軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19話 提案

「ミヤちゃん、クオーネちゃん、この一件、俺――というか獣人連合国に預けてくれませんか?」

「「?」」

ミヤとクオーネはこの申し出に意味が分からず、首を傾けてしまう。

クマ種獣人が分かりやすく説明する。

「俺の親、実はクマ種獣人内部でも結構上の方なんですよ。以前、『巨塔の魔女』様によって獣人連合国の好戦派が一掃されたんです。あの戦いに参戦した奴等は文字通り全員死亡したので」

「…………」

獣人連合国と『巨塔』との戦いは、2人とも当事者だった。

ミヤは冒険者として割り切っているが、クオーネは未だにあの一件でトラウマをかかえている。

正直に言えば、利己心から兵をあげて返り討ちにあった獣人種達に対して『自業自得』という気持ちはあっても、同情心は一切なかった。

とはいえ、目の前で説明をしている彼の友人等が死亡している可能性があるため下手に感情を表に出すことが出来ず、複雑な表情を作ってしまう。

クマ種獣人は気にせず話を進める。

「あの一件があって、男手が少なくなったのでドワーフダンジョン街で冒険者をしていた俺や仲間達も呼び戻されたんですよ。昔はオヤジが決めた道をただ進むのが嫌で、反骨心から家を飛び出したんですが……。まぁ俺も歳を取ったのと、世間やゴールドの兄貴達から色々学べたし、故郷への郷愁などもあって、戻る事を決意した訳ですが……」

クマ種獣人が若干話が逸れたの誤魔化すように軽く咳払いをして、戻す。

「あれ以来、獣人連合国上層は『巨塔の魔女』様を恐れているんです。あの『殲滅』の記憶がある限り、獣人連合国が『巨塔の魔女』様に敵対することはありえません。冒険者として大陸に散っている同胞達にも『巨塔の魔女』様の機嫌を損ねるようなマネはするなと念を押しているほどですから。女神教の『巨塔の魔女魔王宣言』に関しても、上層部は完全に誤魔化してかかわらないと族長会議――族長会議っていうのは国の方針を決める大事な会議で、その会議でも『女神教、勇者達にはかかわらない』って上層部が意見を一致させたほどです。もちろんこの事実を知るのは極一部ですが。今度、『巨塔の魔女』様の勘気に触れたら、獣人連合国が消滅する危険がありますから。絶対にあいつらには関わるつもりはありません」

この事実を彼が知っているということは、それだけ親が部族の上層にいるということだ。

彼の取り巻きの若い衆達は、この事実を知らない。

「……話は分かりましたわ。『巨塔の魔女』様に獣人連合国上層部が逆らうつもりがないのは理解できましたが、どうしてワタクシ達を匿うことに繋がるんですの?」

クオーネが目を細め、相手の心意を見抜くように注意を払う。

彼の言葉が真実なら、ミヤ達を匿うこと自体が女神教と関わり合いになることになる。

話に矛盾が生じる。

クマ種獣人は矛盾を指摘されても、特に焦らず答える。

「上層部は女神教とかかわらないと決めましたが、お二人と出会えたのなら話は別です。ミヤちゃんとクオーネちゃんの話は俺達の耳にも届いていますから。『巨塔教』の聖女ミヤ、神官クオーネと。まぁ俺としては、ダンジョン街で冒険者をしていたあのミヤちゃんが『巨塔教』の聖女をしているなんて最初信じられませんでしたが」

「…………」

今度は彼の言葉にミヤが、『獣人連合国にまで自分が聖女だという話が広がっている』という事実を知り、微妙な表情を作る。

逆にクオーネは『聖女ミヤ』の知名度が広がっていることに喜びの微笑みを浮かべた。

彼がずっと下手に出ていたのも、冒険者ミヤ――が相手ではなく、聖女ミヤ、神官クオーネだからだったのだろう。

そんな2人を前にクマ種獣人が話を進める。

「イヤラシイ言い方ですが、お二人を保護して、匿い、無事を『巨塔の魔女』様にお知らせすれば恩が売れますよね。正直、『お二人のため』というより、獣人連合国が、『巨塔の魔女』様への恩を売るチャンスだから、お二人を匿い、無事だと伝える役を得たいと考えているんですよ」

「なるほど……それなら納得できます」

ミヤが羞恥心に蓋をして、冷静に頭を動かす。

下手に『困っている人を見過ごせない』などと建前を口にされるより、納得できる内容だった。

獣人連合国は一度『巨塔』側と争って酷い目にあっている。

そのため嘘や誤魔化しで自分達を捕らえて、逆に女神教や勇者に売り『巨塔』の怒りを買うようなマネはしないだろうと実感できた。

クマ種獣人が一度頷き、話を続ける。

「ですのでもし了承して頂けるのなら、お二人にはまずこのまま口が堅い宿屋があるのでそっちに移ってもらい身を潜めて頂きます。俺が上に報告して、お二人を獣人連合国の賓客として保護するよう掛け合います。ほぼ拒絶されることはありませんのでご安心を」

もし駄目でも、2人を捕らえることはしないし、彼自身が父親を説得して、最低でも支度金や護衛、各種通行書類などを手配すると確約した。

「受け入れ後、極秘裏に獣人連合国から『巨塔の魔女』へお二人の無事を伝えさせて頂ければと。お二人で『巨塔街』に向かうご予定でしょうが、恐らく女神教やその協力者は『巨塔街』に網を張っているはずです。下手に人種が近付くより、俺達獣人種の方がご連絡しやすいと思いますが、いかがでしょうか?」

「「…………」」

彼は自身の考えを隠さず、全て明かす。

それでもミヤ、クオーネは慎重に即決しない。

「ありがとうございます。ですが即決は難しいのでクオーネちゃんと暫く相談させて頂けませんか?」

「もちろんです。なら俺は部屋の外にいるので、話が決まったら声をかけてください。もちろんお断りなさっても、俺達が手を出すことはないんでご安心を。むしろ、宿や護衛、他にも要望があればいくらでも仰ってください。よほどのことでなければ飲む用意があるので」

クマ種獣人はミヤの『2人で一度相談したい』という望みを聞いて、笑顔で同意。

下手に食い下がらず素直に引き、断られても要望を飲む用意があるという好待遇まで伝える。

彼は言葉通り席を立ち、個室外へと出た。

部屋はミヤとクオーネの二人っきりとなる。

――約一時間後、2人は話し合いの結果、獣人連合国のお世話になることに決めた。どう考えても2人で『巨塔街』を目指すより、彼の提案通り、獣人種に救助をお願いした方が安全度が高いためだった。