軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『無限ガチャ』4巻小説発売記念短編 ユメとロリメラのお茶会

「お邪魔するね、2人とも」

「けけけけ、お疲れ様です、ご主人さま」

「にーちゃん、いらっしゃい!」

偶然、時間が空いたので、折角だからユメと話でもしようかと彼女の予定を聞いた。

するとユメとメラがお茶会を開いているとのことだった。

ユメとメラ、珍しい組み合わせに興味を抱いたこともあり、そのお茶会に僕も途中参加になるが行ってもいいかと尋ねると、快く許可が下りる。

普通のお茶会は椅子に座って、テーブルに花々が飾られ、お茶、茶菓子などが置かれて談笑を楽しむ。

今回、ユメ達がおこなっている茶会は少々趣が異なっていた。

2人は向かい合わせに座り、テーブルは花々が飾られ、お茶、茶菓子などが並んでいる。ここまでは普通の茶会と一緒だが……なぜかテーブル、ソファー、足下、背後にも小動物、動物などが多数並んでいるのだ。

「にーちゃん、ユメの隣に座って」

「了解。それにしても、この動物達は全部メラが出したやつだよね?」

「けけけけ、はい、ご主人さまの仰る通り、ユメさまに楽しんでいただけるようにあたしが作り出したもの達です」

テーブルを挟み、正面に座るロリメラが、問いに応える。

なんでもたまにこうして動物をもふもふさせるため、ユメとナズナのお茶会に呼ばれることがあるらしい。

その際は、普段の約2mある背丈も、ユメに威圧感を与えないため、身長を低くしたロリメラで参加しているとか。

(メラとユメなんて珍しい組み合わせかと思ったけど、僕が知らないだけでそうでもないんだな)

2人の説明に僕は内心で頷く。

途中、疑問を抱く。

「ユメとナズナのお茶会にも呼ばれることがあるんだよね? そういうえばナズナはどこにいるの。今日は欠席?」

「けけけけ……あー、ナズナさまはですね……」

「ナズナちゃんはエリー先生に呼び出されて……。今頃たぶんお勉強をしているんじゃないかな?」

「あー……」

2人が言い辛そうに答えた。

ナズナは強さこそ『奈落』最下層一だが、勉強に関しては下から数えた方が早い。

本人が苦手で嫌がるのと、『奈落』最下層に限っていえば、生活に不便はないため放置気味だが、さすがにエリーが見かねたのだろう。

とりあえず微妙になった空気を変えるため、話題を振る。

「で、でもちょっと意外だったよ。こうしてユメとメラがお茶会を開いているなんて。僕のイメージとしてあまり接点がないと思っていたから」

「最初は背が大きいから驚いちゃったけど、こうしてもふもふで、可愛い動物達を紹介してくれるから今では仲良しなんだ。もふもふしたくなったらお願いすれば、時間が合うとこうして色々触らせてくれるの!」

「なるほど、そうだったんだ……。僕としてはてっきり、そういうのはアオユキの配下が担当していると思ったよ」

「そっちもけっこう行くよ。アオユキちゃんのは、大きい子が多くて、ナズナちゃんと遊びに行って一緒にボールで遊んだり、追い駆けっこしたり、背中に乗せてもらったりして遊ぶんだ。そして、もふもふのお腹で寝そべってお昼寝とかするの!」

ユメが両手の拳を力強く握りながら力説してきた。

どうやらアオユキの配下は、体を動かして一緒に遊ぶことが多く、メラの場合は落ち着いてお茶を飲みながら愛でるらしい。

ある意味で棲み分けが出来ているようだ。

ロリメラが捕捉する。

「けけけけ! アオユキさまの配下にもフェンリルなどの大型以外もいますが、いちいちこの場に連れてくるのも手間ですから。あたしなら、この場ですぐに分離させ、種類や大きさも好みで変えることができますからね」

確かにアオユキ配下をいちいち部屋に呼び出すのは手間だ。

メラなら彼女がその場に居れば、すぐに体を変化させて作り出すことも出来るため、理に適っているといえた。

ユメがソファーの上で待機する一角ウサギを抱き上げて、僕へと手渡してくる。

「メラさんのお陰で色々なモフモフが触れるんだ。にーちゃん、このうさぎさんはモフモフでいいよ。ユメのお勧め!」

「どれどれ……本当に手触りがいいな」

ユメが差し出してきた一角ウサギを抱き上げ、撫でた。

彼女のお薦めだけあり、手触りが非常によい。

さらにユメが自慢するように彼女が気に入っているお勧めを紹介する。

「あとこのフクロウさんもモフモフ加減がウサギさんとは違っていいの! それと足下にいる猫さんも!」

「本当に色々な種類の動物がいるね」

ユメの背もたれにトサカフクロウが行儀良く待機し、足下には胴長猫、他にも尻尾リス、毛長ウルフなど多種多様な動物がいる。

メラのキメラ分身体ということもあり、普通の動物より圧倒的に賢く行儀よく待ち続け、望む動作、態度、愛嬌を振る舞う。

ユメとナズナが気に入るのも分かるというものだ。

僕がユメから『いかにモフモフの違いがあるか』を力説されていると――。

「あ、あたいもお茶会に参加するぜ!」

ノックも無く突然、扉を開きナズナが雪崩れ込んでくる。

不作法に妖精メイドが眉根を顰めるが、僕達の前で声を荒げる訳にもいかず堪え、刺々しい雰囲気も一瞬で引っ込めた。

僕は妖精メイド達の代わりに叱責する。

「ナズナ、ノックも無く部屋に入っちゃ駄目だろ。ユメと仲良くしてくれるのは嬉しいけど、親しき仲にも礼儀ありだよ」

「ご、ごめんなさい、ご主人様……」

僕が茶会に出席していることに驚きつつ、叱責され、彼女が肩を落とす。

ナズナを落ち込んだままにしているのは悪いので、励ますため声をかけようとするが――その間に疑問をぶつける。

「ところで……エリーに勉強を教わっていたって聞いていたけど、もう終わったの?」

「――モ、モチロンダゼ」

ぎこちない態度でナズナが返答した。

その態度で僕を含めユメ、ロリメラ、妖精メイド達も察した。

僕達の気付きを証明するように、外から声が響いてくる。

『ナズナさん! どこに行ったのですの! 勉強が嫌だからといってやらなければいつまで経っても終わりませんわよ!』

扉の外、廊下から、エリーの明らかに怒った声が聞こえてきた。

「ナズナ……」

「ナズナちゃん……」

「けけけけ……」

「ご、ご主人様! 妹様! メラ! あたいだって頑張ったんだ! だ、だから少しぐらい休憩……そう! 休憩したって罰はあたらないだろ!」

ナズナがアワアワした態度で言い訳を口にする。

(まぁ勉強の息抜きをしたい気持ちも分かるけど……)

ちゃんと許可を取り、顔を出すなら問題はないが、エリーの様子だと100%逃げて来たのだろう。

部屋の扉がノックされる。

ナズナがびくりと肩を震わせた。

妖精メイドがノック無しで入ってきたナズナへの仕返しのごとく、彼女が止める暇もなく扉を開く。

当然、扉の先にはエリーが立っていた。

「ナーズーナーさーん!」

「ひぇ!」

「『ひぇ!』じゃありません! 出した課題もせず、遊ぶなんて許しませんわよ!」

「あんな大量の課題、すぐに出来るわけないだろ!」

「今まで教えたことをちゃんとまじめにやっていれば問題ないレベルですわ! ライト 神様(しんさま) 、ユメ様、お騒がせしてしまい申し訳ありませんわ。では戻りますわよ!」

「ご、ご主人様! 妹様! た、助けてー!」

ナズナはエリーに引きずられながら部屋を退出する。

僕達に助けを求めるが、ここで手を差し出しては彼女のためにならないので、黙って笑顔で見送るしかなかった。

ナズナが引きずられて退出すると、静かに扉が閉まる。

「……けけけけ! それではあらためてお茶会を再開しましょうか」

暫しの後、メラが場の空気を変えるため、精一杯の明るい声で提案した。

僕とユメはその提案に苦笑しつつも、同意するのだった。