軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コミックス5巻発売記念短編 お酒を飲んだ場合の反応は?

「あぁぁ! スズ様々じゃないですかぁ~」

「……ッ!?」

『奈落』最下層、廊下。

夜、『レベル3333 育ち過ぎたノーム アリア』が、通りかかったスズに声をかけた。

彼女は、服の上からでも分かる通り胸も大きく、緩くウェーブがかかっている金髪を背中まで伸ばしている。

バラ色の唇に肌は雪のように白く、一見すると神々しい姿にも見えるほどの美少女だ。

酒が大好きな彼女は酒瓶を片手に持ったまま、既に酔っぱらった赤い顔でふらふらとスズへと近付く。

コミュ障なスズは、普段あまり接点のないアリアに絡まれて、自分の方が高レベルにもかかわらず狼狽えて廊下の壁隅へと移動してしまう。

アリアは既に酔っぱらい上機嫌で、彼女の反応も気にせず陽気に声をかける。

「スズ様々、相変わらず可愛いですね! ロック様々も元気ですかぁー!」

『オッ、オウ元気ダゾ。ありあハあれダナ……イツモ楽シソウデ凄イナ』

「(こくこく)」

インテリジェンスウエポンであるロックは、既に酔っぱらっているアリアに対して当たり障りのない返事をする。

まさか『オマエ、いつも見かけるたびに酔っぱらっているな』とも言えないためだ。

スズもロックの返答に便乗して何度も頷いた。

アリアは照れ臭そうに頭を掻く。

「えへへへ~、凄いだなんてそんなことありませんよぉ。そんなに褒めてもお酒しかでませんからね~」

酒を飲み上機嫌なアリアがロックに褒められたと勘違いして、さらに機嫌を良くした。

彼女は笑顔である提案をしてくる。

「そうだ! スズ様々、ロック様々もこれから一緒にお酒を飲みませんか? まだお二人と飲んだことがないので、折角だから『奈落』やライト様々などについてお話をしながら飲みましょうよぉ~」

『誘ッテクレルノハ嬉シイガ、相方ニハ酒ヲ飲マセナイデヤッテクレナイカ』

「あれ~? スズ様々ってお酒、苦手でしたっけ~?」

ロックのお酒NG発言にアリアが小首を傾げる。

この問いにスズが『フルフル』と首を横に振った。

どうやらお酒自体は苦手ではないし、飲むことは出来るらしい。

では、なぜロックはスズにお酒を飲ませようとしないのか?

『相方ハ酒自体苦手ジャナイシ、飲ムコトハ出来ルンダガ、相方ハ酒ヲ飲ムトスグニ眠クナル体質デナ。サラニ飲ミ過ギルトドンナ場所デモ眠ッテシマッテチョットヤソットジャ起キナクナルンダ。シカモ翌日、マトモニ動ケナクナルホド頭痛ガ酷クナルカラ勘弁シテヤッテクレナイカ』

「なるほど、お酒は美味しいのにもったいない体質ですねぇ~」

スズの体質を聞いて、お酒が大好きなアリアは心底同情した視線を向けてしまう。

スズ本人は料理で使うならともかく、酒自体にそこまで固執していない。なので同情されるほどではないのだが……。

わざわざ訂正するほどでもないため、いつも通り黙り込んでいた。

「そこ、廊下で何を騒いでいる」

スズ達が話をしていると、既に仕事を終えたアイスヒート、メラが姿を現す。

生真面目なアイスヒートが2人に気付き、注意を飛ばしてくる。

別に喧嘩や騒ぎを起こしていないことをロックが説明した。

一通り説明を終えると、メラが愉快気に笑う。

「ケケケケケケ! 初めて知ったぜ。スズにそんな弱点があるとは。面白そうだから、ちょっと飲んでみないか?」

「…………」

「メラ! スズが困っているだろう。本人が嫌がっているのに無理に飲ませようとするな!」

「そうですよ、メラ様々。楽しく飲まないとお酒にも失礼ですよぉ~」

アイスヒートがすかさず助け船を出し、アリアもメラの提案に反対意見を述べた。

メラ自身、冗談で口にしただけで、是が非でもスズにお酒を飲ませたい訳ではない。2人に責められて、愉快そうに笑いながら肩をすくめて意見を引っ込めた。

代わりに別の提案をする。

「ケケケケケケ! 冗談だよ、冗談。別に無理してスズに飲ませようとなんて思ってないさ。でも折角だから、アリアと一緒に飲もうぜ、アイスヒート」

「こら、勝手に決めるな!」

「ケケケケケケ! いいじゃないか。たまにはアリアと飲んでも。アリアは『奈落』上層部のダンジョントラップ関係の仕事がメインで、普段はあまり接点がないだろう? 『奈落』最下層内政を担当する副メイド長なら、この機会に色々話をするのはありだと思うぞ」

「確かに一理あるな……」

「おおぉ! いいですねぇ。アイスヒート様々、メラ様々と一緒に飲みたいですぅ~」

メラの提案にアイスヒートは生真面目に納得し、アリアは嬉しそうにテンションを上げた。

2人の反応に気をよくしたメラが話をまとめる。

「ケケケケケ! なら決まりだな。どこで飲む? 食堂にいくか、あそこなら売店も近くにあってツマミも酒もすぐに揃うだろう」

「食堂なら普段、深く話をする機会がない者達も立ち寄れて、意見を交換できる可能性があるな……。なら食堂で飲むとするか」

「スズ様々もお酒が飲めなくてもいいので、行きましょうよぉ~」

アイスヒートが納得し、アリアがスズに提案する。

彼女はこそこそとロックに自身の意見を告げた。

『アッ……相方曰ク、行ケタラ行クラシイゾ』

「そうなんですか? なら、食堂で待っていますねぇ~」

アイスヒート、メラはスズが絶対に来ないことを理解したが、アリアは彼女の意見を素直に受け容れてしまう。

いくらお酒を飲まなくてもいいとはいえ、コミュ障にとって飲み会そのものハードルが高いのだ。

こうして急遽飲み会が決定し、アイスヒート、メラ、アリアが食堂へと移動する。

スズは1人予定通りその場に残り、安堵の溜息を漏らす。

――そんなスズの背中を廊下の影で見つめる者達がいた。

「スズ様ってお酒を飲むとすぐに眠たくなるんだ……」

可愛すぎて逆に個性を失っている妖精メイドが漏らす。

眼鏡妖精メイドが、眼鏡を動かしつつ、

「しかもお酒を飲み過ぎると何処でだろうと眠って、ちょっとやそっとじゃ起きなくなるんですか……」

「閃いた!」

「これはつ、使えるね!」

ギャル、オタクっぽい妖精メイドが、スズの体の下半分に視線を向けつつ不穏な発言をし出す。

「……ッ!?」

『ドウシタ相方?』

スズはなぜか寒さではない悪寒で体を震わせたのだった。