作品タイトル不明
31話 vsモザ3
「な、なんだオマエ達は!? いつからそこにいたんだよ!」
「にゃ~」
『聖鎧の勇者』モザの問いかけに、アオユキが代表して返答する。
猫語で返答されたため、突然現れた不審者達を前にしたモザは一瞬緊張感を失いそうになった。
彼は緩みそうになった緊張感を改めて引き締め問い質す。
「なんなんだよ、その返事は、女神様に選ばれた俺を馬鹿にしているのか? いったいオマエ達は何者なんだ。どうして空を浮いている。マジックアイテムの力か?」
「にゃ!」
「!?」
モザの問いかけにアオユキは『問答無用』とばかりに『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を投擲する。
スズも彼女に合わせて、ロックを向けると引き金を絞った。
突然の攻撃にモザは、慌てて回避運動をとる。
「ほ、本当になんなんだよ! オマエ達は!?」
モザは困惑しつつも、『 風鎧(ウィンドアーマー) 』の力で空中を移動し首輪と魔弾を回避するが、どちらにも自動追尾機能があるため、彼の背後から高速で迫ってきていた。
「クソが! 舐めるな!」
モザは腕を一閃。
無詠唱で風の攻撃魔術を放ち、魔弾を相殺し首輪を弾く。
さらにアオユキ、スズへと向けて今度はモザが攻撃をしかける。
「何者か分からないが、女神様に選ばれた『聖鎧の勇者』に刃を向けたんだ! その罪、命を以て償え!」
モザは両腕を振るって、無詠唱で攻撃魔術を放つ――が、スズが魔弾を放ちあっさりと相殺、撃ち落としてしまう。
「にゃ~」
一方、アオユキはモザの攻撃があっさりと迎撃されたのを馬鹿にしたような態度と声音で鳴く。
その『にゃ~』という声が、モザの逆鱗に触れる。
「俺を見下すなぁあぁぁぁあっぁぁッ!」
彼は両腕を同時に突き出すと、アオユキ、スズへ向けて強烈な突風を放つ。
その突風の威力は、村の建物の屋根を一部吹き飛ばすほどだった。
無限ガチャカード『SR 飛行』で空を飛ぶ2人はダメージこそないが、木の葉のように吹き飛ばされてしまう。
「にゃー」
「……ッ!?」
スズはスカートが捲れそうになるのを恥ずかしがりフードの下で顔を赤くして、空いている片手で慌てて押さえる。アオユキはのんびりとした口調で鳴いた。
モザはただ2人を吹き飛ばした訳ではない。
彼はさらに『聖鎧の勇者』らしい攻撃をしかける。
「そのまま何も出来ず死ね!」
モザは風をコントロールし、体勢を立て直させないよう上下左右に2人をシェイクする。
アオユキ、スズはまるで洗濯機の中に放り込まれたように不規則に動く。
『ぐるぐるト高速デ上下左右関係ナク掻キ回サレルトカ! ヤ、ヤバイ、相方、おいら、吐キソウ!』
「にゃ~♪」
今まで一度も経験したことがない空中で激しくシェイクされたせいで、無機物であるはずのロックが苦しそうに声をあげた。
彼がいったい何を吐き出すかは分からないが……。
逆にアオユキはまるで遊園地の乗り物を堪能しているかのように楽しげな声をあげる。
ロックの相方であるスズは逆に上下左右関係なく掻き回されるも、スカートを片手で押さえ、片方の腕でロックを操作し、正確にモザを狙い発砲!
魔弾は風の流までしっかりと計算されて、モザを狙うが……『聖鎧の勇者』で作り出した分厚い風の壁によって防がれてしまう。
「ぎゃははははは! 無駄無駄! 『聖鎧』をまとう俺には剣も、槍も、矢も、魔術だって届かないんだよ!」
モザは改めて自分に攻撃が届かないことを再確認したため、心底愉快そうな笑い声をあげる。
「何者か知らないが所詮、地上を移動することしかできないザコ劣等種が! 空中を自由自在に飛び回り、どんな攻撃もきかない俺の敵じゃないんだよ! 俺こそ最強の勇者だ!」
彼は完全に自身の勝利を確信した声でアオユキ、スズを見下す。
「俺との実力差は理解しただろう? 俺様がその気になればこうやって身動きを縛り、攻撃魔術を加えてもいいし、このまま地面に叩きつけて殺すことも出来るんだぞ。死にたくなかったら今すぐオマエ達が何者で、どうして俺を襲ったのか素直に吐けば許してやってもいいんだぞ。さらに特別に仮面とフードを外して俺の好みだったら、この『聖鎧の勇者』モザの女にしてやってもいいぞ? どうだ勇者の女になれて嬉しいだろ? 特にそっちの変わった弓を持つ女は俺好みの良い体をしているからな!」
「――調子に乗るなよゲスが」
気分良く2人を見下し、命乞い&情報を吐き出させようとしたモザだったが、ずっと可愛らしい猫語で話していたアオユキが、モザの要求に死神のような冷たい声を漏らす。
アオユキはいつの間にか無限ガチャカードを取り出し、 解放(リリース) する。
「――『SSSR 超重力』、 解放(リリース) 」
「!?」
アオユキがカードを解放すると、彼女自身だけではなく、スズ、モザも一斉に地面へと落下してしまう。
落下した場所が陥没してしまうほど強く地面に激突。
『SSSR 超重力』――その場の重力を100~999倍にすることが出来る。
正直、レア度はそこそこ高いが、非常に使い勝手……いや、自爆にしか使えない本来なら即破棄レベルのカードだ。
今回、アオユキの相手が、『聖鎧の勇者』ということで、対策としてこのカードを念のために用意していた。
もし自分が不利だと感じて、逃げられそうになった場合、足止めに使おうと準備していたのだ。
しかしモザの攻撃で上下左右にシェイクされて楽しん――身動きが取りにくかった。
その制約を外し敵の動きを鈍らせるために手っ取り早く、アオユキはカードを使用したのだ。
当然、使用するに当たって、シェイクされつつも上手くモザを誘導し、村から距離を取らせていた。
お陰で『SSSR 超重力』を使用しても、村に被害はない。
……村から離れた平原は酷い有様になってしまったが。
「……ッ」
「ぐがぁ……な、なにがおきているんだよ……」
『SSSR 超重力』を解放したことで、限定された空間だけ重力が100倍になる。
結果、『 風鎧(ウィンドアーマー) 』の力でも上空を飛行し続けることが出来ず、全員揃って地面に落下してしまった。
『SSSR 超重力』は一時的ではなく、継続し重力をかけ続けるため、地面に落下したスズとモザも地面に激突したのだが、上から巨人に踏まれているような圧迫感に苦しげな声を漏らす。
スズ、モザ共に、体を起こすことが出来ず、地面に両腕を突きなんとか上体を起こそうとしていた。
そんな中、再びのんびりとした猫語が響く。
「にゃ~」
レベル7000~8000級のスズ、モザが超重力に苦しんでいる中、アオユキだけはまるで影響を受けていないかのように変わらず立ち、猫語で鳴いていた。
アオユキは猫デザインの仮面越しのためモザには分からなかったが、まるで猫が弱った獲物を前にしたような視線を彼に向けていたのだった。