軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20話 ゴールドvs 2

「策は浅いが腕は立つ上、頭も回るようだ。どうだゴールド殿、『巨塔の魔女』に見切りをつけて我達側につかないか?」

竜人帝国ドラゴン騎士団長ルドラの寝返り要求にゴールドは――。

「断る!」

即座に拒絶した。

ゴールドが立て続けに説明する。

「さらに言えば、まず我輩は『巨塔の魔女』殿の部下ではない。冒険者として魔女殿から依頼を受けて貴殿の前に立っている。我輩が忠誠を誓っているのは魔女殿ではない別の者故、見切りをつける云々言われても、困ってしまうのだが……」

「事情は理解した……ならば改めてこちら側について欲しい。貴殿が冒険者なら、魔女から支払われる報酬の倍額を支払おう」

「だから断ると言っておるだろう。たとえ報酬の何千倍だされても無理だ。一度受けた依頼を金額の多寡で裏切っていたら、冒険者としての信用が落ちて以後、クエストなんぞ受けられないだろう。しかもここで『倍額払う云々』と口約束しても、絶対に支払われる保証がないではないか。常識的に考えて裏切るなどできるはずなかろう」

ゴールドの正論にルドラは、反論できず顔を顰めた。

彼は続ける。

「第一、我輩程度が裏切り、そちら側についた所で『巨塔の魔女』殿を倒すことなど不可能だ。むしろなぜお主達がこんな暗殺行為が成功すると本気で信じているのか……それが分からないぞ」

「魔女の首は必ず落ちる。なぜなら、我らを率いる者が持つマジックウェポンが 神話級(ミトロジー・クラス) だからだ。どれだけ『巨塔の魔女』が強大な力を持っていたとしても、 神話級(ミトロジー・クラス) の武器を前にあらがうすべなどない」

ゴールドとしてはその話を聞いても、エリーから既にドラゴが持つ 神話級(ミトロジー・クラス) 武具、『終末の槍』について情報を聞かされているためとくに驚きは無い。

性能を聞いた上でたとえ、 神話級(ミトロジー・クラス) 武具、『終末の槍』を手にしたドラゴがエリーの前に立ち戦ったとしても、敵が勝つ可能性はゼロだと考えている。

神話級(ミトロジー・クラス) 武具を手にした程度で『SUR 禁忌の魔女エリー レベル9999』が倒せるなら苦労は無い。

ルドラはゴールドの反応の薄さを前に、微かに笑う。

「どうやら信じていない様子だが、真実だ。何よりこの『転移の剣』が証拠だ」

彼は『転移の剣』を得意気に見せびらかす。

「本来、 幻想級(ファンタズマ・クラス) 『転移の剣』は一度転移した後、再度利用するのに一定時間待つ必要があった。しかし、 神話級(ミトロジー・クラス) 武具、『終末の槍』のブーストによって一時的に強化を受け、疑似 神話級(ミトロジー・クラス) にまで押し上げられたのだ。お陰で転移後、クールタイムを必要とせず何度も転移することができるのだ」

(エリー殿が巨塔全体を強化しているため、外には転移できないようだがな……)

自慢げなルドラの台詞にゴールドが内心でツッコミを入れた。

ルドラが続ける。

「これだけの力に、ゴールド殿の力が加われば確実に『巨塔の魔女』を討つことが出来る。改めて問おう。我らの元にこないか?」

「何度、問われようとも答えは同じだ。断る!」

「残念だ……お主のような凄腕の騎士なら、我の部下にと考えたのだがな……」

ルドラが剣を構え直す。

その瞳は確かな殺意が宿っていた。

「ではゴールド殿を実力で排除させてもらおう」

「!?」

台詞を言い終えると、ルドラの姿が消える。

ゴールドはすぐさま背後に向かって盾を構え直す。

直後、『転移の剣』が振り下ろされ、ぎりぎり防ぐことに成功した。

すぐさま剣で応戦するが、

「また転移で逃げたか。面倒な力を持つ剣だな!」

「剣を交えれば分かる。ゴールド殿は我より随分上の実力者のようだ。であれば、小細工を弄すのは必然」

ルドラは『転移の剣』を駆使して、転移で切りつけ、転移で距離を取るヒットアンドアウェイに徹する。

速度だけを考えるなら、ゴールドを超えているとさえいえた。

フェイントの転移も織り交ぜ、ゴールドを削るように責め立てる。

「卑怯と言わないでくれ。騎士は勝利こそ全て。たとえ人質を取り、相手の動きを抑えて殺すことだってする。全ては勝利のため」

「卑怯というより、『せこい』だな!」

ゴールドはルドラの攻撃を剣、盾で防ぎつつ、舌戦でも反論した。

「しかし貴殿の言い分も理解できるぞ。騎士道とは、どのような形であれ忠義を尽くす主に対して勝利を捧げるのが至上。たとえ犬畜生と罵られてもだ」

「然り。やはり騎士同士、理解しあえる……しかし、どうも我はゴールド殿ほど騎士道に通じていないようだ」

ルドラが転移で距離を取り、口元を歪ませながら告げてくる。

「我はどうしても相手を苦しませて殺すことに快楽を覚えてしまう質だ。これは我の悪癖だ。人種を狩る時などどうしてもわざと首ではなく、腹を割いてしまうことが多々あった。ゴールド殿も知っているだろう? 生物は腹を割かれた程度ではなかなか死なぬ。数時間、生命力があふれている者なら1日以上生きる。その苦しみ藻掻く姿を前にすると、自分こそが勝者、強者なのだと実感してどうしても笑ってしまうのだ。笑みがこぼれてしまうのだ。そのせいでよく部下の手を煩わせてしまったものだ」

「なるほど……確かに貴殿は我輩ほど騎士道精神に熟達していないようだ」

「耳が痛い。しかし、この圧倒的な我の有利を騎士道精神でどうにか出来るものでもないがな」

ルドラは自身の勝利を疑っていなかった。

だが、それはゴールド自身もだ。

ゴールドは呆れたような声で告げる。

「何か誤解しているようだが、この程度、別に窮地でも何でもないぞ?」

「口でこちらの動揺を誘う策か? だとしたら底が浅いのでは無いか?」

「まさか。そのような小細工の必要もないぞ。だが口で言っても証明にはならぬからな。その身をもって自身の敗北を受け入れるといい」

「この窮地にそこまで口が動くゴールド殿に敬意を表わそう。貴殿の骸は魔女を討った後、丁寧に葬るので心配は不要だぞ!」

ゴールドの台詞に、ルドラが返答。

再度、攻撃を開始する。

ルドラは怒りなどで無理な攻撃などせず、先程と同じように転移で地味に、削るようにゴールドを攻撃し続けた。

一方でゴールドも先程の焼き直しのように、ルドラの攻撃をひたすら凌ぐ。

しかしゴールドは余裕の態度を崩さず、剣に炎をまとわせ振るう。

「ジャッジメント・オーバーフレイム!」

「!?」

『巨塔』訓練場を覆い尽くすほどの炎がゴールドの劍身から放出された。

ゴールドの範囲攻撃である。

奇しくもゴールドは、ネムム同様、『巨塔』訓練場という限られた空間を利用し、転移で逃げる敵を倒そうと行動した。

この攻撃にルドラは、

(限られた空間での範囲攻撃!? さすがに転移では逃れられない! ならば……肉を切らせて骨を断つ! この攻撃の隙にゴールド殿の首を頂くぞ!)

ルドラはダメージを負うのを覚悟して、範囲攻撃『ジャッジメント・オーバーフレイム』後の隙を狙ってゴールドの背後へ転移。

その首を刎ねるため、剣を走らせる――が、

「グベッ!?」

ほぼ同時にゴールドの盾がルドラを捉える。

彼は異音を叫び、そのまま壁に衝突。

『転移の剣』と一緒に意識も手放してしまう。

ゴールドは背後に向けてシールドバッシュした体勢後、肩をすくめる。

「範囲攻撃後、我輩の背後に回って首を狙ってくるのが見え見えだったぞ。やはりまだまだ『転移の剣』を使いこなせていないようだな」

範囲攻撃はルドラを誘導するための布石で、本命は殺さず捕らえるようライトからの命令を守るためのシールドバッシュだった。

連続で転移することが出来るのは確かに驚異だが、『ここぞ』という時、必ず背後に転移して首を狙ってきていた。

お陰で範囲攻撃を仕掛ければ必ず、背後に回って剣を振るってくることが予想できた。

動きが分かれば後は、攻撃を当てるだけだ。

いくら制限なしに転移できても、攻撃パターンを読まれたら意味は無い。

「とはいえ戦いの場が制限された訓練場ではなく、野外の場合、面倒な敵だったな。制限された訓練場だったからこそ、それほど手間がかからず倒すことが出来たが」

一応、ゴールドは相手を過小評価せず、冷静にその力を分析し一人感想を漏らすのだった。