軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18話 ネムムvs 2

「い、言ったはずだ。こ、小娘の勝利は消えたと! よ、よ、予告通り、小娘には最大級の絶望をあ、あ、味わわせてから殺してやるぅうぅうぅぅッ!」

竜人種の魔術師であるドヌラの台詞に、ネムムが苛立ちを覚える。

「……その力に覚えがあるわ。正確には『経験者から聞いた人から聞いた』だけど。恐らく、『世界からの希薄』でしょ。なら自分の攻撃が素通りしたのも納得できるもの」

ドワーフ王国が所持している大規模過去文明遺跡に過去、ライト達は依頼で潜った。

その際、ライト達は過去文明の者達が作り出した人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器から攻撃を受けた。

その人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器、『蛇擬き』にライト側が攻撃を加えると、なぜかヒットしたにもかかわらず素通り。さらには障害物すら、まるで幽霊のごとく通り抜けることが出来たらしい。

この戦いに参加したメラが、何も出来ず本来守るべきはずの敬愛するライトから守られる始末。

落ち込んだメラは、親友であるアイスヒートに愚痴り、最終的により強くなるため『奈落』最下層にある武器、防具、マジックアイテムなどを漁った。

そんなメラの愚痴を聞いたアイスヒートから、又聞きで『蛇擬き』が持つ能力の話をネムムが聞いたのである。

故にドヌラに攻撃したはずなのに素通りしたことから、彼の持つマジックウェポンの力にいち早く気づくことが出来たのだ。

ネムムの指摘にドヌラは調子良く答える。

「せ、せ、正解! ま、まさかこれほど早く気づかれるなんて。小娘、な、なかなか頭が回るじゃないか!」

ドヌラはネムムから姿が見えず、触れることも出来ない圧倒的優位から調子に乗って、自身の持つマジックウェポン『空疎のナイフ』の力を気持ちよくペラペラ喋る。

「『空疎のナイフ』は本来、『対象の姿を消す』ち、力しかなかった。し、しかし、ドラゴが持つ 神話級(ミトロジー・クラス) 武具、『終末の槍』のお陰で力をぶ、ブーストすることが出来るんだ! そのお陰で『空疎のナイフ』の力が大幅に強化! 幻想級(ファンタズマ・クラス) の力を超えて一時的に 神話級(ミトロジー・クラス) にまで押し上げることが出来たんだ! その結果、姿を消しつつ、世界からすら干渉されない、この力を使っている限り誰にも傷つけられない力を得たんだ! それだけじゃない!」

彼はさらに調子にのって実演してみせる。

『巨塔』地下訓練場床に傷が付く。

ドヌラが『空疎のナイフ』を振るって床に傷をつけたのだ。

とはいえエリーの魔術で強化された床は、すぐに修復して元に戻ってしまったが。

「『空疎のナイフ』をオーバーブーストすることで、世界から干渉されなくなったにもかかわらずこちらからは一方的に攻撃することが出来るんだ! ま、まさに最強の力! こ、この力を使った以上、こ、ここ、小娘! オマエにあるのは苦しんで死ぬ未来だけだ!」

「…………」

「ひ、ヒヒヒヒ! どうやら絶望し過ぎて声も出せないようだな。だが自分を馬鹿にし見下したことは絶対に許されない! あ、暗殺家業は嫌なことばかりが多かったが、楽しいこともそれなりにあった。特に ヒューマン(劣等種) の女子供をいたぶるのが最高だった。よ、よ、弱い者を一方的なち、力でいたぶっていると自分が相手の生殺与奪を握った神のような気分になって絶頂をお、覚えるんだ」

『ぴちゃぴちゃ』と粘着質な音が響く。

どうやらドヌラは興奮して、『空疎のナイフ』の刃を舐めているらしい。

「クソ魔女を殺す仕事があるから、あ、あんまり長居は出来ないが、げ、げ、限界までいたぶってやるから覚悟しろ。お、オマエにどちらが上で、どちらが下か、文字通りか、体に刻んでやる!」

「……話は終わり? 警戒して情報を引きだすことを優先したけど……。奥の手がこの程度なんて……ショボ過ぎるわ。警戒し過ぎた自分が馬鹿みたいじゃない」

「!?」

一通り話を聞き終えたネムムは、心底下らなさそうにため息を漏らす。

彼女の態度から心底『無駄な時間を過ごした』というのがありありと伝わってくる。

恐怖と絶望どころか、落胆されたのが一目で分かる態度に、ドヌラは動揺してしまう。

「ざ、戯れ言! 苦し紛れは、み、み、見苦しいぞ!」

「雑魚に雑魚と言って何が悪いの? まぁいいわ。言葉で説明するのも面倒だからもう倒してしまいましょう」

ネムムがアイテムボックスから、アイテムを取り出す。

彼女の手には複数の球が握られていた。

ネムムは迷わずその球を周囲に投げる。

ドヌラは最初、その球が範囲攻撃をする使い捨てマジックアイテムのたぐいかと警戒した。しかし、たとえ範囲攻撃を仕掛けられても、彼を傷つけることは出来ない。

『空疎のナイフ』をオーバーブーストし、世界から干渉されなくなっている以上、誰も彼を傷つけることが出来ないからだ。

ドヌラは余裕の態度を崩さず、球を見送る。

――それが敗着手だと気づかずにだ。

球が割れ、煙が溢れ出す。

煙はどんどん広がり『巨塔』地下訓練場を満たしていく。

気づけばネムムすら視界から消えるほどにだ。

「――!? こ、これは!?」

ドヌラは慌てて口を押さえた。

「指、指先がかすかに、し、痺れる。し、痺れ毒のけ、煙!?」

慌てて息を止めた。

できれば思いっきり空気を吸ってから止めたかったが、そんなことをすれば痺れ毒を吸い込むことになるため出来ない。

彼は息を止めたまま、ネムムを探す。

(ま、不味い! 息が途切れる前にあの小娘をこ、殺さなければ! ……っ!? こ、小娘はどこへき、き、消えた!?)

ネムムは煙で姿が遮られるとすぐに気配を消し、ドヌラから距離を取った。

レベル5000の暗殺者が煙に紛れて姿を消したのだ。

並大抵の者では発見するのは困難だ。

もしドヌラに範囲攻撃があれば、少しだけマシだったかもしれないが……。

暗殺特化のためそんな技能は持っていない。

さらに言えば、たとえ所持していてネムムの姿を改めて発見できたとしても、逃げに徹しられたらまず追いつけなかった。

ネムムは当然、煙の痺れ毒に耐性を持っているため、呼吸はし放題。どれだけ激しく動いても問題はない。

一方でドヌラは、胸一杯に煙を吸ったら痺れて動けなくなってしまう。

蛇擬きと違ってドヌラは生物。

生物である以上、呼吸しなければ死ぬ。

つまり、煙玉を投げられた時点で勝敗は決していたのだ。

酸素不足で顔を青くしながら、ドヌラは懸命にネムムの姿を探す。

(ど、どこだ! こ、こ、小娘はどこにいるんだ! このままでは自分は――)

必死に探すだが当然姿どころか、影すら発見できない。

約5分後……我慢できず呼吸したドヌラが、煙を胸一杯に吸って痺れてしまう。そのまま彼は意識を失ってしまった。

煙が晴れる頃、ネムムが痺れて意識を失い倒れるドヌラへと歩み寄る。

ドヌラが意識を失ったせいで、『空疎のナイフ』の力が解除されてしまったのだ。

彼女はドヌラを見下ろしながら、確信する。

「ペラペラ喋る間に攻撃すれば、ほんの僅かの可能性ではあるけれど自分に傷をつける程度のことはできたかもしれないのに。やっぱり地上の暗殺者は大道芸人のようね」

ネムムの中で暗殺者集団『 死剣(モルテ・スパーダ) 』と竜人帝国暗部実行部隊隊長ドヌラのせいで、『地上の暗殺者=大道芸人』という図式がなりたってしまった。

とはいえ彼女は無事にライトの命令通り、侵入者を殺さず無力化するのに成功したのだった。