軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27話 vsコロル2

「もっと楽に捕らえることが出来ると思っていましたが……面倒ですね」

メイは言葉通り、心底面倒そうに溜息を漏らす。

反対に『聖槍の勇者』コロルは、まさか自身の攻撃で、傷どころか服に汚れ一つ付けることが出来なかった事実に強い衝撃を受ける。

とはいえ別にメイ自身、特別なことをした訳ではない。

足下から噴火のような攻撃が来ると気付き、すぐさま離脱。

その際、アイスヒートを含めて『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で壁を作り斜めに設置して、噴出したマグマや炎を受け流しただけだ。

タネを明かせば別に難しいことではない。

メイは基本的に何でもできるが、戦闘技能はそこまで多彩なものを持つ訳ではない。

そのため単純にコロルを殺害するだけなら容易いが、捕らえるとなると少々手間がかかってしまう。

手間がかかっても、コロルを生きたまま捕らえようとしているのは、彼の頭から情報を引き出すためだ。

全て絶対的主であるライトの望み。

故にメイは手間でも生きたままコロルを捕らえようとしているのだ。

「な、なるほど……わざわざ立ちふさがったのも、自身の攻撃を防ぐ手段を運良く所持していたからのようですね。ですが……いつまで攻撃を防ぐことが出来ますかね!」

驚愕した気持ちを立て直したコロルが声高に叫ぶと、『火山の槍』を何度も振るい出す。

振るうたびに、火炎、マグマが吹き出てメイとアイスヒートを襲う。

「何度やっても無駄だ! イフリート!」

今度はアイスヒートが前に出て先程のように炎、マグマをコントロールして攻撃を逸らす――が、いつまで経ってもコロルの攻撃は終わらない。

「防がれると分かっていながら、何度も繰り返して、無駄が多い!」

「副メイド長」

さらに時折、地面を刺して小規模な火山噴火を起こす。

アイスヒートは火炎、マグマの操作して攻撃を逸らすことは出来ても、火山の水蒸気、土石流までは干渉できない。

メイが再びアイスヒートを守るため、『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で壁を作り逸らす。

コロルは勝利を確信した笑い声をあげる。

「あはははは! 上手く防げましたが、それがいつまで続きますかね! 自身の持つ『火山の槍』は伝説の武器だけあり、永久に先程のような攻撃を繰り返すことができますがね! さらに!」

コロルが槍の穂先を根元まで突き刺すと、地面が震動。

メイとアイスヒートの着地に合わせて2人の背後、左右の地面が隆起して壁を作り出す。

彼は愉快そうに叫ぶ。

「『火山の槍』の力がただ炎、マグマ、噴火を司るだけだと思ったのが運の尽き! こうして地面を任意に操作することも可能なのですよ!」

『火山の槍』――火山の膨大なエネルギーそのものを封じ込めた槍。使用者の意思に従い解放すると火山の爆発エネルギーが敵へと浴びせられる。また地面に突き刺して大地そのものを好きなように変動できる。それこそ新たに地面に火山を作り爆発させることも可能。

コロルは地面操作の力で、メイ、アイスヒートの退路を断ったのだ。

彼は勝利を確信した表情で断言する。

「さぁさぁさぁ! 邪教の異端者共! 懺悔せよ! 醜く命乞いをし、女神様の慈悲を請いながら聖なる炎に焼かれ、岩に砕かれ、地に埋まりその穢れた魂を浄化せよ! あははははは!」

確かにこのままコロルが逃げ道を制限した2人に、アイスヒートが受けきれないほどの炎やマグマ攻撃をしかけてもいいし、小規模な噴火を浴びせ殺害してもいい。さらには地面を操作して蟲のように潰すことも出来る。

『火山の槍』があれば、相手が疲労しきるまで永遠に攻撃し続けることが可能だ。故にコロルは自身の絶対的な勝利を確信し、絶叫するような高笑いをしつつ、2人を見下し切った。

――相手が『奈落』最下層の内政を預かるメイド長、メイ。副メイド長、アイスヒートでなければ、コロルの勝利は揺るがなかっただろう。

メイ、アイスヒート共に、怯え一つなくコロルへと向き直る。

メイは再度、面倒そうに溜息を漏らす。

「予想していたとはいえ、やはりアレを使う必要がありますか……副メイド長、後は頼みます」

「畏まりました、メイド長」

メイの言葉にアイスヒートが一礼し、彼女の背後へと引く。

メイは毅然とコロルへと向き直り……アイテムボックスから武器を取り出す。

「!?」

コロルの背筋が凍り付く。

メイが取り出したのは一本の槍だった。

その槍は『火山の槍』とは正反対に、穂先から最後まで真っ白な純白だ。

メイは右腕を『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で巻き付けて補強し、地面に突き刺さった槍――『SSSR 永久凍土の槍』を握り締める。

「……何度、握っても冷たいですね。体が冷える前に終わらせましょう」

「ッッッ!? か、『火山の槍』よ! あの邪教の女を聖なる炎で焼き清めよ!」

コロルがまるで天敵を前にした小動物のように怯え、慌てて『火山の槍』をメイに目掛けて振るう。

メイは彼とは正反対に怯えることなく、その攻撃を迎え撃ち、純白の槍『SSSR 永久凍土の槍』を同じように振るう。

「全てを白く凍りつかせなさい、『永久凍土の槍』よ」

彼女が槍を振るうと、迫り来るマグマ、炎が一瞬にして凍り付く。

それだけではない。

力を解放した使用者であるメイ自身の腕まで一部凍り付いてしまう。

『SSSR 永久凍土の槍』――神話時代の永久凍土から作り出された槍。その力は非常に強力だが、使用する力に比例して使用者にも相応のダメージを与える。

メイは『SSSR 永久凍土の槍』を使用した場合、自分にも相応のダメージが返ってくると理解していたため、事前に『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で槍を掴んでいる自身の右腕を保護。

お陰で最小限のダメージで済ませることが出来た。

コロルが狼狽した様子で槍を何度も振るう。

「か、神の奇跡たる『火山の槍』の攻撃を凍り付かせるなどあってはならない! 神の奇跡を舐めるなぁぁぁぁッ!」

彼が『火山の槍』を振るうたび、マグマと炎が溢れ出て襲いかかるがメイは眉ひとつ動かさず、同じように『永久凍土の槍』を振るって凍り付かせた。

「無駄です。この槍を使用する以上、貴方の攻撃はもう私には届きません。抵抗するだけ無駄ですよ」

「調子に乗るなよアバズレが! マグマと炎だけが『火山の槍』の力だと思うなよ! 最大限の火山を作り出し吹き飛ばしてくれる! それでも生きていたら、大地を操作し、虫けらの如く踏みつぶしくれるわ!」

コロルは炎攻撃ではメイの髪の毛一本焼けないことを理解すると、地面に槍を突き刺し、火山、もしくは地面を操作して踏みつぶそうとするが――ガン、と槍が金属にぶつかったかのような音をたてて弾かれてしまう。

「!?」

気付けば地面が金属のように凍り付き硬くなっているため、穂先が刺さらなかったのだ。

メイが穂先が刺さらず驚愕しているコロルへ死刑宣告のように告げる。

「火山や地面を操作する場合、『火山の槍』を大地に刺す必要がありますよね。地面に刺せないほど凍り付かせれば、その攻撃を防ぐことも可能です。『火山の槍』は確かに強力な武器ですが、著名ゆえ、対抗措置を考えるのはそう難しい話ではありません」

「ッ! だ、だったら距離を取り、まだ凍っていない地面に突き刺せばいいだけのこと!」

コロルがメイの言葉に反発し、距離を取ろうとするが――いつのまにか地面だけではなく、自身の足まで凍り付き真っ白な霜が生物のように浸食していた。

あまりの寒さに足の感覚が麻痺して気付かなかったようだ。

当然、ここまでメイは計算済みである。

彼女は改めて告げる。

「言ったはずです。抵抗するだけ無駄、と」

「ば、馬鹿な……馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な! 自身は女神様に選ばれた『聖槍の勇者』なのに、どうして異端者ごときに敗北するのだ! 女神様に選ばれた勇者なのに!」

「いくら強い武具でも使いこなせておらず、貴方自身の戦闘経験が低く、レベルも中途半端、他にも理由は多々ありますが、親切に教える意味も義理もありませんから。我が主のため生け捕りにさせて頂きます」

メイが『永久凍土の槍』を振るうと、絶望しきった表情でコロルが凍り付く。

「ば、馬鹿な……ぎぁぁあッッ!!」

完全に氷の彫像と化したコロルを確認し、メイは無事に敵を殺すことなく生け捕りに成功する。

後は『奈落』最下層へ連れて帰り、エリーの禁術で『死んだほうがマシ』の記憶抽出作業を受けて情報を引っ張り出すだけだ。

メイは軽く溜息を突きつつ、『SSSR 永久凍土の槍』をアイテムボックスに再度しまう。

「『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で保護していたとはいえ、完全に無傷という訳にはいきませんでしたか……」

彼女の右腕は『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で保護していたが、『SSSR 永久凍土の槍』のせいで凍傷状態に陥っていた。

しかし、この程度なら回復魔術で治癒が可能だ。

わざわざ切り落とし、再生させる必要はない。

自身の負傷を確認すると、フォローに回っていたアイスヒートに声をかける。

「副メイド長もフォローを感謝します」

「ありがとうございます、メイド長。勿体ないお言葉です」

『SSSR 永久凍土の槍』は強力な凍結能力を持つ槍だ。

もし使用した場合、地上をどれだけ凍り付かせるか分かったものではなかった。

そのためアイスヒートが、対『聖槍の勇者』コロルの戦いに加わらず、無駄に地上が凍結しないようメイのフォローに回っていたのだ。

メイに感謝の言葉をかけられたアイスヒートは内心で、狂喜乱舞とはまでいかないが非常に喜んでいた。

(今回は珍しくアイスヒートが活躍することが出来たな! これもメラが管理倉庫で見つけてくれた『UR ラッキーコイン』のお陰かもしれない!)

以前、戦力強化のためメラが管理倉庫へと向かった。

その際、『UR ラッキーコイン』というアイテムを発見。

許可を取り、アイスヒートに手渡したのである。

ちなみに『UR ラッキーコイン』の能力は――持っていると幸運をもたらせてくれるかもしれないコインだ。

あくまで絶対ではない。

アイスヒートが内心で珍しく活躍、貢献できたことにうきうきと喜びつつ、凍り付かせた『聖槍の勇者』コロルを『奈落』最下層へと連れていくため、もうひと働きするのだった。