軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40話 勇者達から得られた情報

『奈落』最下層、執務室。

僕は席に座りながら、正面に立つエリーから提出された書類に目を通す。

そこには捕らえた勇者達から得た情報が記されていた。

僕は眉根を寄せながら、書類に記されている情報に一通り目を通し終える。

「エリー……ここに記されている記述に間違いはないのかい?」

「はい、わたくしが直々に彼らの頭から情報を引っこ抜きましたので。間違いがないよう何度も繰り返し、精査いたしましたわ」

「なるほど……だとしたらこの情報確度は非常に高い訳だね」

僕は机に書類を戻しつつ、溜息を漏らしながら背もたれに体を預ける。

『聖剣の勇者』、『聖槍の勇者』、『聖印の勇者』、『聖鎧の勇者』……それぞれ若干の違いがあれど、基本的に夢の中で女神と出会い、『奈落』最下層にいる『巨塔の魔女』を殺害しろと命令を受ける。

そして目を覚ますと、伝説の武器があり、レベル7000になっていた。

4人が4人とも同じなのだ。

偶然ではなく、『女神』もしくは『女神』を自称する『何か』の意思が介入しているのは間違いないのだろう。

「地上にいる者達の誰か……『ますたー』などが勇者に選んだ人種の夢の中に入り込み女神を演じて、相手のレベルを上げて、伝説の武器まで与えた。……とはさすがに無理があるよね」

「ライト 神様(しんさま) が本気でお力を行使すれば、夢の中に介入し、相手のレベルを上げて、伝説の武器をお与えになることは時間さえあれば可能かと思いますが……。さすがに地上にいる『ますたー』達が同じようなことが出来るとは、難しいかと。なにより、ライト 神様(しんさま) のお力を以てしても敗れた者達の武器をわたくし達に気づかれず消失させることなど不可能ですわ」

エリーの言葉通り、勇者達の持っていた伝説の武器は、一定の時間が経過後にまるで最初からなかったように消失してしまった。

当然、勇者達を倒し、拘束した後、武器も厳重に保管した。

にもかかわらず、一定の時間が経過後に消えてしまったのだ。

これは管理の問題でなく、情報を整理すると、勇者側の心が折れて、逆転する目がなく、完全に敗北を受け入れた直後に消失しているようだ。

つまり、女神から与えられた伝説の武器は、勇者が負けると自動的に消滅するらしい。

勇者達に力を与えたものだが、そんな超常的なマネが出来る存在など、それこそ『神』の力そのものだ。

「僕達でさえ認識できない超常の力を持つ存在……『本物の女神』かそれに類する者に目を付けられているというある意味証拠になるのかな……」

武器の消失は『この世界を作り出した女神が僕達を敵視している』という証明と言えなくもないが……。

正直、実感が湧かない。

むしろ困惑の方が強かった。

僕は顎に手を当て、独り言のように漏らす。

「仮にその超常の存在が本物の女神だとして……どうして僕達を敵視するんだ?」

僕達の目的は……元『種族の集い』メンバー、故郷を滅ぼした存在への復讐、僕が殺されそうになった理由・真実を知りたい、だ。

僕の目的は大掛かりなものだと自分自身、よく理解している。

国家を相手取り、時に落とし、時に条約を結び協力してきた。

しかし、別の角度から見れば、それは種の中でのおこないに過ぎない。

女神に敵視され、勇者なんて刺客を送られているということを説明するには、別の論理が必要になる。

「まさかとは思うけど……僕の復讐や真実を知りたいって要求の中に、女神にとって不味い何かがあるとでもいうのか?」

「……それは分かりませんが、神であれば地上の人々とは感覚が違うはずですわ。たとえばライト 神様(しんさま) の目的がなければ、地上でどれだけ血が流れ、大戦争が起きて消滅したとしても、わたくし達に何の痛痒もありませんわ。そう考えればあまり地上の細かい争いごとに興味を抱くとは思えないですの」

エリーの指摘通り、僕の目的がなければ、いくら地上で権力闘争、戦争などでどれだけの種が死亡しても、『奈落』最下層に何の影響もなく、かかわりあいたいとも、介入したいとも思わない。

僕達でもこれなのだ。

故に女神が、勇者を使って介入してきている理由が本気で分からなかった。

「……これ以上、考えても答えはでないよね」

僕は気持ちを切り替えて実務に戻る。

「とりあえず、勇者達から必要な情報は抜き出したんだよね?」

「はいですの。何度も頭の中を弄くって、隅から隅まで確認し、必要な情報は抜き出し終えていますわ」

結果、勇者達は文字通り『地獄のような苦しみ』を味わったが、自業自得だ。

正直まったく同情の余地はない。

「ならばこれ以上、彼らを『奈落』最下層においておく意味もないから、同じ人種や他種を殺したその罪を償わせておいて」

「畏まりましたわ。その命で罪を償えるというライト 神様(しんさま) の慈悲にきっと彼らも感涙し、感動、感謝を繰り返すはずですわ」

エリーは心底笑顔で断言する。

僕達は次の話題に移る。

「保護しているミヤちゃん達に、ドマスさんと警備員達が無事なのは伝え済みだったよね?」

「はい、お伝え済みですわ」

「なら勇者達を全員倒したことも教えてあげて。いくら『巨塔街』が安全でも、命を狙われ続けているのは気持ち良いものじゃないだろうから。ただ2人がシックス公国に戻るかどうかは、もう少し状況が落ち着いてからと伝え忘れないように。自分達を助けてくれたドマスさん、警備員達に直接会って感謝を伝えたいだろうけど、まだ女神教総本山の扱いが決まっていないから……」

「確かに……ある意味、勇者以上に女神教総本山の扱いは面倒ですものね……」

現在、女神教総本山は勇者達が全員倒されたのをまだ知らない。

未だに帰還してこない勇者達に戸惑っているようだが、情報が錯綜しているため混乱しているようだ。

単純に潰すだけなら難しくないのだが……。

別に僕達は勇者を嗾けてきた超常的存在と敵対したい訳ではない。

ありえないと思うが……女神教総本山を潰して、本物の女神にさらに目を付けられる――なんて可能性がゼロではなかった。

勇者を作り出せる超常的存在が、本物の女神である可能性は当然ある。

下手に女神教総本山を叩き潰して、完全に敵対なんて状態にはなりたくないのだ。

故に女神教総本山の扱いは非常に面倒なものとなってしまう。

エリーが報告を続ける。

「エリオさんの村で壊された家屋の修復も済んでおりますわ。怪我をした住人達の治療もスズさんの魔弾で回復済み。ですが、近郊での戦闘跡の修復は完全ではありませんの」

アオユキ&スズペアは、対『聖鎧の勇者』で草原にかなり派手な戦闘跡を刻んだ。

僕&ナズナ、メイ&アイスヒート、エリー&メラ組も彼女達のことは言えない。

勇者達は戦闘慣れしていないとはいえ、高レベル&伝説の武器持ちだったため、どうしても戦闘が激しくなる。

結果、現地で派手な戦闘跡が出来てしまう。

時間をかければ僕達なら、その痕跡も最初からなかったかのように消すことができるが……。

さすがにそんな暇はない。

時間をかければ、さすがに大勢の人目についてしまう。

目撃者をいちいち始末する訳にもいかず、見られながら行動した場合、大量の情報を渡すことになる。

そんな本末転倒なマネをしては意味がない。

「それは仕方ないね。ある程度は割り切るしかないよ」

「仰る通りですわ。とはいえ、最低限の修復はしておきましたので、一般人程度なら見られても問題ないかと」

エリーの報告に僕は頷く。

これ以上は求めても意味はない。

僕達は対勇者戦闘後、いくつかの疑問――特に『超常的存在』という大きな疑問を抱えてしまったが、概ね問題を解決することが出来たのだった。