軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『無限ガチャ』コミックス8巻発売記念SS ナズナの食わず嫌い?

「む~~~ん……」

『奈落』最下層、食堂。

その一角でナズナが腕を組みうなり声を上げていた。

時間は午後三時、おやつの時間だ。

今日は珍しく彼女の前に4枚のカードが置かれていた。

どれもナズナが食べたことがないお菓子だ。

なのに彼女は嬉しそうではなく、やや気難しい表情を作っていた。

なぜ、そんな表情を作っているのか?

当然、ちゃんと理由がある。

普段、彼女は一日に使うお金を決めて、その中でお菓子を楽しんでいた。

しかし、今日は運良く臨時収入が入った。

また冒険をしたい気分もあり、普段、絶対に買わないゲテモノ……とまではいえないが、初見で食べるにはハードルが高い物を選んだ。

「『イチゴ大福』に、『ホイップあんぱん』、『フルーツサンド』、『サルミアッキ』か……」

ナズナは改めて購入したオヤツの名前を口にした。

正直、ナズナの中でこれらは普段絶対に選ばない。

他にもいつくか似たような物があるが、さすがに臨時収入があったとはいえ、全部を購入するのは金銭的に厳しく、その中で気になった四つを購入したのだ。

正直、ナズナの中でこれらは『明らかに失敗作じゃないのか?』と考えている。

だが食べずに非難するのは道理が立たない。

なので、臨時収入と冒険心から、ナズナは今まで敬遠していたこれらを食べることにしたのだ。

彼女はまず最初に、『イチゴ大福』に手を伸ばし、 解放(リリース) する。

用意した皿にイチゴ大福が乗った。

見た目は白い大福だが、中にはイチゴが入っている。

ナズナは難しそうな顔で腕組みしながら、皿に乗ったイチゴ大福を眺め、食す前の感想を漏らす。

「イチゴは美味しい、あんこも美味しい……でも、美味しい物同士を組み合わせたらいいってものじゃないだろう」

ナズナ的には『イチゴはイチゴで食べて、あんこはあんこで食べた方がいいのではないか?』と考えていた。

『どちらも美味しいからといって、合体させたらいいというものではない』と言いたいのだ。

だが購買で見るたびに気になっていたのは、彼女の素直な気持ちでもある。

そんなナズナは勇気を出し、イチゴ大福を掴むと、恐る恐る口に含む。

「……ん! 美味しい! 意外とイチゴの甘酸っぱさとあんこって合うんだな! これ、あたい、好き!」

最初こそ恐る恐る口にしたが、想像以上にイチゴ&あんこの相性がよいと分かると、ナズナは遠慮なく手にしたイチゴ大福を食べて、皿に残った一個もすぐに食べてしまう。

牛乳で口の中に残った味を流しつつ、次のカードに手を伸ばす。

「次はホイップあんパンか……」

ナズナはあんこも好きだが、ホイップクリームも大好きだった。

しかしイチゴ大福同様『どちらも美味しいからって一緒にしなくてもいいのでは?』とつい考えてしまう。

また正直、

「イチゴ大福と違って、あんことホイップを組み合わせなんて味の想像がついちゃうんだよな……」

ナズナはあんこが好きでよくどら焼きを食べていた。

当然、あんパンも食べている。

ホイップクリームも当然、口にしていた。

なのでその二つを組み合わせた味も想像がつくため、なかなか手を伸ばすことがなかった一品だ。

今回のように臨時収入がなかったら手を出すことはなかっただろう。

ナズナは味を想像しつつも、『ホイップあんパン』を口にする。

「!? あんこの甘さとホイップの甘さでガンガンくる系かと思ったら、意外とホイップが軽くてオヤツに食べるのにちょうどいいぞ!」

ナズナの予想ではあんこ&ホイップの二重の甘さでがっつり来る系かと思いきや、違っていた。

ホイップの軽い甘さと舌触りがあんこを際立て、『オヤツに丁度良い甘食』に仕上げてきたことに驚く。

彼女の予想を超えて、ある意味嬉しい予想の裏切りになったようだ。

ナズナは美味しく『ホイップあんパン』をペロリと食べきった。

「今度から、あんパンを買うときは、三回に一回は『ホイップあんパン』を買ってもいいかもな」

彼女の中で『ホイップあんパン』の存在が大きくなる。

ナズナは美味しさの余韻を流すように牛乳を口にした。

続いてのオヤツは……『フルーツサンド』だ。

ナズナが解放すると、皿の上にフルーツサンドが二つ並ぶ。

彼女は皿の上にあるフルーツサンドを前に、微妙な顔を作る。

「生クリームに各種のフルーツが美味しそうだけど……どうしてわざわざ食パンで挟んでいるんだ? これならケーキを食べた方が美味しいんじゃないか?」

生クリームとフルーツのお菓子といえば、ナズナの中ではケーキだった。

別にパンが嫌いなのではない。

ただ『フルーツサンドを食べるぐらいなら、上位互換であるケーキを食べた方がいいのではないか?』という考えがどうしてもぬぐえなかったのだ。

だが、そんな偏見で食べないのは道理が立たないため、今回『一度ぐらいは』と購入したのである。

ナズナは『フルーツサンド』に手を伸ばす。

「おお、美味しいぞ!? 生クリームが濃厚で、フルーツの食感がそれぞれ違って甘くて、食パンも食べやすくていいな」

ナズナは『フルーツサンド』を飲み込むと、感想を漏らす。

食パンのお陰で手は汚れず、生クリーム&フルーツもたっぷり入って非常に食べ応えがあった。

素材は確かにケーキに近いが、思った以上に明確な別物だった。

なにより生地が食パンのため、手を汚さず食べられるのがナズナ的にはポイントが高い。

これなら外で、生クリーム&フルーツ欲が高ぶった場合、気軽に食べられるオヤツに最適だった。

「今回は色々果物が入ったミックスを選んだけど、『フルーツサンド』は色々な種類のフルーツがあったからな。これだけ美味しいなら、色々開拓しがいがありそうだな!」

ナズナはコップに残った牛乳を飲み干し、今回食べた『ミックスフルーツサンド』以外にもイチゴ、キウイ、オレンジ、マンゴーなど多数種類があるのを思い出し、次にどれを食べるか考え、その中で自分好みの味を発見するのを一つの楽しみだと思った。

そして、最後に『サルミアッキ』が残る。

「『イチゴ大福』も『ホイップあんパン』、『フルーツサンド』も最初は怪しんだが、どれも美味しかったな。やっぱり見た目に騙されちゃ駄目だな! ちゃんと食べてみないと! この『サルミアッキ』も他と一緒できっと美味しいに違いないぞ!」

『サルミアッキ』は見た目黒いアメだ。

なぜナズナが『サルミアッキ』を敬遠していたかというと……カードには『世界一不味いアメ』と書かれていたからだ。

わざわざお金を払って『世界一不味いアメ』をオヤツに購入したくなどない。

しかし、ナズナが疎んでいた『イチゴ大福』、『ホイップあんパン』、『フルーツサンド』はどれも美味しかった。

いくらカードに『世界一不味い』と書かれていようとも、やはり実際に食べてみないと駄目だと彼女は改めて自覚する。

『もしかしたら、今まで食べたことがない美味しい物なのかもしれない』とナズナは胸中で期待すら持つ。

むしろ、他にも食べず嫌いなお菓子がまだある。

もしかしたら、それらも実際に食べれば美味しいのかもしれない。

ナズナは以後、また機会があればそれらオヤツに手を出しても良いかもしれないと考えた。

そんなことを考えながら彼女は『サルミアッキ』を解放し、パッケージを開いて迷わず、その黒いアメを口にする。

ちょうど口にした所で、アイスヒートが通りかかった。

彼女もちょうど休憩時間らしく、手にはカップとクッキーが綺麗に置かれていた。

アイスヒートはナズナに笑顔で声をかける。

「ナズナ様、オヤツの時間ですか? よければアイスヒートも同席してもよろしいでしょうか?」

「おお、いいぞ、あたいもちょ――」

「? ナズナ様?」

「オロロロロ……ッ!」

「な、ナズナ様!?」

台詞の途中でナズナが『サルミアッキ』のあまりの不味さに顔色を悪くした。

そして、堪えきれず、その場で嘔吐。

ナズナは『世界一不味いアメ』の実力をある意味、舐めていたのだ。

アイスヒートは自分が声をかけたらナズナが嘔吐しだしたことに困惑する。『自分が何かしてしまったのか!?』と動揺してしまう。

嘔吐したナズナは、アイスヒートの他にも休憩中の妖精メイド達が駆け寄り、看病される。

汚れた装備、机周りも綺麗に掃除された。

そしてナズナは以後、『サルミアッキだけはたとえどれだけ空腹でも絶対に口にしない!』と誓いを立てたのだった。