軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21話 族長オゾの主張

ミヤ、クオーネを獣人連合国首都にある高級宿屋に身柄を匿った後、獣人クマ種族内部で話し合いが持たれる。

内容は当然、『ミヤとクオーネの件』についてだ。

獣人クマ種族の族長オゾが、獣人クマ種族の敷物の上座にあぐらをかき、左右に円形に彼の一族部下達が同じように座っていた。

彼らは、族長であるオゾに対して問いかける。

「族長、今回の一件、どうして他一族に伝えないのですか? 緊急会議を開いてでも伝えるべきだと思いますが……」

「…………」

オゾはすぐに返答せず、手にしている煙管のような長い機具から煙を吸う。

彼の発言通り、『ミヤとクオーネの件』は他一族には伝えず、クマ種一族内部で留めていた。

彼女達には『獣人連合国として匿う云々』と口にしているが、実際は現状、クマ種一族内部のみで対応している状態だ。

一族部下達はすぐにでも他一族族長に連絡を取り、緊急会議を開くべきだと考えているのだ。

オゾが『ふぅ~』と紫煙を吐き出し、切り出す。

「……緊急会議は開かん。他一族には伝えず極秘で動くぞ」

族長の決定に一族部下達がざわつく。

オゾはもう一度紫煙を吸い込み、吐き出してから理由を告げる。

「オイが生きている間は絶対に『巨塔の魔女』様に逆らうつもりはなか。あのお方に逆らうなど御免こうむる」

目の前で翼人種族長イゴルの首を、『巨塔の魔女』が物理的に手で掴み引きちぎる姿をオゾは見た。

その時の記憶が蘇り、軽く身長が2mを超え、縦にも横にも大きなオゾが恐怖に震え出す。その震えを誤魔化すように煙管のような長い機具を口にくわえて吸い込んだ。

煙を吐き出す頃には震えが収まり、冷静な声で続きを語る。

「オイや獣人ウシ種族長ベニは絶対に『巨塔の魔女』様に逆らうつもりはなか。……しかし新しく一族の長に収まった者達が、『巨塔の魔女』様の偉大さを知らず、足を引っ張るために件の少女達を女神教に売る可能性はゼロではなか。だから、今回の一件は、他一族には伝えずクマ種一族のみで動く」

オゾの考えに『なるほど……』と一族部下達が、納得し頷いた。

オゾは問いかけてきた一族部下達に視線を向ける。

「恐らくオマエの息子……ドワーフダンジョンの街で冒険者をしていた奴も同じ考えだから、オイ達系列のあの宿に2人を案内したんだろう。オマエの息子、なかなか出来るな」

「いえ、まだまだ至らない息子です」

口では謙遜しているが、声をかけられたクマ種の男は褒められて悪い気はしていない顔を作った。

オゾも彼の反応をからかうように口元を弛めたが、すぐに引き締める。

「今回の一件はクマ種一族のみで対応するのは決定事項だ。上手く行けば、クマ種が『巨塔の魔女』様へ恩を売ることが出来る。覚えが目出度くなれば獣人連合国内部での発言権も増す。……そして、逆に最悪のことが起こった場合、獣人連合国ではなく、オイ達が『巨塔の魔女』様に滅ぼされる程度で済むだろう」

『…………』

僅かに緩んでいた空気がオゾの発言で再び緊張感を持つ。

「『巨塔の魔女』様の勘気に触れれば、足下を這いずる蟲を踏みつぶす気軽さで獣人連合国そのものを地上から消し去る力を『巨塔の魔女』様は持っている。オイ達だけで動けば、万が一、何らかの失敗をして怒りを買ったとしてもクマ種の幹部達が消される程度で済むかもしれん。国とクマ種が残ればまだマシだからな……。その場合、オイの首だけで収まるよう頭を下げるつもりだが、何事も保険はかけておくべきだろう」

未だ目の前で翼人種族長イゴルの首がなくなった光景を思い出すだけで震えてしまうが、それでもオゾは国家を預かる一角で、一族を束ねる族長だ。

たとえ自分の命を懸けてでも国家、一族を滅ぼされないための最善を尽くす。

それが族長だからだ。

一族部下達が族長オゾの覚悟に息を呑む。

同時にオゾに対する頼もしさを強く感じた。

オゾは紫煙を吐き出し、話を続ける。

「もちろんオイは失敗するつもりはなか。嬢ちゃん達を匿っている情報を確実に『巨塔の魔女』様に伝えるぞ」

とはいえ、どうやって『巨塔の魔女』へ伝えるか?

獣人連合国ではなく、クマ種一族単独で動くなら正規の方法は使えない。

大きく分けて『巨塔の魔女』への連絡を取る手段は3つある。

『巨塔の魔女』の使者が直接、獣人連合国へと転移し訪れる。

獣人連合国の印を示した手紙を出す。

獣人連合国正規の使者を示す証を持ち、直接『巨塔街』を訪ねる、だ。

今回、クマ種一族単独で動くため正攻法は使えない。

獣人連合国の証を使用する際は、他一族の承認が必要なためだ。

もし使用した場合、他一族を欺くことは難しく、女神教に知らされるリスクも孕む。

故に選べる選択は少ない。

「……腕利きを組ませて、オイがしたためた手紙を直接運ぶしかなかな」

正規の手続きを取らず、直接森を越えて『巨塔街』を訪ねるしかない。

最悪の場合、侵入者として殺害される恐れがあるが、これが一番女神教に気付かれず、接触する方法だった。

オゾは族長として冷徹に命じる。

「ウチの一族で腕に覚えがある奴らを極秘に集めろ。嬢ちゃん達を保護している旨をしたためた手紙を出す。集めた奴らには、自身の命より他者に手紙を渡るのを阻止することを優先させろ。最悪の場合、自分が死んでも手紙が渡らないように燃やせとな」

「畏まりました」

オゾの指示に一族部下達が一礼。

一礼後、一族部下達は早速行動を開始するため部屋を出る。

「ふぅ……」

オゾも最後の紫煙を吐き出し、吸い殻を捨てると煙管のような長い機具を仕舞う。

手紙を書くため、重い腰を上げたのだった。