軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『無限ガチャ』コミックス9巻発売記念SS

『奈落』最下層、訓練場。

そこでレベル7777のアイスヒート、メラ、スズ&ロックが集まり、自主訓練をこなしていた。

「――左手に宿れ、コキュートス!」

アイスヒートが左手のガントレットを振るうと、空気すら即座に凍り付く冷気攻撃がメラへと襲いかかった。

『奈落』最下層、訓練場は障害物が何も無いただ広い空間だが、もし植物や動物などが存在したらその全てが凍り付き粉々に砕け散っていただろう。

そんな攻撃をメラは冷気耐性を持つキメラに体を作り替えて耐える。

「ケケケケ! 冷気耐性のキメラに体を作り替えていなかったら下手すれば大ダメージに――」

「右手に宿れ、イフリート!」

「ケケケケ! 馬鹿野郎! 少しは手加減しろぉおぉ!」

メラは手を止めず攻撃を仕掛けてくるアイスヒートにツッコミを入れつつ、即座に体を耐熱生物に変換。

凍った空間を一瞬で蒸発させる熱波に耐えるが――。

結局、その後、コキュートス、イフリートと息をつく暇も無く責め立てられた。

守勢に回り、挽回する手立てもなくじりじりと削られて終わってしまう。

結果、アイスヒートに軍配が上がった。

☆ ☆ ☆

休憩後、次はメラvsスズ&ロックの模擬戦が開始する。

『相方! トニカク魔弾ヲ撃チマクレ! 近ヅケサセルナ、弾幕ヲ張ルンダ!』

「(こくこく!)」

ロックの叫びに『分かっている』と言いたげに何度も頷き、スズはフェイントもなく、突撃してくるメラに向かって後方に下がりつつ、魔弾をばらまく。

スズがロックから撃つ魔弾には、バッドステータスが付与されている。被弾した場合、付与されているバッドステータスを受けることになるのだが……。

「ケケケケケケ!」

魔弾が遠慮無くメラの体に突き刺さるが、彼女の動きは止まらない。

付与されたバッドステータスの魔弾を一部の細胞に移動。

切り離す。

そのせいで何発撃ち込んでも彼女本体にバッドステータスが付与されず、動きは変わらない。

「(むうううぅ!)」

『訓練トハイエ、コンナ遮蔽物モ無イ広場デ戦ウノハ、おいら達ニ不利だとは理解シテイルガ……。マジデめらノ姉サンとおいら達ハ、相性ガとことん悪イゼ!』

「ケケケケケ! 確かに森林とか街中だったら、こうも簡単に距離は詰められないし! 魔弾も易々防ぐ事も出来なかったぞ!」

ロックから発砲される魔弾をメラは全部体に受けている訳では無い。

腕で弾いたり、髪の毛を触手のように動かし、防いでいたりもした。

もしこれが彼女の指摘通り遮蔽物がある森林や街中なら、魔弾をこれほど簡単に弾くことは難しかっただろう。

しかし、現在彼女達が戦っている場所は、ただ広い空間の訓練場だ。

飛来する魔弾を弾くのは、高レベルのメラからすればそう難しいことではない。その上、体にヒットしても、魔弾&バッドステータスを細胞に押しつけ排出することが出来る。そのせいでいつまで立っても動きが鈍らないメラに、スズ&ロックは徐々に追い詰められてしまう。

「ケケケケ! そこだ!」

「ッゥ!」

腕から触手を伸ばし鞭のように殴打!

スズは回避できないと悟り、ロックを盾にしてガード。

それが敗着となる。

ロックでガードしたため、魔弾が途切れさらにメラへと状況が傾いてしまう。

2手、3手、と攻撃が進むうち、気づけばメラの触手に足を絡められて逆さまの宙づりになる。

「!!!」

「ケケケケケ! とりあえず勝負あり。アタシの勝ちだな」

スズは逆さまの宙づりになると真っ赤な顔でスカートが捲られないよう手で押さえた。

そんなスズを面白がって、わざと左右に触手を揺らす。

スズはさらに顔を赤くして、頬を膨らませて抗議を訴えたのだった。

☆ ☆ ☆

最後はスズ&ロックvsアイスヒートだ。

「――左手に宿れ、コキュートス! アイス障壁!」

アイスヒートはすぐさま左手のガントレットに魔力を注ぎ氷の障壁を作り出した。

その障壁にガンガンと魔弾が着弾。

当然、氷の壁を削っていく。

また正面だけじゃない。

『相方! 背後ニモ魔弾ヲ誘導シテヤレ!』

「(こくり!)」

「ロック! 判断が速すぎるぞ!」

スズはロックのアドバイスに従い魔弾を障壁のない背後を狙い移動させ出す。

アイスヒートは慌てて背後にも氷の壁を作り出すが、

「背後に気を取られている間に、正面の氷の壁が削られていく!」

魔力を追加して氷の壁を分厚くするしかアイスヒートに選択肢が無い。

一発でもバッドステータスを受けたら不利な状況に立たされるためだ。

だが、スズはバッドステータスを込めない魔弾なら、魔力の回復量と釣り合い永遠に撃ち続けることが出来る。

アイスヒートが壁を分厚くしても削り取ることが出来るのだ。

何より四方八方から迫る魔弾を防ぐため、アイスヒートは周囲全土を氷の壁でおおう。 さらにその壁が削られるたび、補強していくと徐々に自身移住空間が無くなっていく。

アイスヒートは足を止めてスズの魔弾を氷の壁で防いだ時点で詰んでいたのだ。

とはいえ、1000発以上の魔弾を回避し続け逃げ回るスズを倒すのは至難だ。

もし場所が障害物のない訓練場でなければまだやりようがあったが。

結果、最終的にアイスヒートが降参し、勝負の決着が付くのだった。

☆ ☆ ☆

「ケケケケ! あれだな予想通りの結果だ」

「毎回、素の条件で模擬戦をするとどうしても同じ結果になってしまうな……」

「(こくこく!)」

『マァ、場所ガ訓練場ジャナクテ遮蔽物ガアッタリ、まじっくあいてむ、うぇぽん装備トカ条件ガ違ッタラマタ結果ハ違ウンダケドナ……』

メラ、アイスヒート、スズ、ロックが順番に感想を漏らす。

一通り訓練を終えた彼女達は、集まり互いに模擬戦の感想を交わしていた。

結果的にいつも通りの状態で遮蔽物がない訓練場だと――。

アイスヒートはメラに対して相性が良いが、スズには相性が悪い。

メラはスズには相性が良いが、アイスヒートには相性が悪い。

スズはアイスヒートには相性が良いが、メラには相性が悪い。

以上になる。

地の利、アイテム、武器無しでの素の状態だとだいたい毎回今回のような結果になった。

とはいえ、だからといって、努力を怠る訳にはいかない。

アイスヒート、メラ、スズ、ロックは先程の模擬戦を振り返り、互いに何が問題か、良かった動き、次の課題はなにかなどの意見交換をおこなう。

こういう訓練、努力も全て敬愛するライトの力になるためだ。

そんな意見交換をしている最中に、訓練場出入り口が開く音が聞こえてくる。

「アイスヒート、今、よろしいでしょうか?」

「メイ様!」

訓練場に『SUR 探求者メイドのメイ レベル9999』が顔を出したのだ。

アイスヒートが声をかけられて、足早に彼女の元へと向かう。

メイは申し訳なさそうな顔で彼女に尋ねる。

「訓練中、申し訳ありません。少々、確認したいことがあったので伺わせて頂きました」

「いえ、ちょうど休憩中だったので問題ありません。ですが、要件があったのなら念話で仰って頂ければ、こちらから向かいましたのに。わざわざ足を運んで頂きありがとうございます!」

「ちょうど近くまで通りかかっていたので。それで要件なのですが、次のライト様のスケジュールについて――」

どうやらライトに関する要件のようだ。

念話で軽く話をする内容ではないため、わざわざ足を運んだらしい。

メイ(メイド長) と アイスヒート(副メイド) は真剣な表情で話をしていた。

そんな二人を頭の後ろで腕を組み眺めていたメラが、スズ&ロックに話題を振る。

「ケケケケケ! そういえばアタシ、メイさまとは一度も手合わせしたことないけど……スズはあるかい?」

「(ふるふる)」

『おいら達モ無イナ。めい様ハめいど長トシテモ忙シイ方ダカラ。ナニヨリ本人ガ自認シテイルガ、戦闘ハアマリ得意ジャナイッテ言ッテイルシナ』

「ケケケケケ! ならアタシ達が三人がかりなら、レベル9999に勝てる可能性がワンチャンあるんじゃね?」

「(うーん……)」

『イヤ、デモ、相手ハレベル9999ダシナ……』

好戦的なメラはわくわくとした態度で提案するが、スズ&ロックは微妙な態度を取った。

メイ、アイスヒートの話し合いが終わると、メラは嬉々として彼女に手合わせを願う。

メラの申し出にメイは、了承しつつも申し訳なさそうに告げる。

「手合わせですか? 構いませんが……。皆も知る通り他のレベル9999とは違って私はあまり戦闘が得意ではないので、満足な戦いに出来るか分かりませんよ?」

「ケケケケケ! それで問題ありませんよ! ただ一度もメイさまと模擬戦をしたことが無いので折角の機会ですから胸を貸して頂ければと思ったんですよ」

「分かりました。ちょうど時間もありますから構いませんよ」

メラの後押しで、メイとの模擬戦が決定する。

一度距離を取り、メイがアイスヒート、メラ、スズ&ロックと対峙。

開始合図と共に、アイスヒート、メラ、スズ&ロックは連携し、遠慮無くメイへと襲いかかったのだが。

その結果は――。

模擬戦が終わる。

結果はメイの勝利に終わった。

彼女は朗らかに感想を告げる。

「やはり皆、強いですね。何度もひやりとした場面があって、驚きました」

「そ、そうですか……。メイ様にそう仰って頂きありがとうございます……」

魔力糸(マジック・ストリング) に絡め取られて身動きが取れないアイスヒートが、ぎこちない笑顔で返答した。

メイvsアイスヒート、メラ、スズ&ロックは、結果だけ見ればメイの圧勝だった。

アイスヒートの氷と炎は魔力糸の壁に防がれた。

メラは複数のキメラを作り出し襲わせるが、その悉くが魔力糸によって切断。本人もバラバラに切断され、魔力糸で拘束されてしまった。

スズの魔弾も魔力糸で切断され、全て防がれた。そして気づけば足下に魔力糸があり、現在はまた逆さまになって宙づりになってしまっている。

彼女は再度、恥ずかしそうにスカートがめくれないように手で押さえていた。

バラバラにされたメラが生首だけで告げる。

「ケケケケケ! 戦闘が得意じゃないって言ってもレベル9999はレベル9999だったな」

「(こくこく……)」

『イヤ、本当ニ、マサニレベル9999ノ方々ハ規格外ダナ……』

メラの言葉にスズ、ロックも同意の声をあげた。

こうして改めてレベル9999の格の違いを彼女達は実感するのだった。