軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13話 暗殺

――時間を戻す。

竜人帝国郊外。

神話級(ミトロジー・クラス) 武具、『終末の槍』が保管された郊外宝物庫。

『終末の槍』が刺さっていた広場に、ドラゴを含めた『巨塔の魔女』暗殺に向かう人材達が集合していた。

リーダーとしてドラゴが告げる。

「これより『巨塔の魔女』の首を討つ……ッ」

神話級(ミトロジー・クラス) 武具、『終末の槍』を手にしたドラゴを前に、突入メンバー3名が無言でうなずく。

ドラゴを含めたこの4人で、『巨塔』へ乗り込み、魔女の首を討つことになっていた。

一人は顔に傷があり、鎧をまとっている下にも歴戦の古傷があることがうかがえる騎士だ。盾に剣という一見するとごく普通の装備だった。

もう一人は頭からすっぽりと黒いぼろ布のようなフードを被っている。

着ている衣服も黒で、手や足など体全体を隠していた。

もし夜道で出くわしたら『幽霊』と誤解して腰を抜かしてしまうだろう。

まとう雰囲気も陰気で、大鎌を持たせて『竜人種専用の死神です』と他者に紹介したら信じられそうな人物だった。

最後の一人は老人だ。

竜人種にもかかわらず一目で老人とわかるほど衰えているが、目だけはこの場にいる誰よりもギラギラと鋭く、燃えている。

手にはほぼ背丈大の杖を握りしめ、頂点部分に各種モンスターの頭蓋骨が模された飾りが施されていた。

他にも彼は全身にマジックアイテムらしき装飾をジャラジャラと身にまとい、一目で『魔術師』と分かる格好をしている。

そんな突入メンバーを前に、ドラゴが兵士に目で合図を送り、紙を配布。

紙には『巨塔の魔女』の似顔絵――といっても、フードを被った顔、横顔、全身の絵が描かれてあった。

ドラゴ自身、その絵を手に取り、突入メンバーに声をかける。

「すでに全員頭に叩き込んでいると思うが、彼女が我々のターゲットである『巨塔の魔女』だ。改めて確認してほしい」

「か、かか、確認と言っても、フードを被っているから、顔は確認できませんがね」

「…………」

死神のような格好をしている竜人種が、慣れない態度でツッコミを入れる。

騎士竜人種は黙って、ドラゴの言葉を聞いている。

「この魔女を殺せば儂は……っ」

魔術師竜人種は彼の言葉など耳も貸さず、親の敵のように『巨塔の魔女』の似顔絵をギョロギョロとした瞳で食い入るように見つめた。

端的に言って、死神のような格好をしている竜人種のツッコミは見事に滑っていた。

ドラゴも気にせず話を進める。

「これから『巨塔』に転移して、『巨塔の魔女』を討つことになるが、あくまで狙いは彼女一人だ。妨害してくる者以外無視して、彼女の首だけを狙う。場合によっては魔女が街に逃げ出すことになるだろう。その際、この似顔絵を思い出しすぐに見つけられたらそのまま始末。もし時間がかかるようであれば……この『終末の槍』で『巨塔街』ごと吹き飛ばす。もしはぐれて道に迷い合流が遅れた者がいても、時間になればかまわず吹き飛ばすことをあらかじめ覚悟して欲しい」

最悪の場合、『巨塔の魔女』&彼らごと『巨塔街』を吹き飛ばすと宣言されたが、突入者達はそれぞれ修羅場をくぐり、命を懸ける経験をしてきている。

その程度で尻込みする者はこの場で誰一人いない。

もちろんドラゴ自身もだ。

とはいえ彼の場合、手にする 神話級(ミトロジー・クラス) 武具、『終末の槍』の強さに自信があるだけだが。

当然その際、『巨塔街』に住む人種の老若男女が死亡することに彼らは一切反応を示さない。

彼らにとって人種がどれだけ死のうが関係ないからだ。

ターゲットである『巨塔の魔女』を殺害できれば、その際、巻き添えになる 人種(虫けら) がどれだけ死のうと罪悪感を微塵も抱かない。

ドラゴは彼らの態度に頷き、兵士に似顔絵を渡すと、『終末の槍』を手に三人へと改めて向き直る。

「では問題がなければ突入準備に入るが」

「……是非もなし」

「も、もも、問題ありませんよ!」

「儂が『魔女』を殺してくれる! 『巨塔の魔女』を殺すのは儂だ!」

竜人種騎士が、騎士らしい返事を。

死神っぽい竜人種が無理をして明るく振る舞い、魔術師竜人種が狂気にも似た殺意を『巨塔の魔女』へと向けた。

それぞれの返事を聞き終えるとドラゴが『終末の槍』を彼らに向け唱える。

「――槍よ世界の力を分け与えよ! 増幅強化(ブースト) !」

『終末の槍』から黄金色の光りがあふれ出て、三人を包み込む。

『終末の槍』が彼らの所持するマジックアイテム、マジックウェポンを 増幅強化(ブースト) したのだ。

早い話がバフだ。

準備を終えると、兵士を一瞥し距離をとらせる。

ドラゴはすでに強化済みの転移札を持っている――抗議派閥の貴族の一つが代々受け継いできた家宝の一つだ。

『巨塔の魔女』を討たなければ、『プロジェクト・アーク』の座席がなく、後生大事抱えていても意味が無いため提供された物だ。

本来ならせいぜい数百メートル程度しか転移できないが、『終末の槍』の 増幅強化(ブースト) で能力を底上げ。

一息に『巨塔』前に転移。そこから『巨塔』内部へと侵入し、『巨塔の魔女』を発見し殺害する予定だ。

ドラゴは転移札を手にもう一度無言で、突入班×3人に了承を確認した。

3人とも黙って頷くのを確認した後、ドラゴが転移札を起動する。

「転移札よ! 我々を『巨塔』へと送り届けろ!」

転移札がドラゴの声とほぼ同時に炎に包まれ燃え尽きる。

燃え尽きると同時に彼らの足下に魔法陣が姿が現れる。

魔法陣が強く光を発する。

発し終えると、郊外宝物庫広場に居たドラゴ達の姿は手品のように消えてしまった。

次に彼らが姿を現した場所は『巨塔』出入り口前――ではなく『巨塔の魔女』エリーが仕事をしていた『巨塔』内部にある執務室だった。

『終末の槍』で 増幅強化(ブースト) された転移札だったが、どうやら強くなりすぎたせいで『巨塔の魔女』が居る執務室に転移したらしい。

「え?」

「……はい、ですの?」

『巨塔』出入り口前と予想していたドラゴ達もこれは想像外だったらしく、思わず小さな驚きを漏らす。

『SSR 認識阻害フードマント』も被らず、素顔で妖精メイドにお茶を煎れてもらい執務室で仕事をしていたエリーも、突然の乱入者達に状況が理解できず疑問符がついた声を漏らしてしまう。

ドラゴ側の『巨塔の魔女』討伐作戦は、ターゲットである『巨塔の魔女』を探し出すどころか、本人の前に飛んでしまった。

お陰でドラゴ達の作戦は最初からクライマックスを迎える羽目になったのだった。