軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41話 P・Aの発動

竜人帝国のとある一室にマスター達が集まっていた。

部屋の空気は深夜の墓地より暗く、重かった。

理由は……自称、『女神様』に選ばれた勇者達が倒されたからだ。

別に竜人帝国側マスターは、勇者達に肩入れをしていた訳ではない。

問題は、勇者達をあっさりと倒した『巨塔の魔女』側の戦力があまりにも強大なので顔色を悪くしているのである。

竜人帝国マスターのリーダーを務める見た目王子様風のヒロが、気まずそうに切り出す。

「まさかあの勇者達がここまであっさりと倒されるとはね……」

「小生も驚きですよ……。他勇者はともかく、聖剣ゼットを持つ『聖剣の勇者』は魔女を倒すかもしくはせめて手傷を負わせると思ったのですがね。まさか一方的に倒されるだけとは……」

竜人帝国マスター達は直接、『巨塔の魔女』戦力vs勇者達の戦いをじっくりと観戦していた訳ではない。

細目で胡散臭い笑みを特徴とし、情報収集を得意としているヒソミが、彼らに気づかれないギリギリの距離から準備した分身体を使って気配を探ったり、戦闘跡を訪れてどのような戦いがあったか予想をつけた程度だ。

とはいえ、戦闘跡修復も完璧とはいえず、彼らほどの実力があればある程度何があったか予想がつく。

ナズナと戦闘した際に片目片足と腕を失い、ヒソミの技術によって義手足をつけた美少年であるセスタが、慌てた……どこか懇願するような調子で尋ねる。

「で、でもさ! 一方的に勇者達が負けたっていっても、相手は高々レベル7000で、戦闘経験もほとんどない素人達でしょ! そりゃあの ナズナ(化け物) を飼っている『巨塔の魔女』に勇者達が負けてもしかたないよね!」

「クソガキに賛同するのは業腹だが、所詮はレベルが高いだけの素人集団。いくら伝説の武器を手にしてもあの ナズナ(化け物) に勝てるなら苦労しねぇわなァッ」

セスタの台詞に、元魔人国マスターリーダーでドレッドヘアーのゴウが賛同の声をあげた。

彼は2人掛けのソファーに足を広げて1人で座りながら、ナズナの姿を思い出し拳を固く握りしめる。

セスタも無言でゴウの台詞に何度も頷き同意した。

そんな彼らを前に2人がけソファーに並んで座るヒロ、ヒソミが一度顔を合わせて、陰鬱な表情で溜息を漏らした。

ヒソミが渋い顔で切り出す。

「お二人の気持ちは理解できますが……最悪なのは今回の対勇者戦で、調べた限りあの ナズナ(化け物) に勝るとも劣らない人物が複数存在するのが判明したことですよ」

『!?』

この報告に情報をすでに知っているヒロ、ヒソミ以外が驚愕の表情を作る。

ヒソミ曰く、今回の件について遠距離からの監視や戦闘跡の調査をした。

過去、ゴウとセスタが、ナズナと戦闘した際の戦闘跡と比較した結果、最低でも『巨塔の魔女』本人と人種村近くで戦った者のうち一名は、ナズナ級という結果が出た。

つまりあのレベルが、最低でも2人はいるということだ。

壁に寄りかかり話を聞いていた禿げ頭で 鮫野郎(カマボコ) と呼ばれているルカンが、冷や汗を流しつつ、片手で口元を押さえ考え込む。

「まさかゴウ君、セスタ君を退けた怪物が最低でも2名いるとは……。より最悪を想定するなら、それ以上に数がいて、さらに上の実力者がいてもおかしくはありませんね」

「る、ルカンさん! 何を言い出すんだよ! あんな ナズナ(化け物) が複数いるだけでも頭おかしいのに! さらにその上って! 冗談でも笑えないでしょ!」

セスタが1人掛けソファーから立ち上がり、不安を払うように強い語気で叫ぶようにまくしたてる。

そんな彼を上座の1人掛けソファーに座りながら、派手な装飾を身に纏っているカイザーが冷たい視線を向けつつ独り言のように漏らす。

「本当に笑えん冗談だな。しかし 鮫野郎(カマボコ) の言、最も。楽観視してあぐらをかくほど愚かなことはないか……」

「…………」

「ちょ!? か、カイザーさんまで何を言っているのさ!」

カイザーの背後に立つ 黒(ヘイ) も無言で同意する。

そんな彼にセスタが食いつく。

セスタ的にはナズナと同等クラスの実力者が複数人数いるだけでも悪夢なのに、それ以上の存在など想像もしたくもない災害だと言外に主張してしまう。

興奮するセスタを落ち着かせ寄るようにヒソミが、両手を広げて上下させる。

「落ち着いてくださいよ、セスタ殿。どれだけの怪物がいても『C』以上はありえないんですから。『巨塔の魔女』に勇者を嗾けた以上、魔女が『C』という線もありませんからね」

「ヒソミさん、フォローしたい気持ちはありがたいんですけど……。正直、何の救いにもなっていませんよ」

セスタがヒソミの台詞にどかりとソファーに座り直し、ジト目を向けた。

竜人側マスター達からすれば『巨塔の魔女』、『C』という自分達より強大な力を持つ、2つの敵対存在がいると判明しただけだ。

状況が悪いことに代わりはない。

「だからこその『プロジェクト・A』なんじゃないか!」

悪くなりそうな雰囲気を払拭するため、リーダー格のヒロが爽やかな明るい声で告げる。

その場にいる全員の視線が彼へと向けられた。

ヒロは爽やかな空気を発しながら続ける。

「逆に言えば、今回の勇者の一件で『巨塔の魔女』側の危険性がより一層判明したわけだ。また勇者の誕生から『C』が一部権限を使用したのは確実。逆説的に『巨塔の魔女』というイレギュラー存在のせいで『C』が復活しかかっているということだね」

ここまでの状況説明を聞かされて、他マスター達が苦い顔をしたり、無表情、苛立った表情、苦笑いを浮かべる者もいた。

ヒロが続ける。

「前も言ったけど『C』が現れる兆候が少しでも出たら、『プロジェクト・A』を動かすしかない。正直に言えばまだ時間が欲しかったが、もうそうも言っていられない。ボクはリーダーとして、今こそ『アレ』を動かすべきだと思う! 『C』でもボク達の手に余るのに『巨塔の魔女』なんてイレギュラー存在が馬鹿みたいに戦力を抱えているのも判明した。故にこれ以上、『巨塔の魔女』、『C』とかかわっていたら命がいくつあっても足りないからね」

「小生は賛成です」

ヒロの提案に間をおかずヒソミが賛成の声をあげた。

「余もだ。完成にはまだまだだが、これ以上関わったら本気で厄介でしかないわ!」

「……カイザーが賛成なら、コレも賛成だ」

続いてカイザー、 黒(ヘイ) が賛成の声をあげる。

黒(ヘイ) の返事に一瞬、カイザーが不快感を表したが、口に出しても不毛なため飲み込む。

「ァァァ! あの ナズナ(化け物) にリベンジ決められないのは癪だが、これ以上、面倒事に巻き込まれたくはないからな」

「ゴウじゃないけど……僕様ちゃんもこれ以上、面倒事に巻き込まれたくないから賛成……」

ゴウ、セスタも賛成にまわり、皆の視線が壁によりかかるルカンへと向けられる。

「当然、私も賛成です。反対する意味もありませんから」

「なら、全員の承認を得られたと言うことで! まだ完成はしていないけど、『プロジェクト・A』――『プロジェクト・アーク』を起動しよう!」

ヒロがマスター達を見回し断言する。

「さあ、今こそ! 皆、この星から脱出しよう……ッ!」