軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30話 vsモザ2

「さぁ愚かな背信者達に、聖なる教育を『聖鎧の勇者』である俺がしてあげよう」

「くッ!」

ことここにいたっては戦いは避けられない。

何もしなければ、一方的に嬲られ殺されるだけだ。

エリオは村の守備隊長として、すぐさま指示を叫ぶ。

「非戦闘員は家に篭もって鍵をかけろ! 子供達を絶対に外へ出すな! 他の者達は弓を持て!」

このエリオの指示にゴロゴロと地面を転がっていた村人達はすぐさま跳ね起きて、自宅へと逃げ出す。

他同じように地面に転がっていた若者達も訓練所に置いている弓を持ち出す。

訓練中、ゴブリンや狼などが姿を現した場合、すぐに対応できるように弓や剣、槍などを側に置いているのだ。

エリオもすぐさま木剣から、愛剣へと持ち替え空を睨む。

「弓持ちはすぐに射ようとするな! 皆とタイミングを合わせて射るんだぞ!」

1人、2人が矢を撃っても当たる筈がない。

『数撃ちゃ当たる』ではないが、彼らの腕では複数人数で撃って点ではなく面として攻撃しなければ、空に浮かぶモザに矢を当てるのは難しいというエリオの判断である。

『聖鎧の勇者』モザからすれば滑稽な判断でしかないが。

モザはあえて高速で動くことも、回避運動も取らない。

ただ足掻く蟲を楽しく見下ろすようにニヤニヤと笑みを浮かべ続けていた。

エリオが剣を指揮棒代わりに振って合図を送る。

「射て!」

彼の合図と共に射手が一斉に矢を放つ。

エリオの狙い通り、矢がタイミングを合わせて一斉に射られたため点ではなく、面としてモザへと向かう。

お陰で1、2本が彼のところまで届くが――。

「!?」

「嘘だろ!? 矢が届いた筈なのに!」

「どうして途中で弾かれたんだよ! あいつ何もしていないだろうが!」

矢がモザを目掛けて放たれ、数本が彼の所まで届いたが、まるで見えない壁があるかのように突如、弾かれてしまう。

その際、モザは指一本すら動かさなかった。

モザは代わらずニヤニヤと見下ろしながら、話しかける。

「どうして矢が俺からそれたんだろうね。これで終わりかい? さっきまでの威勢はどうしたのさ。ほら、もっと頑張れよ」

モザの言葉に、最初は威勢がよかった村の若者達の顔色が青くなる。

今更、自分達がどのような存在に喧嘩を売ったのか理解し始め、心が折れそうになっているのだ。

しかし、心が折れ、抵抗する気力が無くなる前にエリオが上手いタイミングで声をあげる。

「相手がどうやって矢を防いだのかは分からないが、空に浮かびながらずっと防ぎ続けることは出来ないはずだ! 相手の力を削ぐため、村に手を出させないためにも矢を狙い、射続けろ!」

「!? わ、分かりましたエリオ隊長!」

エリオの発破に若者達が瞳に気力を取り戻し、再度、彼の指示に従い矢を放ち出す。

空に浮かびつつ、魔術か何かで矢を防ぐのは普通ならば長時間はできない。そのため削るだけ削って、地上に降りた後は数の力で倒そうと若者達に希望を見せる。

エリオ自身、そんな簡単な相手ではないと理解しつつも、ここで自分が折れたら若者達の士気は壊滅的になり、それこそ勝機はゼロになってしまう。

そうなったら村がどうなるか分かったものではない。

一方でモザは襲いかかる矢を一切気にせず、エリオ達を見下ろし、嘲笑する。

「本当に力のない奴らって哀れだよね」

ミヤについて調べた際、その兄であるエリオのことを知った。

エルフ種の『冒険者殺し』にダンジョン内で襲われ、運よく生き残った人物だと。

エリオはモザ同様に、人種冒険者として生活をしていた。

幼馴染み同士で活動していたとはいえ、モザ自身元人種冒険者のためその生活がどれだけ他種冒険者から見下され、馬鹿にされて、差別されるか知っている。

「だが今の俺は違う! 俺は女神様に選ばれた『聖鎧の勇者』! 超人種(ハイヒューマン) だ!」

モザは軽く腕を振るう。

それだけで突風が生まれて、射られた矢どころか、エリオ達すら風の勢いにその場で耐える姿勢を取る。

モザは完全に調子に乗った声で叫ぶ。

「そんな勇者で、 超人種(ハイヒューマン) の俺に逆らうとは! 女神様の代理人である『風鎧の勇者』が判決を下してやる。異端者を庇う村は異端者の集まり! だーかーらー、女神様の代理人として、この村ごと吹き飛ばす! 皆殺しにしてやる!」

「!? みんな! 伏せろ!」

エリオが殺気を感じて叫ぶ。

モザが再び腕を振るう。

エリオの叫びに反射的に伏せた者達は無事だったが、咄嗟に反応できなかった者達が腕や足、体のどこかしらを切り裂かれ、鮮血を舞い散らせる。

(風の攻撃魔術か? 空中に浮かびながら、攻撃まで出来るなんて……)

エリオが悔しげに唇を噛む。

自分達の攻撃は防がれ、相手から一方的に攻撃を受ける。

完全に打つ手がなく、彼自身の心が折れかけてしまう。

モザ自身、エリオだけではなく、自分に逆らった若者達の心が折れそうなのが手に取るように分かる。

彼はそんな若者達を完全に見下し、心底気持ちよい表情で笑う。

「最高だ! 人を見下して、イジメるってどうしてこんなに気持ちいいんだろうな! 俺が気持ちよくなるためにオマエ達は死ね! 死ね! 死ね! 見下されながら家畜のように死ねッ! ぎゃはははははははははは!」

モザが女神に選ばれた勇者とは思えない台詞を吐き、笑っていたが――その笑いも魔弾の風切り音で中断される。

『ビュッ!』という鋭い風切り音が数十以上も鳴り響く。

さすがに警戒心から、モザは笑い声を止めると、周囲を見回し、防御体勢をとるが……彼自身への攻撃ではない。

「ッ!? 村の奴らが眠っている? しかも、傷を負った奴は治っている?」

魔弾はモザではなく、村人達へと放たれたのだ。

魔弾がヒットすると村人達は眠りに落ち、傷を負っている者は、最初から怪我などなかったように治癒される。

もちろん、野外だけではなく、家屋にいる村人も例外なく魔弾によって眠らされる。

「…………」

こんなマネが出来るのは『UR 両性具有(ダブル) ガンナー スズ レベル7777』だけだ。

彼女は不快な態度を取るモザを心底侮蔑した視線を向けていた。

もちろん、顔を見られないようにエリーと同じく『SSR 認識阻害フードマント』を被っている。

だが彼が最も警戒するべきはスズではない。

「な、なんだオマエ達は!? いつからそこにいたんだよ!」

LV9999の一人であるアオユキ。彼女が『SR 飛行』で空を飛び、スズと同じ位置へいつのまにかいた。

既に猫耳フードを被っているアオユキは、猫デザインの仮面を被り素顔を誤魔化す。

モザの誰何に代表して答える。

「にゃ~」

アオユキは緊張感が無くなりそうなほど可愛い猫語で、返答したのだった。