライバル視しているメイに、この姿を見られたのだから。

しかし、まだライトに見られるよりはマシだ。

彼女の協力があれば、これ以上、話が広まることも、誰にも見られず自室に戻ることもできるのだから。

エリーは割り切って事情を説明した。

話を聞き終えると、メイは納得し協力を約束する。

「魔方陣の失敗ですか……。それでそんな可愛らしい姿に」

「わたくしだって、別に望んでこんな姿になったわけじゃありませんの」

メイの感想にエリーが拗ねた表情で抗議した。

その姿すら可愛らしく、メイが微笑ましい者を見るような視線をエリーに向け、慰めるように頭を撫でる。

「無言で頭を撫でるのはやめてくださいまし!」

「……失礼。つい可愛らしくて」

エリーの抗議にメイが謝罪。

彼女はアイテムボックスから、とりあえず着替えの衣服を取り出す。

「とりあえず明日には元に戻るのなら、エリーの言葉通り、今日1日部屋に籠もっていれば問題ありませんね。こちらの用件も、貴女が部屋に戻って落ち着いたら対処していただければ問題ありません」

「……メイさん、どうして幼女衣服が貴方のアイテムボックスに入っているのかなど言いたいことは色々ありますが……贅沢を言わせて貰えれば、こう、もう少し大人しい物はありませんの?」

メイは今後の予定を口にしながら、アイテムボックスから幼女エリーが着る衣服を取り出し手渡した。

その衣服にエリーが微妙な顔をする。

メイが取り出した衣服は、ピンク色がメインで至る所にふりふりのレースがこれでもかと付けられた衣服だった。

普段のエリーが着ている衣服より派手で、まるでこれから社交パーティーにでも出席するようなデザインだ。

エリーの要望にメイが首を傾げる。

「今のエリーの姿によく似合う衣装だと思うのですが……」

「いえ、似合う、似合わないのではなく、派手過ぎるのが問題なのですわ。もう少し地味な感じの衣服をお願いしますの」

「分かりました。では、こちらなどどうですか?」

「そうそう、ちょうどこういう地味な色合いの衣服が欲しかったのですの――って色の問題ではありませんの! 衣服、その物の問題ですわ!」

メイが最初に出した衣服をしまうと、今後は黒をメインとして、先程と変わらない量のレースが施された衣服を取り出す。

先程の衣服が甘ロリなら、今度はゴシックロリータ衣服だ。

思わずエリーがノリツッコミを入れた。

そんなエリーに対してメイが力説する。

「大丈夫です、絶対に似合いますから」

「いえ、そういう問題ではなく……むしろ、貴女、この状況を楽しんでいませんか?」

しかし、これではいつまで経っても話が進まないと諦めて、エリーは諦めてメイが取り出した黒ゴシックロリータに袖を通す。

1人では着られないレベルのふりふり衣服のため、メイが手伝いなんとか袖を通した。

「よく似合っていますよ、エリー」

「……一応、衣服の用意をしてくださったのでお礼だけは言っておきますわ。ありがとうございますの」

メイに褒められ微妙な顔をしつつも、礼儀としてお礼だけでは口にした。

着替えを終え、脱げた衣服もしまう。

後は誰にも見つからず自室に戻るだけなのだが……。

「メイ、ここで何をしているんだ? あと、そいつ何者だ? 新しくカードを解放したのか?」

(な、ナズナさん!?)

見回り中のナズナが、ふらりと姿を現した。

彼女は魔術の失敗で幼女状態になったエリーに気付いていない。

幼女になったのと、普段とは違う黒ゴシックロリータに袖を通しているせいだろう。

(な、ナズナさんにわたくしの正体がバレたら、いくら口止めしても皆に話が広まってしまいますの!)

エリーはナズナを信用していない訳ではない。

ただ彼女が自分の正体を知り、口止めしてもいつかうっかり口にする可能性が高いと考えているのだ。

悪気なくうっかり口を滑らせた結果、ライトの耳にまで届いたら……。

エリーは想像しただけで冷や汗を流す。

メイもどう態度を取っていいか迷い、ちらちらとエリーに視線を向けた。

彼女は覚悟を決めて、笑顔でナズナに振り返る。

「初めまして、わたくし、エリー様の使い魔のえり……エリリと申します!」

エリーはナズナを誤魔化すため、『エリーの使い魔』を名乗ることを選択。

このやや無理がある設定に対してナズナは……。

「カードからの解放じゃなくて、エリーが使い魔を作ったのか! だから、どことなくエリーに似ているんだな!」

「はい! エリー様の肉体の一部を使って実験的に作られた使い魔なのです」

「へぇー……あれ? そういえばエリーはどこいるんだ?」

「エリー様は別の実験のため席を外していて。代わりにメイさんに色々お話を伺っていたんですの」

ナズナはエリー……改めてエリリの言葉を疑うこともなく真に受けた。

彼女は納得し、じろじろとエリリの姿を興味深そうに見てきた。

一通り観察を終えると、ナズナは善意の笑顔で申し出る。

「メイとの話し合いが終わったら、あたいが『奈落』最下層を案内してやるよ! 『奈落』最下層には色々楽しい場所がいっぱいあるんだぞ!」

「あ、ありがとうございますわ。ですが、まだ色々用事がありますので……。また今度お願いしますわ」

「そうか、用事があるならしかたないな」

断られると大人しくナズナは引き下がった。

ナズナは納得すると、エリリとメイに挨拶をして訓練場を後にする。

彼女の姿が完全に見えなくなった所で、エリーは冷や汗を流し、その場に座り込む。

「あ、危ない所でしたわ……。ナズナさんの素直な性格のお陰で命拾いしましたの……」

エリーは心底感謝するように独り言を漏らした。

だが、『元々ナズナの素直過ぎる性格のため、真実を知った場合、うっかり口を滑らせる可能性があったので誤魔化す必要があったのでは』とツッコミを入れるのは野暮だろう。

エリーは冷や汗を拭いながら、次の行動に移る。

「後はこれ以上、誰かに見られる前にさっさと自室に戻るだけですわ。メイさん、ご協力お願いいたしますわね」

「もちろんです。私達は仲間なのですから、困難に直面したら手助けするのは当然。ですが……まだ色々、今のエリーに似合う衣服がアイテムボックスにあるのですが……」

「むしろ、なんで幼女衣装がメイさんのアイテムボックスに大量に入っているのか、仕事はいいのかなどツッコミはありますが、後ほど時間を使って着ますので、今はご協力お願いしますの」

「お任せください。我がメイド道にかけてエリーを誰にも見られず自室に届けます」

「…………」

仕事が終わった後、メイの着せ替え人形になることを了承し、彼女の協力を取り付けた。

メイは基本何でもこなせる万能タイプだ。

彼女の協力があれば宣言通り誰の目にも触れず自室に戻ることができるだろう。

だがエリーは微妙に納得できない感情を抱えつつ、メイに抱きかかえられて自室に向かうため訓練場を出るのだった。

☆ ☆ ☆

――後日。

ナズナがライトが居る側でエリーに問う。

「エリー、暇になったらエリリと一緒に遊ばせてくれよ! 妹様も会ってみたいって言っていたからさ」

「あ、あれは一時的に使い魔を作り出す実験でしたので、もうエリリは居ないのですわ!」

「そうなのか……残念だぜ……」

「エリリ?」

エリーは適当に誤魔化しナズナを納得させた。

一方、ライトは自分の知らない『エリリ』という存在に首を傾げる。

エリーはそんな状況に置かれたことに胸中で冷や汗を流しながら、なんとか表面的には冷静さを保ち続けるのだった。