軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34話 vsアンレン2

「貴方達は何者ですか? なぜ 此方(こちら) を襲うのですか?」

「…………」

『聖印の勇者』は上空から、『巨塔の魔女』エリーと同じ『SSR 認識阻害フードマント』を被った僕と、同じくフードを被り隣にいるナズナに対して誰何してきた。

しかし僕は返答せず、彼を倒すため淡々とカードを解放する。

「『SSR ソーラーレイ』、 解放(リリース) 」

まずは上空に浮遊している『聖印の勇者』を地上へ落とすため、『SSR ソーラーレイ』を使用。

下手にこのまま飛行させて、人種王国へ向かわれたら戦いが面倒になるからだ。

『SSR ソーラーレイ』は僕の狙い通り、『聖印の勇者』へと真っ直ぐ光速で進むが――彼の体に当たる寸前でぐにゃりと曲がり、『聖印の勇者』を回避すると青い空へと消える。

「今、何かしましたかね?」

「…………」

『聖印の勇者』は攻撃が勝手に避けたのを前に驚きもせず、勝ち誇った顔で台詞を吐く。

僕は間を置かずもう2枚のカードを解放する。

「『SSSR 超重力』、『SSSR 重酸雨(ヘビーアシッドレイン) 』、 解放(リリース) 」

アオユキにも渡した『SSSR 超重力』――その場の重力を100~999倍にすることが出来る。

『SSSR 重酸雨(ヘビーアシッドレイン) 』――金属すら溶かす酸の雨を降らせる。

超重力の枷、金属すら溶解させる逃げ場のない雨を降らせるが……。

「おやおや、自然環境を破壊するようなマネは感心しませんよ」

『聖印の勇者』は重力や雨にも一切干渉されず、極々普通に上空に立ち続けている。

(『SSSR 超重力』、『SSSR 重酸雨(ヘビーアシッドレイン) 』でも干渉が出来ないとは……。『聖印』の力は物語通り本物だな)

僕は効果がないのを実感し、諦めて『SSSR 超重力』、『SSSR 重酸雨(ヘビーアシッドレイン) 』どちらの効果も打ち消す。

後には陥没し、焼けただれた地面だけが残った。

この世界で最も古い『魔王と勇者』の物語に『聖印の勇者』は登場する。

『聖印の勇者』は、魔王が他勇者達に呪いをかけようとしたが、彼が手にした タリスマン(聖印) で祈ると、その呪いを消し去ってしまう。

このことから、『聖印の勇者』はあらゆる厄災を退ける力を持つとされていた。

(予想通り、こちらの攻撃が一切届かないか……。全く面倒な能力だな)

攻撃魔術が通じなかったが、予想していたためそこまでショックは受けない。

むしろ『面倒』という気持ちの方が強かった。

「どうやら 此方(こちら) に一切の攻撃が通じないことに驚愕しているようですね。貴方達の驚きが手に取るように分かりますよ」

一方で『聖印の勇者』は自身に一切の攻撃が効かず、呆然としていると解釈したようで上から目線の言葉を投げかけてきた。

『聖印の勇者』は調子に乗って語り出す。

「最古の物語では魔王の呪いすら退けたこの タリスマン(聖印) がある限り、『聖印の勇者』である 此方(こちら) を傷つけるのは不可能なのですよ!」

『聖印の勇者』は得意気な顔で見せびらかすように タリスマン(聖印) を誇示してくる。

一切の攻撃が効かないと過信している『聖印の勇者』は、余裕の態度で襲撃してきた僕達が何者かのんきに推察を楽しむ。

「どうやって動きを察したかは分かりませんが……人種王国へ向かう 此方(こちら) の襲撃、妨害、そしてお二人の恰好から、『巨塔の魔女』の手下のようですね」

「……ッ!」

僕と一緒に行動しているナズナが、『SSR 認識阻害フードマント』の下で一瞬、殺気を膨れあがらせる。

彼女達の主である僕を、『「巨塔の魔女」の手下』と口にした『聖印の勇者』の台詞が許せなかったらしい。

だが、ナズナは作戦を思い出し、すぐに殺気を押さえ込む。

ここでナズナの殺気に怯えて、『聖印の勇者』に逃げられたら面倒だ。

すぐに殺気を抑えたのと、戦闘慣れしていないせいで『聖印の勇者』はナズナの殺気に気付かず、得意気にぺらぺらと語り続ける。

「沈黙は肯定と取りますよ。どうやら 此方(こちら) の指摘が正解だったようですね。ふふふ……魔女の介入があるということはどうやら 此方(こちら) は当たりを引いたようですね。まさか人種王国に邪教の聖女、神官がいるとは!」

どうやら彼は僕達が襲撃したことで『自分の妨害をするということは、人種王国にミヤとクオーネがいる』と勘違いしているようだ。

『聖印の勇者』は嗜虐的な表情で告げる。

「やはり我々勇者――いや『聖印の勇者』こそ女神に最も愛された勇者ですね! 憎きリリスの元に邪教の聖女、神官がいるなら、それを理由に新女王を殺害することも可能! 過去、あの馬鹿女王が『巨塔の魔女』に尻尾を振って『 人種(ヒューマン) 絶対独立主義』を受け入れ宣言したから、上手くいっていた 此方(こちら) の奴隷商売を廃業しなければならなくなったのですよ! 此方(こちら) はただまっとうに学のない人種を騙して、時には他種と協力して奴隷狩りなどをして真っ当に商品を手に入れて売り払っていただけなのに! リリス女王の決断のせいで 此方(こちら) が散々苦しい思いをさせられたのです。邪教の聖女、神官と一緒にリリス女王には 此方(こちら) が味わった苦しみの万倍の与えてやりますよ! 嬲って嬲って嬲り尽くしてやりましょう!」

『聖印の勇者』は気分良さげに叫んだ後、空中から地上へと舞い降りる。

「貴方達は魔女から、人種王国へ向かう 此方(こちら) の妨害、または足止めを命じられているのでしょう? なら頑張って自分を引き留めて見て下さい。まぁ タリスマン(聖印) の力で 此方(こちら) には貴方達程度の攻撃では傷つけるのは不可能なのですがね」

『聖印の勇者』は一切警戒せず、醜い歪んだ笑みを浮かべたまま、散歩のような気楽さで歩き近付いてくる。

「あの馬鹿女王、邪教聖女と神官への土産に貴方達のもぎ取った首を持って行ってあげましょうか。さぁせいぜい頑張って抗ってくださいね?」

「……いや、頑張って抗うのはオマエの方だよ」

「!?」

ずっと沈黙を保っていた僕が、初めて口を開く。

返答されるとは思っていなかったらしい『聖印の勇者』が、驚きで足を止めてしまう。

「……驚きましたね。ずっと黙っていたのでお喋りが苦手か、口が利けないかと思っていたのですが」

「下手に口を利くとオマエに変な警戒心を抱かれて逃げられる可能性があったからね。だからずっと黙っていたんだよ。――もう必要ないけど」

僕は用意した『無限ガチャ』カードを取り出す。

『聖印の勇者』が危機感を覚えて、僕から距離を取ろうとするが――もう遅い。

「『UR 時の牢獄』、 解放(リリース) !」

『UR 時の牢獄』を解放すると、青空、草原、光り輝く太陽など長閑な風景が黒い世界に切り替わる。

僕とナズナ、『聖印の勇者』は一瞬で別の世界に隔離されたのだった。