作品タイトル不明
7話 選別者
ミヤ達が平穏(傍目には)な日常を送っている頃、竜人帝国抗議派は切羽詰まっていた。
とある一室で密談がおこなわれる。
「やはり陛下も、ますたー達も意見を変えなかったか……」
「引き続き意見するつもりだが、恐らく変わらぬだろうな」
「欲深いあいつらが、自分達を犠牲にしてまで我々を助けようなどと考えるはずもないからな」
抗議派閥トップ陣3人が、顔を突き合わせ暗い声で会話を重ねていた。
『巨塔の魔女』が自称勇者達を打倒。
その力の強さに竜人帝国側マスター達が怯え、さらに自称勇者達が打倒されたことで『C』の復活が早まったため、マスター達はさっさとこの星から脱出することを選択した。
結果、計画が前倒しにされて宇宙船の席数が減らされ、元々予定していた乗員が乗れなくなってしまう。
彼ら抗議派はその割を食った者達だ。
そんな抗議派閥が、話を進める。
「『守り手』には話がついたのか?」
「もちろんだ。あの一族も選考から漏れて慌てふためいていたから、すぐにこちらの案に乗ってきたぞ」
「この星から脱出するなら、神話級武具とはいえ、あんな危険物を持って行こうなどとは考えぬか」
小馬鹿にするようにトップの1人が鼻で笑う。
別の1人が深刻そうに告げる。
「竜人帝国が危機に陥った際、使用するように伝わる神話級の武具か……。しかし、使用者を選ぶ上、使用者は死亡する。しかも、暴走し周りに圧倒的な被害を出し、使用者の命が尽きるまで暴れ回ると文献にはあるとか。そんなもの、本当に使うのか?」
「もちろんだ。ますたー達が動かぬ以上、他に『巨塔の魔女』を始末する方法はあるまい。竜人帝国騎士団全部をぶつけても倒されるのがオチだぞ」
竜人帝国側の騎士団には、あの『白の騎士団』団長、『静かなるハーディー』に匹敵する者もいるが……。
所詮、レベル3000前後止まり。
『巨塔の魔女』の首を落としてこいと命令しても、返り討ちに遭うのが目に見えている。
だから、抗議派閥は奥の手――竜人帝国が危機に陥った際、使用するように伝わる神話級の武具を勝手に持ち出そうとしているのだ。
心配そうに告げる者に、別の人物が軽い口調で落ち着かせる。
「問題ない。文献によれば別に1、2度使った程度で理性を失い暴走する代物でもないからな。使用者が命を落とすのも、我々が助かるなら必要な犠牲だ。なにより『使用者が理性を失い、暴走し最後は命を落とす』云々も極一握りの者達にしか伝わっていないし、黙っていれば使用者には分からない。それにどうせ暴れるのは『巨塔』で、元エルフ女王国の領土だ。竜人帝国側に被害はないなら更地になっても惜しくはないさ」
彼らの第一目的は『巨塔の魔女』の始末だ。
それが達成できるなら他国の領土、人的被害などがどれだけ出ても痛くもかゆくもない。
「『巨塔の魔女』暗殺の際、各家から家宝であるマジックアイテムを提出させるのも忘れるな。我々も出し惜しみなしだ」
「当然だ。後生大事に抱えて失敗し、この星に残されるより少しでも暗殺の可能性を上げる方が生存率も上がるからな」
「先祖が抱えてきた家宝よりも、我々自身の命の方が大切だからな」
家宝が星に残される家々から提出後、人材を抽出し、能力に合わせて『誰がどのマジックアイテムを持つのか』選別。
『巨塔の魔女』暗殺サポートに付かせる予定だ。
問題は本命の『神話級武具の担い手』である。
『神話級武具』で『巨塔の魔女』の首を落とす斬首作戦を計画しているため、これが作戦の肝だ。
その『神話級武具』が使えなければ作戦そのものに意味はない。
極秘会議の場に沈黙が落ちる。
「資料によれば『神話級武具』それ自体が、使い手を選ぶらしい。しかも、その選考基準は不明……」
「『神話級武具』とはいえ、武器が使い手を選ぶとは生意気な」
「だが、魔女暗殺の本命である『神話級武具』が使用できなければ意味はない。まず我々の派閥から極秘裏に身内の者達を集めて『神話級武具』を試させるぞ。皇帝やますたー共にさとられないようにだ。そのためにわざわざ『神話級武具』の守り手達に根回しをして仲間に引き入れたのだからな」
既に星からの脱出が決まっている者達からすれば、『巨塔の魔女』にちょっかいを出そうとする彼らの動きを知れば止めようとするだろう。
わざわざ刺激して脱出前に『巨塔の魔女』が竜人帝国に襲いかかってきても困る。
下手をしたら星からの脱出を妨害される可能性すらあった。
なので、露見すれば、抗議派閥の魔女暗殺は確実に止められるだろう。
それを理解しているため、抗議派閥トップ陣は極秘裏に『神話級武具』の担い手選抜をおこなおうとしているのだ。
「もし我々の身内から担い手が出なかった場合は、息がかかっている兵士達から、それでも見つからなかった場合は、皇帝陛下、ますたー共に露見するのを覚悟して平民共に手を伸ばすしかあるまい」
「我々の身内から出てくれれば話が早いのだが……」
盛大な溜息が場に漏れ出る。
その後、彼らは『神話級武具』の担い手が出ると仮定した上で、魔女暗殺を成功させるため細かい点について話し合いをしたのだった。