軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17話 ネムムvs 1

ライト達と分かれた後、ネムムは一人『巨塔』地下にある訓練場へと向かう。

階段を降りきり、閉じた出入り口の前で、エリーに念話で通達。

エリーはすぐに出入り口を開放し、ネムムは素早く中へと入る。

ネムムが入った後、再び出入り口が閉じた。

これで誰もここには出入り出来なくなる。

(……? 誰もいない?)

ネムムは既にナイフを抜き、警戒しつつ隔離された訓練場へと入り込んだ。

しかし、ぐるりと周囲を確認しても侵入者の姿はなく、気配もない。

訓練場は広い円形の広場で、一部壁に訓練用の武器、防具、マジックアイテムがおかれているが、隠れる場所などない。

せいぜい、壁の隅にあるベンチの陰ぐらいだが、それでも話に聞く人物――大の男がいくら体を縮めても隠れられるほど大きくはなかった。

(逃げた? ありえない。エリー様が捕らえたと仰っているなら絶対にここにいる。ではなぜどこにもいな――ッ!?)

ネムムは背後から奇襲に反応し、前方に向かって身を投げ出すように転がり回避、距離を取った。

そのままナイフを構えつつ振り返ると、頭からすっぽりと黒いぼろ布のようなフードを被り、手には大ぶりのナイフを握りしめた竜人種が立っていた。

彼は自身の不意打ちを回避したネムムに対して追撃せず、驚愕の表情を作る。

「ば、馬鹿な……ど、ど、どうして今の一撃を回避することがで、できるんだ。姿は完全に消えていた、は、は、はずなのに……ッ」

「……確かに姿は気づけなかったけど、攻撃する瞬間に殺気が漏れたから回避できたのよ。殺そうとする瞬間に殺気を漏らすなんて、三流の証拠ね」

「ち、違う! 三流違う! じ、自分は竜人帝国暗部実行部隊隊長ドヌラ! 竜人帝国最強の暗殺者ドヌラだ! さ、三流じゃない!」

ネムムの『三流』という言葉にプライドを傷つけられたせいか、顔色を変える勢いで声を張り上げた。

だがネムムは『竜人帝国暗部実行部隊隊長』、『竜人帝国最強の暗殺者』という部分を耳にするとあからさまに疑わしい視線を向け出す。

「……以前、この地上で自称最強の暗殺者集団『 死剣(モルテ・スパーダ) 』の奴らを相手にしたことがあるけど、酷かったわ。『暗殺者』という名前の大道芸人達だったせいで自分はライト様の前で大恥をかいて、ゴールドに馬鹿にされたの。一応、訊くけど……貴方もそのたぐいではないでしょうね?」

この問いに竜人帝国最強の暗殺者ドヌラは、嬉々とした態度で返答する。

「『 死剣(モルテ・スパーダ) 』は、た、確かに構成員達のれ、レベルは低い。大道芸人とよ、呼ばれてもしかたないだろう。しかし、『 死剣(モルテ・スパーダ) 』の団長であるぎ、ぎ、ギラは『地上で最強の暗殺者集団』の名前にふ、相応しいだけの実力者だった」

『しかし』という言葉の後、ドヌラの姿が透けて姿を忽然と消えてしまう。

彼は得意気に語り続ける。

「幻想級マジックウェポン『空疎のナイフ』の力があれば、じ、自分はあの『 死剣(モルテ・スパーダ) 』団長ギラすら超える! つまり、じ、自分こそが地上最強の暗殺者! この力で、『巨塔の魔女』の首を取り、だ、だ、脱出する為の席を得る! そして新天地では暗殺者など二度とやらない!」

ドヌラの声には物理的に溢れ出そうなほどの実感が伴っていた。

「こ、国家の暗部を支えるためか、陰に潜み長い間、か、活動を続けてきた……。し、しかしその間、どれだけ竜人帝国に徒なす要人、邪魔な者達の女房子供の暗殺、他にも汚い仕事はな、なんでもしてきた! にも関わらず、誰にも評価されず、場合によって、ひ、日の当たる表の人間に蔑まれ、さ、さらには奴らの功績にさ、さ、されて横取りされてきた! そ、そんなのはもうたくさんだ! だから、新しい場所ではあ、暗殺者なんてやめて、自分も、自分も日のあたる仕事をして、ま、周りから認めてもらう! 皆の人気者に! 輪の中心に立つんだ!」

彼が今回の『巨塔の魔女』暗殺に参加した動機を聞かされたネムムは……。

心底どうでも良いという態度で切って捨てる。

「くだらない。心底どうでもいいわ……」

「く、く、くだらない!? ど、どうでもいい!? き、貴様のような日に当たるぬるい場所にいる者達には分からないだろう――ガキャァ!?」

台詞の途中でネムムが蹴り飛ばす。

蹴られたせいで幻想級マジックウェポン『空疎のナイフ』の力が消えたのか、消えていたドヌラの姿が再び現れた。

ネムムは未だ意識を失わなかったドヌラに小首をかしげる。

「おかしいわね……気絶させるつもりだったのに、まだ意識があるなんて。殺さないで捕らえるため加減を間違えたようね……」

「か、かか、加減の問題ではない! ど、どうして自分をけ、蹴ることがで、出来たのだ!? 確かに姿を隠して、位置だって足を止めず絶えず移動していたのに!」

「姿が見えなくてもあれだけ声を出していれば、位置を特定するのは簡単よ。むしろ、何か罠でも張ってあると思ったけど……。やっぱり地上の暗殺者は大道芸人のようなものかしら?」

「こ、ここ、小娘……ッ!」

あからさまに見下され、ため息交じりに馬鹿にした台詞を聞かされ『竜人帝国暗部実行部隊隊長』、『竜人帝国最強の暗殺者』であるドヌラはフードの下からでもはっきりと分かるほど顔を赤くした。

「こ、殺す! 魔女だけではなく! こ、こ、小娘! オマエも惨ったらしくこ、殺してやる! 『空疎のナイフ』! オーバーブースト!」

顔を真っ赤にしたドヌラが、『空疎のナイフ』で再び姿を消す。

一部、気になるかけ声をかけたが……。

ネムムからすると先程との違いが分からなかった。

ドヌラは一方的な勝利宣言をあげる。

「こ、この力を使った、じ、時点でこ、小娘の勝利は消えた! 足のけ、腱を切って自由を奪った後、その綺麗なか、顔を切り刻み、指を切り落とし、皮膚を野菜の皮のようにむ、剥いて最大級の絶望をさ、させながら殺してやる!」

「本当に暗殺者なの? 先程の反省がゼロなのだけど?」

ネムムは先程指摘した問題――いくら姿を消しても声を出していれば、位置を特定し攻撃が可能。

結果、先程ドヌラはネムムに蹴り飛ばされたにもかかわらず、彼は再度調子に乗った台詞を吐き出す。

当然、ネムムは構わず声から位置を特定し、攻撃をしかけるが――。

「!?」

彼女の蹴りが空を切る。

ライトから『殺害不許可』の指示を受けているため手加減した蹴りだが、ドヌラに回避されるほどぬるくはない。

ドヌラが姿こそ見えないが、嫌らしく笑う。

「い、言ったはずだ。こ、小娘の勝利は消えたと! よ、よ、予告通り、小娘には最大級の絶望をあ、あ、味わわせてから殺してやるぅうぅうぅぅッ!」