軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3話 竜人帝国第1、2皇太子

ドラゴは以前からアポを取っていた竜人帝国皇帝に合うため廊下へと出た。

いくら血縁者とはいえ、何の前触れもなく顔を合わせることなど出来ないからだ。

また血縁者だからと言って、誰もが相手に友好的という訳ではない。

「…………」

皇帝と非公式の謁見を終えたドラゴは、足を引きずるように自室へと戻る。

(現皇帝からすれば、俺の存在など邪魔なだけとはいえ、まさかあそこまで拒絶されるとは……)

ドラゴはどうにか『アーク』の座席を確保するため、現皇帝に土下座する勢いで頼み込んだ。

相手からすればドラゴは表向きこそ、彼の子供扱いだが、実際は歳が離れた弟。

前皇帝の恥かきっ子だ。

しかも母方は高級とはいえ娼婦である。

いくら腹違いの弟とはいえ、面白くない存在なのは確かだろう。

皇帝からすればわざわざ暗殺する労力を割くほどではないが、他上位者を斬り捨て『プロジェクト・アーク』にねじ込みたいと思うほどドラゴを可愛がっていない。

(ある程度、予想はしていたが……。クソ! 魔女め! ヒューマン(劣等種) の分際でどうして俺の邪魔をするんだ! あのライトのようにどうして俺のために役だって死んでくれないんだ!)

『プロジェクト・アーク』の前倒し原因となった『巨塔の魔女』を罵りつつ、ドラゴは内心で次の策を練る。

素直に現状を受け入れ『C』の玩具になるのも、将来を諦めて自殺するほどの度胸もない。

(とりあえず俺だけで現状を打破するのは不可能だ。俺と似た境遇の者達と話し合いの場を設けてどうにか皇帝か、『ますたー』達の意見を変える手を考えなければ)

ドラゴが自室に向かって考えをまとめつつ、歩いていると、ちょうど反対側から顔見知り2名がやってくる。

正直、ドラゴとしては、あまり顔を合わせたい人物ではなかった。

「そこを行くのは我らが弟君ではないか」

「…………」

二人組の1人がドラゴに気づくと、大仰な態度で声をかけてくる。

肩を並べて歩くもう1人は、陽気な態度の男とは違い、難しい顔で黙り込みドラゴへと侮蔑の色を浮かべた瞳を向けていた。

ドラゴはそんな視線を浴びつつも、壁際へと移動し、2人のために道を空け軽く頭を下げる。

「声をかけて頂き誠にありがとうございます、兄上方」

「チッ……」

ドラゴに『兄上』と呼ばれると、黙っていた1人が盛大に舌打ちする。

彼の言葉から分かるとおり、肩を並べて歩いていた二人組は、書類上ドラゴの兄とされる竜人帝国継承権第一、二の皇太子だ。

黙り続けているのが第一皇太子で、陽気に声をかけてきたのが第2だ。

第2皇太子が不機嫌な第一皇太子に落ち着かせるように声をかける。

「兄上、気持ちは理解できますが、ドラゴに対して態度が厳し過ぎますって。一応、書類上は我々の弟なのですから、あまり厳しい態度が過ぎると宮廷雀共にエサを与えることになりますよ」

「チッ、分かっている。お爺さまにも困ったものだ。最後の最後に余計な胤を残すなど……」

第2皇太子は『書類上』を妙に強調して兄を諫めた。

実際は2人とドラゴの関係は兄弟ではなく、叔父と甥だ。

公的の場ならともかく、人目の無いこういった場ではどうしても態度に出てしまう。

ドラゴ自身、2人に疎まれているのは重々承知しているため、下手に逆らわず頭を低くしてやり過ごすことを徹底していた。

それが一番被害が出ないためだ。

第2皇太子が苦笑いを浮かべつつ、同意する。

「確かに皇帝としても実績を持つお爺さまがまさか晩節を汚すとは想像できませんでしたね。ですが兄上、その悩みも後1ヶ月半ほどで解決するじゃないですか」

ドラゴの肩が若干動く。

第2皇太子は理解しつつ、兄に向き直り聞こえよがしに語り出す。

「我々は約1ヶ月半後にはこの星を離れて、宇宙? という場に行く訳ですから。二度とこの地に戻ることも、お爺さまの晩節を汚した者と顔を合わせることももうないのです。この星に残された者達は『C』の生け贄のようなものになると聞くじゃないですか。なら、ここは寛大な心を持つべきだと思いますよ」

ドラゴの足が震える。

『C』の生け贄――というのが比喩や冗談ではなく、本当にそういう扱いになる可能性が高いのだ。

彼は声が震えないよう気を付けつつ兄達に懇願する。

「兄上方、その件に関して是非お話をさせて頂きたい。どうか兄上方からも皇帝陛下に慈悲を与えてくださるようご助力賜りたいのです!」

「……なぜ我々がそんなことをしなければならない。オマエはここで死ね」

「ちょっ、兄上、ストレート過ぎますって(笑)。もう少し婉曲に口にしなければ駄目じゃないですか(笑)」

第1皇太子はドラゴの要求をにべもなく拒絶。

その態度に弟である第2皇太子が心底愉快そうに笑いながら、ツッコミを入れる。

当然2人は既に『アーク』の座席を確保済み。

現皇帝の息子のため、上から数えた方が早い位置についている。

故に彼らは余裕の態度を崩さないのだ。

第2皇太子がへらへら笑いながら指摘する。

「まぁ兄上の発言じゃないけど、ドラゴを『アーク』に乗せるのは無理でしょ。父上の直系である我々がいるし、お爺さまの子とはいえ、わざわざ他の上位者をはね除けるほどの価値なんてないだろうし。ドラゴを無理して乗せるぐらいなら食料になる家畜か、『アーク』移動中の暇潰し兼奴隷として ヒューマン(劣等種) や他種を少しでも乗せた方がマシでしょ」

「……個人的に宇宙空間に ヒューマン(劣等種) を生身で放り出したらどうなるか気になるな。まだその殺し方は試していない」

「確かに。 ヒューマン(劣等種) 奴隷を試し切りに使ったことや、毒物実験の材料にしたことはありますが、宇宙? に放りだした際、どうやって死ぬのかは知りませんね。知的好奇心を刺激されますな!」

第1皇太子、第2皇太子はドラゴを置き去りにして談笑し出す。

実際、『プロジェクト・アーク』には、家畜の他に、 竜人(ドラゴニュート) 種以外の一部5種族を乗せることになっていた。

理由として別の星に移住後、家畜同様に自分達の生活を支えるための奴隷として飼うためだ。

竜人(ドラゴニュート) 種以外の種に汚い、臭い、辛い仕事をさせるためである。

この世界に各種国家が存在するが、移住先の星では作らせるつもりはない。

竜人(ドラゴニュート) 種をトップとして、その下に『 竜人(ドラゴニュート) 種に奉仕することこそが最大の喜び』と調教した他5種を家畜のように飼育するつもりなのだ。

よって繁殖用にある程度数を確保していた。

もちろん、 竜人(ドラゴニュート) 種のように個室などではなく、人権など無視して荷物のように押し込んで運ぶ予定である。

『アーク』に乗ることを希望するドラゴに対して、皇太子達は、文字通り『喋る家畜』以下の存在だから搭乗協力を拒否すると断言したのだ。

2人は馬鹿にしきった、自分達が無事に『C』の支配する星を脱出できると信じ切った態度でドラゴへと別れを告げる。

「というわけで弟君はせいぜい『C』に気を付けてね。楽に死ねるように自決薬を用意しておくのがお勧めだよ。いくら娼婦の母親の血が流れているとはいえ、偉大なる前皇帝、お爺さまの血も流れているんだ。最後は潔く死ぬ方がいいよ」

「……どうせこいつは我々の脱出後、機嫌を損ねた『C』の憂さ晴らしに弄ばれるのがオチだ。末路は決まって居るんだから、労っても無駄だ。死体に『風邪を引くから』と布団をかけるようなものだぞ」

「あはははは、兄君は厳しいね」

2人は最初からドラゴと会話などしていなかったかのように再度、談笑しながら歩き出す。

その場に残されたドラゴは散々見下され、『 ヒューマン(劣等種) 奴隷以下の存在』と馬鹿にされたのがくやしくて血が滴るほど硬く拳を握り、2人の背中を見送ることしかできなかった。

彼は悔しそうに1人佇むことしか出来なかったのである。

しかし、その場でただ悔しがってもいられない。

(このままでは本当に俺が『C』の生け贄にされてしまう。皇帝、兄が駄目なら……いっそますたー達に泣きつくか?)

ドラゴは再度自室へ向かって歩き出しながら、考えを巡らせる。

『プロジェクト・アーク』の実権を握っているのは皇帝達ではない。マスター側だ。

彼らが了承すれば、ドラゴ自身、『アーク』に搭乗することが出来るが……。

(彼らが俺程度の泣き落としで『アーク』搭乗を許可するとは思えん。何より面識も無いからな。あと残る方法は……)

ドラゴは考えを巡らせてある解決方法を思い付く。

(……こうなったら、今回の騒動の原因である『巨塔の魔女』を排除すればいいのではないか?)

これは意外と悪くないアイデアに思えた。

もちろんドラゴ1人ではどうすることも出来ない。

『自分のように追いつめられている者達を集めて、戦力を集めればどうにかなるのではないか?』と思考する。

考えれば考えるほど良いアイデアに思えてきた。

――まるで借金が嵩み一発逆転を狙って圧倒的分の悪い賭けに乗り出そうとする借金持ちのような顔つきでだ。

ドラゴは1人ブツブツと自分が助かりたいがために、『巨塔の魔女暗殺』計画を考え出すのだった。