作品タイトル不明
4話 抗議派
現在、竜人帝国内部は混乱していた。
混乱の中心にいるのは、宇宙船『アーク』に乗るはずだったが、足切りをされた者達だ。
ちなみに大まかな内部派閥は――。
安泰派。
抗議派。
無知派。
以上の3つに分けられる。
あくまで大雑把に分けるとだ。
安泰派は、宇宙船『アーク』に乗れる者達。
無知派は、何も知らない一般市民や兵士、中層。
抗議派は、ギリギリ足りなかったり、足切りをされた者達だ。
分類するならドラゴは、『抗議派』に分類される。
そんな『抗議派』トップの三名が集まり、とある一室で膝を突き合わせ頭を悩ませていた。
「皇帝陛下にいくら直訴しても、我々の席は却下されてしまう……」
「ますたー達に直接、願っても梨の礫だ」
「このままでは我々は本当にこの星に置き去りにされてしまうぞ。そうなったら憂さ晴らしで『C』にどのような目にあうか……」
想像しただけで集まった三名は再度頭を抱えてしまう。
『C』という人智を越えた災害から逃れるために、『プロジェクト・アーク』でマスター達に協力し、最終的にこの星から脱出することこそが竜人帝国上層部の存在意義。
それゆえに『C』という存在の『苛烈さ』は、繰り返し竜人帝国上層部の者達の頭には刷り込まれ、たたき込まれている。
どう考えても残された者達に明るい未来はない。
そんな未来を避けるため、どうにか『アーク』の席を確保しようと、高額な賄賂提示、泣き落とし、妥協案の要求など、色々試しているが全て無意味に終わっている。
実際、譲歩しようにも『アーク』の座席そのものが物理的にないのだ。
暖簾に腕押しになっても致し方ない。
とはいえこのまま指をくわえて黙っていれば、星に残されるのは確実。
それを避ける方法は……。
「やはり原因となった『巨塔の魔女』を排除するしかあるまい」
『抗議派』トップ達はドラゴ同様の答えに辿り着く。
しかし問題は……。
「『プロジェクト・アーク』実行が早くなってしまった原因である『巨塔の魔女』を排除するのは賛成だが……。一体全体どうやって魔女を排除するつもりだ。ますたー共は全員及び腰だぞ?」
「普段、自分達のレベルの高さを鼻にかけているくせに、『巨塔の魔女』という劣等種の女1人を尻込みするとは情けない!」
当然ながら竜人帝国側マスター達に『巨塔の魔女』を排除して欲しいと訴え済みだ。しかし、彼らの反応は芳しくない。
竜人帝国側マスター達側からすれば、ナズナ級を複数抱えている『巨塔の魔女』にこれ以上関わりたくないというのが本音だからだ。
芳しくないのは当然といえば当然である。
「ならば竜人帝国騎士団を動かすか?」
「動かすことは可能だが……その程度で『巨塔の魔女』が討てると思うか。何より、騎士団を動かせばどう足掻いても皇帝、ますたー共に知られて制止されるぞ」
「とはいえ、騎士団から実力者を引き抜き、少数精鋭で向かわせても、『巨塔の魔女』を討てるとは思えんぞ。いくら竜人帝国内では高レベルな者達とはいえ、所詮ますたー達に比べたら赤子同然だからな」
竜人帝国騎士団を動かそうとすれば、大人数過ぎて、皇帝やマスター達に止められる。
『巨塔の魔女』に余計なちょっかいを出すなと言われるだろう。
かといって、少数の精鋭を抽出して向かわせても、マスターよりかなり下のレベルのため、突撃させる意味がない。
場の雰囲気が手詰まりで悪くなってしまう。
会議の席にいるトップ陣の1人が、まるで親に点数の低いテストの答案を提出するかのように、恐る恐る一つの提案を口にする。
「もうアレを……竜人帝国の国宝を使うしかないのではないか?」
「「ッ!?」」
この提案に他2名が顔を蒼くし、ツバを飛ばす勢いで否定する。
「貴様、正気か!? アレは国宝と名ばかりの災害だぞ! 竜人帝国を滅ぼすつもりか!?」
「第一、アレの適合者など早々いない! だから、持て余している面もあるのだ! 使用したくてもできないのが現実ではないか……」
2人の叱責を受けつつも、提案者は引かずに続ける。
「しかし、このままでは我々にアークの席はない。『C』が彼らの逃亡を知った後、逃げた奴らの責任を自分達が取らされるかもしれないのだぞ。その際、どんな目にあうか……」
「「…………」」
残された自分達が不機嫌になった『C』にどのような目に遭うか想像するだけで寒気を覚える。
すぐに死ねたらまだマシだ。
最悪、正気を保ったままいたぶられ続ける未来すらありえた。
今更ながら自分達に後がないことを自覚してしまう。
畳みかけるように提案者が続ける。
「適合者は必要で、これから見つけだす必要はあるが、動かすことが出来れば確実に『巨塔の魔女』を屠ることが出来る。なにせ 神話級(ミトロジー・クラス) の武具なのだから……ッ! 適合者が見つかりさえすれば、恐らくますたー共すら相手にならんぞ!」
「……それ以外、我々が助かる道はないか」
「是非もなし、か」
他2人も他に選択肢がないことを理解し、渋々ながら納得した。
納得した後は、実務に移る。
「……では、適合者をどうやって見つけ出す? 適合者かどうかの判断は、実際に 神話級(アレ) を引き抜けるかどうかでしか判断できんぞ」
「あまり派手にやって、ますたー達はともかく、皇帝側に知れたら厄介だ。確実に止めにかかってくるからな」
「ならばまずは我々の家の者達から試しましょう。身内の方が情報制限しやすいですからね。もし駄目なら、我々の息のかかった兵士、最悪、民衆達で試すしかないが……」
「民達まで裾野を広げたら確実に皇帝側に感づかれるな……。最悪でも兵士達で止めたいところだ。それまでなら我々で情報封鎖可能なのだが」
代表者達は話し合い実際の段取りを決めていく。
竜人帝国のとある一室で、対『巨塔の魔女』の一手が煉られていくのだった。