軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26話 vsコロル1

(もうすぐ邪教神官の実家がある街に着きそうですね)

『聖鎧の勇者』モザの付与で、元聖職者の『聖槍の勇者』コロルは一時的に空を飛行する力を得た。

とはいえ、1日程度しか効果がない付与だが、『聖槍の勇者』コロルからすれば十分だった。

(街に着いたらすぐに邪教聖女、神官を匿っていないか確認して、殺害を妨害するようなら実家ごと滅ぼせばいい。街ごと逆らってきても問題なし。自身の力を以てすれば1時間かからず街ごと滅ぼせますからね)

空を移動しつつ、コロルは脳内で自分に逆らう街ごとクオーネを殺害する光景を想像し、ニタニタと邪悪な笑みを作る。

(全ては女神様のため! 忌まわしい邪教聖女、神官、その協力者達を殺害すればまた一歩、女神様を讃える理想の世界に近付きま――ッ!?)

胸中で女神を讃えている途中で、全身が『ナニか』によって拘束。

雁字搦めにされて、上空から勢いよく地面へと引っ張られる。

そのまま胸中で呟いていた台詞を途中で遮られ、勢いよく地面へと激突してしまう。

「ぐぅうぅッ……い、いったい何が起きたのですか……ッ」

痛みに呻き困惑しつつも状況を確認するため顔を上げると――視線の先に見慣れない二人組が目に入る。

頭からフードをスッポリと被り顔が分からず、身に付けている衣服はどちらもメイド服だった。

平原にフードで顔を隠したメイド二人組に、コロルは最初、意味不明過ぎて痛みを忘れて思考停止する。

一方で、フードの下から右側が赤で左側が青い髪が見え隠れしているメイドが、称賛の声を上げ出す。

「さすがメイド長です! 一瞬で捕獲するとは!」

右側が赤で左側が青い髪をしているメイドは、当然アイスヒートだ。

彼女に称賛を送られているのはメイである。

2人は正体を隠すのと、自分達が『巨塔』側と示すため、『巨塔の魔女』が外に出る際に被っている『SSR 認識阻害フードマント』を身に付けていた。

「この程度、造作もありません。では、勇者から情報を抜き取るためにもまず意識を奪いましょうか」

「き、貴様ら、何者だ! 自身を偉大なる女神様に選ばれた 超人種(ハイヒューマン) の『聖槍の勇者』と知って手を出すとは! 正気か!? その恰好、資料に描かれていた『巨塔の魔女』と似ている! 貴様ら『巨塔の魔女』の手勢か!?」

「…………」

メイはコロルの問いは無視して、彼を拘束し墜落させた『 魔力糸(マジック・ストリング) 』を今度は首へと巻き付け、締め付け、意識を奪おうとする。

意識を奪い、拘束し、報復と情報を抜き取るため『奈落』最下層へ連行するための処置だ。

「ぐぁぁあっ!?」

悲鳴をあげるコロル。淡々と家畜を屠殺するようにメイは行動をしていたが――。

「……ッ、め、女神様の、代行者、である。勇者を、舐めるなぁぁぁぁぁッ!」

「「!?」」

コロルが叫ぶと、彼の全身が炎に包まれる。

炎は彼が握る『火山の槍』から発生していた。

ただの炎ではなく、メイの『 魔力糸(マジック・ストリング) 』を燃やし、拘束から逃れたコロルは、全身が燃えているにもかかわらず勢いよく飛び起き、メイ達から距離を取り槍を構える。

(私の『 魔力糸(マジック・ストリング) 』をこうも容易く燃やすとは……。さすが『伝説の武器』だけありますね)

しかも、所有者であるコロル自身は、全身が燃えているにもかかわらず一切ダメージを負っていない。

どうやら『火山の槍』は、所持する者に炎に対する完全耐性を与えるようだ。

「この不敬な異端者共が! 女神様に代わり『聖槍の勇者』コロルが神罰を与えてくれる! 神の裁きを喰らうがいい!」

コロルは激怒し、叫びながら構えていた槍を振るう。

『火山の槍』の力によって地面が焼かれ、赤熱化。

マグマとなってメイ達へと襲いかかる。

「副メイド長!」

「お任せください!」

メイが念のため偽名――ではないが、役職名でアイスヒートへと声をかけた。

彼女はメイの声に答えて、即座に対応する。

「我が右手に宿れ! イフリート!」

アイスヒートは右腕にイフリートを宿す。

その力で迫り来る炎とマグマをコントロールし、自分達に攻撃が届かないだけではなく、下手に被害が広がらないようにした。

メイが、『聖槍の勇者』コロルを相手にアイスヒートを連れてきたのも、『火山の槍』を乱用されることで、地上に無意味な被害を出させないためだ。

……もちろん他にも理由はあるが。

アイスヒートのお陰でメイ達は、一歩も動くことなく『聖槍の勇者』コロルの攻撃を防ぐ。

しかしコロルに動揺は一切ない。

一歩も動かず攻撃を防がれた『聖槍の勇者』コロルは動揺どころか、むしろ怒りを加速させる。

「神罰を大人しく受け魂の浄化を拒むとは……。これだから邪教に与する異教徒は! 自身には神命が残っているのだ! 邪魔をせず、さっさとその魂を浄化しろ!」

コロルは怒りにまかせて槍の尖端を地面へと突き刺す。

「神罰を受けるがいい!」

「「!?」」

コロルが叫ぶと、同時にメイ達の足下――彼女達を中心に大爆発を起こす。

それはまるで火山が噴火したような爆発だった。

火炎、マグマだけではない。

高速で土石が吐き出され、火傷するほどの熱い蒸気が吹き上がる。

もし一般人がその中心に居た場合、火炎やマグマに焼かれ、たとえ回避できても熱い蒸気に蒸し殺され、高速で吐き出される土石によって全身を貫かれ原型を失い死亡するだろう。

『聖槍の勇者』コロルは地面に突き刺した『火山の槍』を引き抜き得意気に高笑いする。

「あはははははは! 自身の手にするのは古の勇者が所持した本物の聖槍! 貴様達、異端者など聖槍の前では塵芥にすぎんのだ! 慈悲として、聖なる槍の力によって浄化されたことを誇りにするとよい!」

コロルはメイ達の足下に『火山の槍』の力で局地的な噴火を引き起こし、上機嫌に誇った。

普通に考えれば、局地的とはいえ噴火の中心に居たら、高レベルでも無事では済まないはずだが――。

「……埃を撒き散らすなど面倒な攻撃ですね。屋外だからよかったものの、これが室内でおこなわれたら。掃除が大変になっていた所ですよ」

「!? ば、馬鹿な! なぜ貴様達、生きている!」

さすがに一歩もその場から動かないという訳にもいかなかったが、メイとアイスヒートは先程まで立っていた場所から少しだけ移動しただけだった。

しかも彼女達は無傷で、衣服に汚れ一つなく、涼しい顔で立っていたのだった。