軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17話 獣人連合国内部ので資金稼ぎ

「それじゃ行こうか、 クオーネ(ネネ) お姉ちゃん」

「……ええ、 ミヤ(ヤミ) 、行きましょう」

男装したミヤが、クオーネの手を引き、獣人連合国領内を移動し出す。

現在、2人は『女神教』の勇者達に命を狙われていた。

相手はレベル7000と伝説の武器を所持している。

そんな相手に対抗できるのは2人が知る限り『巨塔の魔女』しかいない。故にミヤ、クオーネは獣人連合国経由で『巨塔街』を目指しているのだ。

ただクオーネの顔色はあまり良くない。

旅の移動が乏しい資金から調達した野営道具のみというのもあるが、クオーネにとって獣人連合国に足を踏み入れること自体が精神的に辛いのだ。

彼女とミヤは、過去に獣人連合国に誘拐された。

お嬢様育ちのクオーネは初めての修羅場にトラウマを負わされ、無事に助けられた後も柄が悪くガタイの良い獣人ウルフ種、獣人タイガ種を前にすると体が強ばり、酷い場合は涙を浮かべ、顔色が悪くなり、吐き気を催す。

それほど心に深い傷を負っているのだ。

にもかかわらず、彼女は精神的に無理をしてでも獣人連合国を通り、『巨塔の魔女』に保護してもらうため移動していた。

勇者達に自身の命を狙われているというのもあるが、クオーネがミヤを『聖女』と持ち上げて『巨塔教』を立ち上げた。

結果、ミヤが『女神教』に敵視され、勇者達が殺害に動いている。その点に負い目を持ち、『ミヤだけでも助けたい』という気持ちがあるからこそ、二度と訪れないだろうと考えていた獣人連合国に再度、足を踏み入れているのだ。

「 クオーネ(ネネ) お姉ちゃん……」

「大丈夫よ、 ミヤ(ヤミ) 。ワタクシは大丈夫だから、一刻も早く『巨塔街』に着くためにも移動しましょう」

震える手でミヤが引く手を握り替えし、完全な空元気の笑顔を作る。

現実的にクオーネの 精神的苦痛(トラウマ) を無視すれば、獣人連合国ルートが一番だ。資金的にも今更他のルートを選択する余裕はない。

ミヤはクオーネの心意気を組み、覚悟を決めて獣人連合国ルートを移動した。

――クオーネのトラウマというマイナス要素もあったが、獣人連合国ルートを通ることで良かった点が早速ある。

その良い点は、資金稼ぎのモンスター退治だ。

「――魔力よ、顕現し炎を作り形をなせ、ファイアーアロー!」

『キャン!』

ブッシュウルフ×3匹が襲いかかってくるが、クオーネの攻撃魔術によってその内1匹をあっさりと倒す。

ブッシュウルフ達の出鼻を挫き連携を崩したため、脅威度が大幅に下がった。

当然、その隙をミヤが逃がすはずがない。

「――魔力よ、顕現し氷の刃となりて形をなせ、アイスソード!」

ミヤが一本のアイスソードを残ったブッシュウルフ×2匹に向けて飛翔させ、

「ブレイク!」

『キャイン!?』

そのままアイスソードが突撃してくると考えていたブッシュウルフ×2匹だったが、目の前でミヤの声にあわせて砕け散る。

砕けた氷の礫は細かく、鋭い破片へと変化し広範囲に散らばった。

砕けたことで殺傷能力は落ちたが、ブッシュウルフの脅威ともいえる足をズタズタに引き裂き、機動力を完全に奪ってしまう。

まともに走れないブッシュウルフなど、ただの的でしかない。

ミヤが既に作り終えていたアイスソードを飛翔させて、動けないブッシュウルフへと止めを刺していく。

戦闘は数分もせず終了する。

「 クオーネ(ネネ) お姉ちゃん、魔石と討伐証明の牙なんかを採取するから周囲の警戒を頼むね」

「ええ、解体を任せて申し訳ありませんが、お願いしますわね」

「大丈夫、僕は慣れているから」

ミヤが笑顔でナイフを取り出し、倒したブッシュウルフの解体を手早くおこなう。

本来なら、肉、毛皮なども売れるが、少女2人で持つには重すぎる。

そのため魔石と討伐証明の牙だけを狙って手早く解体しようというのだ。

資金調達をしつつ、移動速度を保つならこれがベストと言えた。

ミヤが解体しながら、他モンスターが襲ってこないか周囲を警戒するクオーネに話を振る。

「杖がないから威力は普段より低いけど、よく知っているモンスターが相手だから助かるよ。これなら問題なく川下りの船代ぐらいすぐに貯まりそうだね」

「ですわね。 シックス学園(あそこ) の草原と獣人連合国国境が地続きだから、恐らくモンスターの種類がそこまで変わらないのでしょうね」

「だろうね。もちろんもっと獣人連合国奥に進んだら、また出現するモンスターの傾向が変わるんだろうけど」

2人はシックス公国魔術学園生徒らしい感想を交わす。

クオーネの言葉通り、シックス公国周辺の草原に出てくるモンスターと、まだ国境を越えた程度のため、出てくるモンスターの種類が非常に似ていた。

2人とも薬草、キノコ、木の実採取で、それらモンスターを何度も相手にしている。お陰で非常に対処しやすい上、資金稼ぎも出来ていたのだ。

魔石と牙を取り終えると、血で他のモンスターが街道に近付かないようにクオーネが燃やす。

冒険者としての暗黙の了解だ。

ミヤは水筒の水で軽くナイフの血を拭い、手を洗う。

互いに出発の準備を終えると、

「それじゃ行こうか、 クオーネ(ネネ) お姉ちゃん」

「ええ、行きましょうか。次の町で魔石、牙を売り払ってちゃんと宿に泊まりたいですわ」

「あははは、僕もだよ」

一見すると非常に仲が良い姉弟の旅が続く。

☆ ☆ ☆

ミヤとクオーネの旅は順調に進んでいた。

2人とも魔術師で戦闘能力が高く、ミヤが冒険者、クオーネが商人の娘という経験を生かし、互いに支え合っているお陰でだ。

『巨塔街』へ辿り着き、身柄を保護してもらうという明確な 共通目的(ゴール) があるのも大きいだろう。

襲ってくるモンスターを倒し続けたお陰で、川下り用の資金も早々に貯めることが出来た。

エルフ女王国の港街など、有名な港ならともかく、獣人連合国の首都近くの河川などチェックする余裕はあちらにはない。

お陰で地上を徒歩、馬車などで時間をかけて移動することなく、ほぼ最速で獣人連合国の首都へと到着することが出来た。

2人は川下りの船から下り、今日泊まる宿を探しながら雑談を交わす。

「ようやく獣人連合国の首都に来られたね。あとは森を抜ける案内人を捜さないと……」

「 ミヤ(ヤミ) 、実際、どのように捜すつもりなんですの? まさか1人1人に尋ねるとかしませんわよね……」

クオーネは周囲に獣人種しかいないため、顔色が非常に悪い。

少しでもトラウマから意識を逸らすとため、ミヤへと質問しているのだ。

彼女もそれに気付いており、積極的に返答する。

「あははは、まさか。冒険者ギルドに依頼して、探してもらうんだよ。冒険者ギルドを挟めば、金銭問題とかで揉めることもないしね」

「ああ、その手がありましたわね。普段、魔石などを売り払うことにしか利用していないせいで、頭から抜けていましたわ」

実家商売にクオーネは関わっていないし、シックス公国魔術学園時代も薬草採取などの途中で襲いかかってきたモンスターを退治することはあっても、欲しい品物などを得るためクエストを出すということはしたことがない。

そのため冒険者ギルドの利用方法の一つが完全に頭から抜けていたのだ。

「まだお昼だけど、さっさと宿を取ってから、冒険者ギルドへ依頼をしに行こう。まずは依頼料がいくらになるか調べないとだけど」

「手持ちで済めばいいのですが……」

「その時は、この辺の周囲に出るモンスターの話を聞いて、2人で資金稼ぎをするしかないね」

ミヤ、クオーネは互いに手を繋ぎ、雑談しながら移動する。

「うん?」

そんな2人――具体的には男装しているミヤに注目する視線を向けた人物がいた。

その人物とは……。