軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『無限ガチャ』コミックス六巻発売記念SS モヒカン達の地上飯

「ヒャッハー! 見ろよあの必死の表情!」

「助けて欲しかったらちゃんと『助けてっ』って言うんだぞ!」

「でないと俺達が獲物の横取りをしたマナーのない冒険者になっちまうからな!」

モヒカン達は現在、人種王国領内にある街に滞在していた。

彼らは『奈落』最下層でカードから顕現された存在だ。

地上で正体を隠し、人種冒険者として活動し情報収集するのが任務である。

彼らのような存在は他冒険者、商人、吟遊詩人などそこそこ存在していた。

そんなモヒカン達が、街の近くにある森へ冒険者クエストで足を踏み入れた。森でクエストをこなしていると、戦闘音が耳に入る。

モヒカン達のレベルは低い。

なので自分達の身を守るためにも、誰が、どのようなモンスター(もしくは山賊など)と戦っているのか遠目に確認しに向かう。

これを怠った場合、不意打ちを受けたり、逃走不可能な強者とばったり遭遇などの可能性はゼロではない。

情報を軽視するのは自分達の命を縮める行為だとモヒカン達はよく知っていた。

そんな彼らが戦闘音を確認しに向かうと――人種若者2名、ゴブリン×2が戦っていた。

人種若者2名は、農村から追い出された次男、三男という風貌で、鎧など着ておらずただの衣服に袖を通し、武器などその辺で拾った木の棒だった。

二人とも装備が貧弱で、やせ細って顔色も悪い。そのせいで最弱であるゴブリンを倒すことができないでいた。

むしろ、ゴブリンの方が錆びたナイフ、ぼろぼろだが盾を手にしている分、装備が良い。

恐らく冒険者が捨てたか、落としたのを拾って再利用しているのだろう。

命の危機ではあるが、ここで横殴りをしてゴブリンを倒した場合、モヒカン達が批難を受ける。

『あそこから逆転する手があった』と主張されたら反論は難しい。

詫び代、迷惑料として金銭を請求されるのも無い話ではなかった。

逆にわざと獲物を横取りして、獲物+救助代を請求する冒険者も存在した。

そのためモヒカン達は、一応声をかけて相手から了承を取ろうとする。

地上での情報収集を目的にしているのに、冒険者として評判が悪くなったら情報を得る機会が減ってしまう。

そんなことになったら敬愛する自分達の主、ライトに迷惑をかけてしまう。絶対にあってはならない事態だ。

故に面倒でも声をかけたのである。

当然、若者達の返答は決まっていた。

「た、助けてください!」

「お、お願いします!」

明確な助力依頼をもらった後、彼らは武器を取り出す。

「野郎共、仕事だ!」

『ヒャッハー!』

装備を調えた栄養をしっかりと取っている若い男性冒険者なら、ゴブリンを倒すのはそう難しくない。

戦闘慣れしているのもあり、モヒカン達はあっさりとゴブリン×2匹を始末する。

討伐証明の耳を削ぎ、遺体を処理してから、その場に汗だくでへばっている若者×2名を連れて森を出た。

ゴブリンの耳は討伐証明として、冒険者ギルドに提示すれば金銭を得られる。

ゴブリンはすぐに増えるため『見つけたら倒す』ことが推奨されている定番クエストだ。

救助後、森を抜けて、安全地帯である平野へと移動した。

疲労困憊の若者×2は、平野部に直に腰を落とす。コップに注がれた水を渡され飲み干し、二杯目は塩入りの水を渡される。

塩分補給は汗をかいたため、熱中症対策だ。

その水を飲み干した所で、ようやく一息つくことが出来た。

モヒカンリーダーが、二人の姿を頭からつま先まで確認してから苦言を告げる。

「俺達が通りかかったからよかったが、そんな装備でゴブリンとはいえ相手をしに行くのは無茶が過ぎるぞ。もう少し数が多かったら、俺達が気づく前に殺されていたかもしれないんだからな」

「す、すみません」

「で、でも自分達、村を追い出されて、金もなくて……」

若者達はモヒカン達の厳つい見た目に恐縮しつつも、自分達が抱えている現状をはき出す。

不満を吐き出さなければやっていられないという、投げやりな精神状態もあったのだろう。

――二人の話は人種王国ではよくある話だ。

三男、四男で幼なじみ同士の二人は、そこそこの年齢に育ち、継ぐ畑もないため、家を追い出された。

村からも追い出され、何もしなければ飢えて死ぬだけ。

なので街に出て冒険者の資格を得る。

資格は得たが、薬草採取、薪拾い、ドブさらいなど、下っ端冒険者のクエストをこなす日々。

しかし、下っ端クエストのため報酬は安く、装備を貯めるため貯金もしたいが、その日の食事、宿泊代、消耗品代などのせいでなかなか貯まらない。

なので食事代を削り、資金を貯めていた。

そして、あと少しで届きそうな額になった――が、そこで欲が出てしまう。

討伐クエストを受ければすぐに貯まる金額。

なら一か八か、報酬の多い討伐クエストを受けることに決めた。

しかし結果はご覧のありさまだ。

『最弱のゴブリンなら問題無いだろう』と考えていたが、装備代をためるため食費を削った。

自分が想像する以上に体力が落ちていて、さらに敵の装備が充実していたのもあり、逆に殺されそうになっていたのだ。

一通り話を聞いてモヒカンリーダーが叱る。

「装備貯金がもう少しで貯まる。その『もう少し』が我慢できず、まともな装備もなしにゴブリンを狩ろうとした気持ちは理解できる。2対1になる相手を探さず、『同数だから』と手を出したのも、理解できなくない。そうそう敵が都合良く1匹でいるなんてないからな。だが……冒険者が安易に食事を抜いたら駄目だろう」

「だな。冒険者は下の方だろうが上の方だろうが体が資本」

「金がなくて一番削りやすい食費を削るのは理解できるが、そんなふらふらになるまで削ったら本末転倒だろう?」

「いくら装備が良くても体力が落ちていたら武器を十全に扱えず、敵を倒すことなんてとてもできないぞ」

「ヒャッハー!」

リーダーだけではなく他モヒカン達も冷静にツッコミを入れる。

正論ではあるが……。

若者達の反応は鈍い。

「で、でも街の食事は高いですから……」

「自分達で料理するにも調理器具は高いし、自炊する場所もないですし……」

若者達の言い分も一理あった。

装備を貯めるため貯金しているのに、体に気をつけた食事を摂ろうとすれば高くつく。自炊しようにも、調理器具は高いし、置き場所にも困る上、宿屋で台所を借りるわけにもいかない。なにより装備貯金が無くなったら本末転倒だ。

モヒカンリーダーが軽くため息を漏らすと、お節介を始める。

「なら俺達がやり方を教えてやるよ。オマエ達農村出身なら食べられる野草知識はあるよな?」

「は、はい」

「ある程度なら……」

「なら野鳥を捕まえる簡単な罠を教えてやる。誘き寄せる餌代……パンクズや野菜クズを使えば安上がりに済む。んで捕まえたら処理をして野草と一緒に食べれば肉と野菜が摂れて体にも良く、美味くて街で食べるより安くあがるぞ」

モヒカンリーダーの言葉に若者二人は互いの顔を見合わて、微妙な表情を作る。

「あ、あのだから自分達、調理道具なんて持っていなくて……」

「野草、鳥を捕まえても調理できないんじゃ意味ないですから……」

予想通りの返答にモヒカンリーダーは男臭く笑う。

「安心しろ。調理道具が無くたって美味く料理する方法ならいくらでもあるからな。そのやり方を教えてやるよ」

「調理道具も無く?」

「料理をする?」

若者二人の中で『料理=調理道具が必要』というのが常識だ。

モヒカンリーダーの言葉を聞かされても、想像もつかず頭上に『?』が浮かぶだけだった。

他モヒカン達もニヤニヤ笑いながら、早速教えにかかる。

「まぁ騙されたと思ってちょっと付き合え。まずは野鳥を捕まえる罠から教えてやるよ」

『はぁ……』

若者二人はながされるまま、モヒカン達の指示に従う。

モヒカン達に教わり罠を作り野鳥を確保。

食べられる野草も摘んだ。

他にも皿代わりの大きな葉っぱも手に平野部へと戻る。

「農村出だけあり野鳥の処理も問題ないな」

「こんだけ切れるナイフがあれば、村でやるよりはかどりますよ」

モヒカンリーダーは自分のナイフを若者二人に貸して、野鳥を処理させる。

「それじゃ準備も調った所で、『調理器具を使わない料理』を教えてやるか。その料理は……穴焼きだ」

「「穴焼き?」」

若者二人は聞き覚えの無い名前に小首を傾げた。

モヒカンリーダーが答える。

「別に難しい調理法じゃない。地面に穴を掘って、肉を埋めて、その上でたき火を炊けばいいだけだ。欠点はやや時間がかかるぐらいだな」

実際に指示を出しながら若者二人にやらせた。

まず穴を掘って、石を入れる。

まだ石が冷たいため、その上でたき火をして石を熱くする。

熱くし終えたら、処理が終わった野鳥腹部に野草を入れて、大きな葉っぱでくるむ。

そして穴に入れて石を入れた後、再度たき火。

約1~2時間たき火をすれば、完成だ。

モヒカン達の指示を受けながら、若者二名は無事に自分達だけで『野鳥の穴焼き』を完成させる。

たき火から葉っぱに包んだ野鳥を取り出し、ナイフで切り分ける。

葉っぱの皿に鳥と野草を乗せて、枝をナイフで削りフォークを作り出し食べた。

「う、美味ぇ!? こんな美味い鶏肉、村でも食ったことがないですよ!」

「ま、マジで美味い! こんなに美味いのに一切調理器具を使っていないなんて、信じられない……」

「ナイフは使ったが、それは装備代に入っているだろう? 冒険者なら解体ナイフは必需品だからな」

ゴブリンの耳を削いだり、魔石を取り出すのに必ず必要なため解体ナイフは冒険者にとって必須だ。

それなら装備代の一部で、彼らの貯金に含まれている。

「ナイフで串を作って外で焼けば、焼き鳥を作ることも出来る。他にもアイデア次第で調理器具がなくても美味い料理は十分作れるって分かっただろ?」

「はい! ありがとうございます!」

「こんな美味い調理法を教えてくれるなんて……本当にありがとうございます!」

若者二名はがつがつと野鳥を食べながら、モヒカン達にお礼を告げた。

そんな二人をモヒカン達はニヤニヤと笑いながら眺める。

別にこの二人をこれから罠にはめようと考えている訳ではない。

自分達の調理法が地上住人に通じたのが嬉しいのだ。

モヒカン達は『奈落』最下層出身のため、美味しい料理を知っている。

結果、地上の料理を『美味しい』と思ったことが殆ど無かった。

野外活動が中心のため保存食を口にすることも多く、あまりに不味くて、上に訴えて美味しい保存食制作を依頼したほどだ。

とはいえ地上で活動し続ける限り、美味しくない料理を食べる必要があった。

さすがに『奈落』最下層から料理を運んだり、規格外の調味料や食材などを持ち込む訳にはいかない。

なのでモヒカン達は知恵を絞って少しでも美味しい料理が食べられるように、自分達で試行錯誤したのだ。

その結果の一つが『穴焼き』だ。

ライトの 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』から出た調理本に書かれていたやり方である。

これなら器具を使わず、地上にある材料で調理可能だった。

時間はややかかるが、できたての美味さからは逃げられない。

お陰でモヒカン達は、『奈落』最下層食堂とは比べものにならないが地上で美味しい料理を食べることが出来るようになったのだった。

「野草だけじゃなく、キノコも使うともっと美味くなるぞ。ただし自分達が知っている絶対に毒がないのを使え。知らないキノコを使って毒にあたって死んだら笑い話にもならないからな」

「冒険者ギルドはクエストを受けるだけじゃ無く、新人向けの講習もやっているからギルド員に確認しろよ。文字の読み書き計算は必須だから、金を払ってでも受けろ」

「ヒャッハー!」

モヒカン達も自分達で作った穴焼きを食べつつ、他にも彼らはアドバイスを新人冒険者二名に送った。

日が暮れる前、街に二人を連れて戻るまでモヒカン達は善意で話をし続けた。

そのお陰で新人冒険者二名は、モヒカン達のアドバイスに従い冒険者として活動をして、時間はややかかったが、自立し食べて行くことが出来るようになる。

彼らに『もしモヒカン達に出会いアドバイスを受けなかったら?』と質問したら、『自分達は調理器具を使わない料理の美味しさも知らず、命を落としていました』と断言するだろう。

以後彼らは、モヒカン冒険者を尊敬しつつ、彼らなりに努力し続けた。

――恩人のモヒカンにならって、髪型をモヒカンにする勇気は二人にはなかったが。彼らのモヒカン達に対する感謝の念は本物だった。