軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

29話 vsモザ1

シックス公国にある女神教総本山中庭で、他勇者と別れた元冒険者の『聖鎧の勇者』モザが、空を飛び、ミヤの実家がある村を目指す。

空の移動は早くすぐに目的へと辿り着いた。

「ここが邪教聖女の村ね。本当に、どこにでもある村って感じだな」

モザは上空から村を見下ろす。

彼の言葉通り、どこにでもありそうなごくごく普通の村だ。

その村の広場の一角で若者達が集まり、盾と木剣を握り一対一に別れて模擬戦をおこなっていた。

木剣には衝撃吸収用の布が巻かれているが、体に当たればそれなりに痛い。そのせいか若者達は皆、真剣に訓練をおこなっていた。

ちょうど今日は午後練の時間だったらしい。

モザは無遠慮に空中から、訓練をしている若者達に向かって近付く。

「ただ剣を振るって、盾で防ぐだけじゃ駄目だぞ。別に盾は護りに、剣は攻撃だけに絶対使わなきゃいけない決まりなんてないんだ。もっと頭を使って相手の嫌が――!?」

若者達の訓練を指導するエリオが檄を飛ばしていたが途中で止めて、顔を上空へと視線を向ける。

気配を感じて、顔を空へと上げたのだ。

最初、鳥のモンスターかと疑っていたが、人が空に浮かんでいることに気付き、驚いて思考停止してしまう。

とはいえ、エリオは元冒険者で修羅場を何度も潜っているためすぐに意識を再起動。

他訓練をしている若者達にも気付くよう大声で誰何する。

「何者だ! どうして空からうちの村に近付く!」

懸命に剣を振り、盾で守る訓練をしていた若者達も、指導員であるエリオの大声に気付き、空を見上げた。

彼の言葉通り、上空になぜか人が浮いているのだ。

『夢でも視ているのか』と一部の者達が頬を抓ったり、目を擦ったり、戸惑う。

彼らの常識的にも人が空に浮いているなどありえないからだ。

『聖鎧の勇者』モザはそんな若者達の驚きに優越感を感じつつ、エリオの問いに答える。

「どーも、初めましてこんにちは。訓練中にお邪魔して悪いね。俺は女神様に選ばれた『聖鎧の勇者』モザだ。ここに女神様に叛逆した邪教の聖女ミヤ、神官クオーネは来ていないか? もし居たら俺の前に大人しく連れて来なよ」

「女神様?」

「『聖鎧の勇者』の勇者ってあの『魔王と勇者』物語の?」

「確か、行商人から女神教が勇者と認定した者達がいるとか噂で聞いたような……」

訓練をしていた若者達はモザの返答にざわめく。

騒ぎを聞きつけた、他一般村民も遠巻きに集まり出す。

モザは彼らの態度など気にせず続ける。

「この村が邪教の聖女ミヤの出身地だっていうことは把握済みだ。もし彼女達が居て同郷のよしみで隠し立てしているならお勧めしないぞ。大人しく2人を渡さないと、この村そのものを『異端者認定』して、葬ってもいいんだから」

モザはニヤニヤと空中から、地上にいる者達全員を見下し、脅しの言葉を漏らす。

彼の態度から、虚言ではなくモザが本気になれば自分達の村など簡単に潰すことが出来ると如実に語っていた。

実際、人種にもかかわらず空を浮遊している。そんなマネが出来る相手なら、本当に村を潰すことなど簡単なのだろう。

エリオは嫌な予感を感じつつも代表して声をあげる。

「勇者様、私はミヤの兄でエリオと申します! 勇者様が仰る通りこの村はミヤの出身地で、クオーネという少女も友人だと聞いています。ですが、彼女は現在シックス公国学園に在学中です。この村に2人はおりません」

「邪教聖女ミヤの兄、ね。資料に書いていたあった通りの名前だ」

モザは文字が読めないため、女神教総本山に勤める神官達から読み聞かされエリオの名前を覚えていた。

人相描き通りの顔立ちをしており、まず間違いないだろう。

エリオの素直な返答にモザは納得していない態度を取る。

「邪教聖女とはいえミヤって君の妹なんでしょ? 本当に隠していないのかな」

「本当です! 妹も、その友達も村には来ていません!」

「どうも胡散臭いな。これは女神様から選ばれた勇者として一家、一家しっかりと見て回らないと駄目そうだね。特に若い女が居る家は念入りに調べないと。だって女の子は、女の子同士でかばい合うからね」

ねっとりとした好色を含んだ悪意を乗せた言葉を漏らす。

彼の態度にエリオは以前、ドワーフダンジョンで襲われたエルフ種カイトの姿を思い出す。

(嫌な目をする……。他者をゴミか、ただ遊んで殺すだけの家畜を見るような目をしている。なぜミヤ達を探しているかは分からないけど、あんな目をした奴が若い女の子の家をただ調べるだけじゃすまないだろう。なんとかして阻止しないと)

とはいえ、相手は空を飛ぶ自称勇者だ。

実力を考えれば自分達では手も足もでないだろう。

なのでエリオは大人しく下手に出る。

「……勇者様! 本当に妹も、友人もこの村にはおりません!」

「うるさいな。勇者である俺が『信じられない』って言っているんだから、オマエ達家畜は大人しく従えばいいんだよ」

「か、家畜だと……何が勇者だ!」

「おれ達をあからさまに見下しやがって! 調子に乗るなよ!」

「ミヤちゃん達はいないって何度も言っているだろうが! その歳でもう耳が遠いのか! だいたいオマエのような胡散臭い奴にミヤちゃん達がたとえ村に居ても大人しく引き渡す分けないだろうが!」

「そうだそうだ! サッサと帰れ!」

「帰れ!」

あからさまに見下され、馬鹿してくるモザの態度に血気盛んな若者達が怒りの反論をあげる。

遠巻きに眺めていた村の人々も、モザの態度に腹を立てて同じように声をあげだす。

エリオが『馬鹿、止めろ! 煽るようなマネをするな』と声をあげるが、もう遅かった。

村人達は殆ど外に出たことがなく、残虐性を持つ高レベルの強者と出会ったことがないため、その恐ろしさを知らない。

集団心理も加わり、『帰れ』コールが、空に浮かぶモザへと叩きつけられる。

モザは苛立ち、同時に村人達を多少痛めつけても問題ない大義名分をえた喜びを滲ませ、醜い笑みを作った。

「 イジメら(搾取され) れるだけの家畜の分際で、女神様に選ばれた『聖鎧の勇者』である俺に逆らうなんて不敬が過ぎるな……。これは少々痛い目に遭わせて教育してやらないとね!」

『ッ!?』

モザの声に合わせて突然、強風が叩きつけられる。

エリオは瞬時に腰を落とし耐える体勢を取ったが、咄嗟に反応できなかった若者達、村人などがゴロゴロと地面に転がった。

モザは地面を無様に転がる人種達をニタニタと心底愉快そうに笑いながら、断言する。

「さぁ愚かな背信者達に、聖なる教育を『聖鎧の勇者』である俺がしてあげよう」