軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16話 『巨塔』集合

『――以上が、巨塔爆発の詳細になります』

「…………」

ミヤと個室で食事会をしていると、彼女がお茶のお替わりをもらいに席を立つ。

実際はミヤがトイレに出る口実で、最初は彼女の意図に気づかず引き留めかけたが、ゴールドのフォローによって恥をかかせることはなかった。

――そして、ミヤが席を立ち暫くすると爆発音が響く。

ネムムとゴールドが素早く立ち上がり僕をガードする体勢を取る。

音の響き方から察するに、このレストランで何かあった訳ではない。

爆発音の発生元は『巨塔』からだ。

それに気づくと同時に、妖精メイドから緊急の念話が届く。

僕の復讐相手、最後の一人であるドラゴがなぜか『巨塔』執務室で仕事をしていたエリーの目の前に転移。

他に同行していた竜人種から攻撃を受けた。

その結果が先程の爆発音だ。

ドラゴ達からの攻撃によって『巨塔』内部が一部破壊されたが、エリーと側にいた妖精メイドに怪我はなし。

ドラゴ達は突然の時計屋の乱入で驚き、エリーは硬直したその隙を突いて、ドラゴ達を『巨塔』地下にある訓練場に隔離。

出口はエリーが塞ぎ、ドラゴが持つ 神話級(ミトロジー・クラス) 武具でも出られないように魔力を過剰に注いで監禁している――が、それも持つのは彼女の魔力が尽きるまで。

時間にして数十分。

あくまでこの時間は目安で、ドラゴ達にこちらの想定していない切り札があり、脱出する可能性はゼロではない。

なので指示が欲しいと連絡が来たのだ。

エリーが直接念話しないのは、本当に手が離せないからだ。

最後の復讐相手がすぐ近くに居ると知り、殺気が漏れ出る。

「――主よ。そのような殺気を漏らして一般人が触れたら即死しかねんぞ。落ち着くまで我輩がミヤ殿の足止めをしておこう」

ゴールドがそう言うと、部屋を出てミヤの足止めに向かう。

確かに彼の言葉通り、こんな殺気を一般人やミヤが浴びたら影響が出てしまう。

僕は気持ちを落ち着かせるため深呼吸を繰り返す。

「……時計屋の件はしかたないよ。彼がそうなったら止められるのは一人しかいない。だから、時計屋を止めるため彼を『巨塔』に呼び出して向かわせてくれ。一緒にメイとアオユキも呼び出しておいてくれ。あと恐らく『巨塔』周辺に人々が集まってくるだろうから、適当な言い訳……『魔術実験の失敗で爆発した』と言って誤魔化しておいて欲しい。それから――」

他にも複数の指示を出した。

指示を出し終えると『畏まりました』と妖精メイドとの念話が途切れる。

「ダーク様、ゴールド達が戻ってきます」

僕の側に付いているネムムが、気配を感じ取り報告してくる。

僕は『ありがとう、ネムム』と軽く手を上げて返答した。

仮面を被っているとはいえ雰囲気に出ないように、再度深呼吸を繰り返し気持ちを切り替える。

扉が開きミヤ、ゴールドが戻ってきた。

僕は意識して笑顔を作り、ミヤへとお礼を告げる。

「お茶のお替わりを持ってきてくれてありがとう、ミヤちゃん」

「いえ、結局、途中でゴールドさんが持ってくれたので」

「先程、妙な爆発音が聞こえたからな。念のためミヤ殿の様子を確認してくるよう主に言われたのだ。問題がないようでよかった、よかった」

ゴールドは人数分のお茶が乗ったお盆をテーブルに置きながら場の空気を和やかにするような調子で答える。

僕も彼の雰囲気に呼応するように口を開く。

「さっきの爆発音は僕も驚いたよ。店員に聞いたら、『巨塔』から煙が上がっているらしいんだ。……それで、僕達を今回雇っている人が『巨塔』に今日用事で顔を出しているから、念のため雇用主が無事かどうか確認しに行こうと思う。折角時間を作ってくれて、こちらから誘っておいて申し訳ない。お詫びって訳じゃないけど、また別の日に改めて食事会を開かせてくれないかな?」

「はい、大丈夫です。雇用主の無事を確認するのもお仕事の一環ですものね!」

ミヤは僕の言い訳に嫌な顔を一つせず笑顔で了承した。

むしろ、彼女の表情から『ダークさんは真面目でいい人だな』と尊敬の視線を向けられてしまう。

(こんないい子に本当の事を言えないのは申し訳ないけれど……)

最後の復讐相手であるドラゴがすぐ側にいるのだ。

何を優先するかなど決まっている。

僕は内心の復讐心を表に出さないよう心の奥底にとどめながら、ミヤへ返答する。

「ありがとう、ミヤちゃん。それじゃ悪いけど先に出るね。ネムム、ゴールド、行こうか」

「はい、ダーク様」

「うむ! ではミヤ殿、中座、失礼するぞ」

「皆さん、気をつけて行ってらっしゃい」

ミヤは笑顔で僕達を見送ってくる。

個室を出て、店の外に出ると僕達は急ぎ『巨塔』へと向かう。

途中、人目を避けて『SSR 存在隠蔽』を使用。

『SSR 存在隠蔽』使用後は、人目を気にせず全力で移動した。

お陰ですぐに『巨塔』周辺に到着する。

『巨塔』周辺には、爆発を心配して住人達が遠巻きに集まっていた。

この住人達に対しては、『巨塔』から顔を出した妖精メイド達が先程の言い訳を口にして安堵させて回っていた。

「先程の爆発は魔術実験の失敗によるものです。お騒がせして申し訳ありません」

「『巨塔の魔女』様に怪我はありませんので、ご心配する必要はありませんよ」

「瓦礫の撤去作業をしますので、危ないから近づかないでください」

他にも妖精メイドが周辺に集まった者達だけではなく、二人一組で街へと散らばる。

彼女達は街に散らばって『先程の爆発は魔術実験の失敗によるもの』、『騒がせてしまって申し訳ない』と人々に伝えることで、周知させるのが狙いだ。

またドラゴ達の他にも『巨塔街』に入り込んだ者達がいる可能性もある。

そのため二人一組で街を回らせて、侵入者がいないか探させているのだ。

とはいえ、周辺に張られている魔術防御はエリーによるものだ。

ドラゴ達のように本来ならそうそう簡単に進入など出来るはずないのだが……。

僕達は妖精メイドの活動を横目に、『巨塔』内部へと入る。

『巨塔』内部にはすでに呼び出していたメイとアオユキが到着していた。

内部に入れば関係者しかいないないため、『SSR 存在隠蔽』を解除し、僕は二人に声をかける。

「メイ、アオユキ、急遽呼び出して悪かったね」

「いえ、ライト様のお呼び出しとあれば、駆けつけるのが当然です」

「にゃ~」

メイはメイドらしくきっちりと答え、アオユキはいつも通り猫語で答える。

僕は二人以外の影を探す。

「時計屋を止める役の彼は――」

「申し訳ありません。念話で連絡したのですが、現在、妹ユメ様のお相手をしておりまして。少々抜け出すのに時間がかかってしまい未だ到着しておりません」

メイが申し訳なさそうに答えた。

僕は笑顔で返答する。

「ユメの面倒を見てくれていたのならしかたないよ。なら到着次第すぐに時計屋を止めに行くよう、そしてついでに侵入者の迎撃も頼むと伝えておいてくれ」

「畏まりました」

メイは僕の指示を聞くと一礼。

念話カードを取り出し、すぐに連絡を取り出す。

僕はその間、他の者達に視線を向ける。

「ではこれより『巨塔』地下訓練所に隔離されている侵入者を捕らえる。ネムム、ゴールド、情報を引き出すため殺すのはなしだ。可能な限り生きたまま捕らえろ」

「お任せください、ライト様!」

「うむ、任せるといい。必ずや生きて侵入者を捕らえてみせよう」

相手は 神話級(ミトロジー・クラス) 武具、『終末の槍』で手にしているマジックウェポンをブーストしているらしいが、所詮レベル2、3000前後。

ネムムとゴールドなら問題なく捕らえることが出来るだろう。

メイが念話を終えるのを俟って指示を出す。

「メイとアオユキは僕の護衛に。声をかけるまで手出しは無用だよ」

「畏まりました」

「にゃ!」

メイとアオユキは万が一に備えた護衛だ。

基本、僕の最後の復讐相手であるドラゴに手を出させるつもりはない。

一通りの指示を終えると、早速『巨塔』地下訓練場へと足を向ける。

「ではエリーの魔力が切れて逃げられる前に、さっさと乗り込んで侵入者達を捕らえようか」

皆、返事をしながら僕の後へと続き、『巨塔』地下訓練場へと向かったのだった。