軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25話 『聖槍の勇者』コロルの過去

『聖槍の勇者』コロルの両親はどちらもシックス公国女神教総本山に所属する神父、シスターだった。

そんな両親の間に生まれたコロルは、生粋の『女神教信者』としての教えを受け、育つ。

女神教の教えを子守歌代わりに育ったのだ。

彼は物心が付くと、当然自分も将来両親のように女神教総本山に所属し、その教えを広く伝えるのが使命なのだと考えていた。

両親の期待に応えるというのもあり、コロルは幼い頃から熱心に『女神教』の教えを学び、布教活動も率先しておこなう。

お陰で女神教内部でも彼の評価は高い。

両親ともに、彼を誇りに思っていた。

両親の思い、そして周囲からの期待に応えるためにもコロルはますます『女神教』にのめり込んでいった。

――しかし彼は現実を知る。

成人し、新米神父としてシックス公国外の街に経験を積むため赴任したのだが、あまりの人種差別、女神教を蔑ろにされる扱いに愕然としてしまう。

彼が育ったシックス公国にも人種差別はあるが、まだ各国が出資し運営する国家のため、他国に比べるとまだ差別は弱い。

また彼自身、女神教総本山周辺で育った。

そのため人種差別や女神教がシックス公国外ではあまり敬われないと聞いては居たが、これほど酷いとは想定していなかったのだ。

早い話が現実を知ったのである。

新米神父のコロルが赴任した街で、女神教布教のため、エルフ種冒険者に声をかけたことがあった。

「女神教の教えについてお話をさせて頂けませんかな?」

「ぷっ、女神教とか」

「女神教なんて宗教に心酔しているのは下等な ヒューマン(劣等種) だけでしょ」

「むしろ、 ヒューマン(劣等種) が、わたし達、種として高貴なエルフ種に説法しようとする時点で間違っているのよ」

エルフ種冒険者はあからさまにコロルを馬鹿にして、冷笑を向けて蔑んできた。

だが露骨に馬鹿にされ、蔑まれる程度ならまだマシだった。

コロルは負けじと女神教布教をおこなうため、獣人種冒険者に声をかけたが、

「うるせぇ坊主が!」

「 ヒューマン(劣等種) の分際で、おれさま達を見下した態度とりやがってよ!」

「こいつぼこぼこにして衣服剥ぎ取って、人前に放り出そうぜ」

温室育ちのコロルは質の悪い獣人冒険者に声をかけ説法しようとした結果、殺されはしなかったが、しこたま殴られ衣服を剥ぎ取られ、全裸でゴミ捨て場に放置された。

人種はその弱さから、一部女神教の教えに縋る者達がいるが、他種は基本的にライバルの種を超えることしか頭にない。

女神など彼らからすれば、『お伽噺の題材』程度の認識しかないのだ。

(この世界は女神様がお作りになったというのに! 女神様を軽んじ、敬わない者達があまりにも多すぎる。こんな世界は間違っている!)

コロルは、教会で毎日呪詛のように、女神を敬わない存在達に憤慨し、神罰が下るよう祈り続けた。

この世界を作り出した女神を蔑ろにする者達があまりにも多すぎる。こんな世界は間違っていると。

(女神様を崇め、その下で全種が集まり信仰すれば『争いも差別もない平和な世界』が作り出せるというのに! どうしてそれが理解できないのだ! あぁぁ! どうしてこの世界はこんなにも間違っているのだ! どうにかして変えなければ!)

――そんな彼の願いが通じたのか、夢の中でコロルに神託が下る。

目を覚ますと、ベッドの側に女神が火山の噴火を封じ込めたという伝説の槍『火山の槍』が存在し、ステータスを確認するとレベル7000になっていた。

コロルは神託に歓喜し、早速この力が本物かどうか郊外に出て確認するため槍を手にして出かける。

街を出て森の側で運良くゴブリンと遭遇した。

早速、槍を手にゴブリンに戦いを挑む。

『ギギギギギギギッ!』

コロルは今まで一度も武器など持ったことがなく、戦闘経験など当然ゼロだ。

にもかかわらず、自分に襲いかかってくるゴブリン達の動きは高レベルのお陰で止まっているように見えて、手にしている『火山の槍』をどう振るえばいいか直感が教えてくれる。

文字通り、物語に出てくる『聖槍の勇者』の如く、戦うことが出来たのだ。

「あああ! 素晴らしい! これこそ女神様の奇跡!」

コロルは圧倒的力に酔いしれてしまう。

一通り戦闘が終わった所で、偶然、以前彼を馬鹿にしてぼこぼこにし、全裸で放り出した獣人冒険者達が通りかかる。

「な、なぁアイツって、前におれ達がぼこぼこにした……」

「このゴブリンをあの ヒューマン(劣等種) がやったのか?」

「あの手にしている槍、滅茶苦茶ヤバイ雰囲気が出ていないか?」

当然、コロルも高レベルのお陰で彼らの存在に気付いていた。

コロルは通りかかった獣人冒険者達へと向き直り、問う。

「貴方達は女神様を崇めていますか?」

「そ、そりゃ、当然、あ、崇めていますよ……へっへっへっ……」

「う、うちは代々女神教だしな!」

「そ、そうだよです。うちだってじいちゃんのじいちゃん、以前から女神教で、女神様を敬ってましたぜ!」

以前の問いかけと違い、獣人種冒険者達は目の前に広がるゴブリンの惨殺死体、コロルから感じる狂気、手にしている槍から漏れ出る風格、そして自分達の訴えてくる本能に従い下手に出る。

しかし、彼らの取り繕った態度が逆にコロルを刺激してしまう。

「うそ……うそうそ嘘ウソを語るな、この不信者共がぁぁぁぁッ!」

先程のゴブリン達のように、コロルは獣人種冒険者達に襲いかかり、槍を振るう。

「ぎゃぁぁぁっ! あづい! あづい!」

「おれの腕がぁぁぁ!」

「だ、だすけて……だすげでぇ……」

獣人種冒険者達は『火山の槍』に貫かれ、焼かれて、悲鳴を上げる。

女神教に信仰心のない者達の悲鳴や懇願を耳にすることで、コロルは真理に到達した。

「女神様の神託を受けた『巨塔の魔女』の殺害は当然として、女神様を崇めずに蔑ろにする異教徒共を皆殺しにし、この地上、全種がただただ女神様を崇める世界を作る。そうすればこの世界から争い、差別、悲劇が消える。そんな理想郷を作り出すため、女神様は自身にこの力を与えてくださったのですね……ッ!」

『聖槍の勇者』コロルはバラバラで、真っ黒な炭状態になった獣人種冒険者達の死体を前に自身の使命を実感した。

彼は歓喜の涙を流し、神託を受けた『巨塔の魔女』を『火山の槍』で貫き、女神様を崇めない異教徒共を皆殺しにし、この地上に楽園を自分の手で作り出す決意を固める。

その際、どれだけの異教徒を殺害してもだ。