軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13話 勇者達の決意

「こんな馬鹿なことがあっていいはずがありません!」

元女神教神官の『聖槍の勇者』コロルが怒りにまかせて叫ぶ。

他勇者達も強い不満を顔に出し、言葉にしなくても彼に同意しているのが丸わかりだった。

現在、勇者達がいる場所は女神教総本山にある一室だ。

では、彼らは何に対しこれほど怒りを露わにしているのか?

見せしめと、自分達が本気だと示すため『巨塔教』の聖女ミヤ、神官クオーネを『殺す』と宣言しておきながら、自分達勇者より圧倒的にレベルが低い魔術学園教授のドマスに出し抜かれ転移されて、2人を取り逃がした。

さらに横槍が入って、ドマスや警備員達を結果的に誰一人殺害することが出来なかった。

その事実に彼らは激怒しているのである。

「教会側の邪魔さえなければ、あんなゴミ連中、俺達勇者であり 超人種(ハイヒューマン) が天罰を下し、皆殺しにしてやったのに」

「……女神教とて我々の邪魔をしたのは本心でありません。聖鎧、その点だけは誤解ないように。他の皆さんもですよ」

ぷかぷかと元冒険者の『聖鎧の勇者』モザが、鎧の力で空中に浮きながら愚痴をこぼすと、激昂していたコロルが一転、冷静な言葉使いで告げてくる。

彼は両親共に女神教神官のため、勇者達に変な誤解を与えないように釘を刺したのだ。

実際、彼ら勇者が本気を出せば一瞬でドマスやシックス公国魔術学園の警備員達は殺害されていただろう。

圧倒的なレベル差に酔って彼らを悪戯にいたぶろうとした嗜虐心から、また各国大使が中立地帯であるシックス公国魔術学園にちょっかいを出したことを女神教に抗議した速度が早すぎて、ドマス達を殺害する前に止められてしまったのだ。

いくら女神教でも各国からの抗議は無視できなかった。

別に女神教も世界各国を相手に宗教戦争をしたい訳ではないので、大きな政治問題を起こしたくはない。『巨塔の魔女』以外を積極的に敵に回す心算はなかった。

故に勇者達に慌てて手を引かせたのである。

他にも場所が世界最先端学園である公国魔術学園だったことが幸いし、治癒術師や高価なポーションの大量投入でドマス達が一命を取り留める。

――実際は、その治癒に紛れてライト達が手を回した商人が『無限ガチャ』産の効果の高いポーションを紛れ込ませ使用させたからなのだが。

勇者達がそれに気付くことは永遠にない。

だが、ドマスや警備員達が助かったのは、勇者達にとっては非常に頭の痛い問題になっていた。

元商人の『聖印の勇者』アンレンが1人用ソファーに腰掛けながら、片手で頭を抑える。

「女神教の皆さんに対して 此方(こちら) が隔意を持つなどありえませんよ、我々は女神様の元に集う仲間なのだから。問題は…… 此方(こちら) が剣を抜いて誰一人殺せなかったことですよ。これは非常に不味い……」

「? どう不味いんだい?」

貧農出身の『聖剣の勇者』ニックは何が問題なのか分からす、自分の頭で考えることなく問う。

アンレンは呆れた顔を作りそうになるのを堪えて、頭の悪いニックにも分かるよう説明する。

「我々がわざわざ学園に乗り込み、『女神様に選ばれた勇者』の名前を出して剣を抜いたにもかかわらず、邪教の聖女や神官どころか、低レベルの教師や警備員すら1人も殺害できなかった。これでは『女神の勇者』である我々は『腰抜け、格下も殺せない無能』扱いされてもおかしくないんですよ。最悪、我々が偽者勇者扱いされて、女神様からの神託すら疑われかねないんです。これは非常に不味い」

つまり、彼らの掲げる大義名分が成り立たなくなる可能性すらあるのだ。

ようやく事態の重さを理解したニックが、提言する。

「なら今すぐあの教師と警備員達を殺そう。今度こそいたぶらず、速攻首を刎ねれば一瞬で片がつく」

「今更再び魔術学園に向かって、あんな小物達を殺しても意味ありません。極論、彼らは我々の妨害はしたが、『 巨塔教(邪教) 』とは関係ない人物達なのだから。だが逆に『 巨塔教(邪教) を潰す』と宣言した以上、邪教の聖女や神官は是が非でも殺さないと我々のメンツは潰れます」

伝説の武器を抜いて勇者達全員が揃って『 巨塔教(邪教) の聖女を殺す』と宣言した以上、『巨塔の魔女』同様にミヤとクオーネは絶対に殺さなければならない抹殺対象となる。

もし彼女達を殺害できなければ勇者や女神教の権威に傷がついてしまう。

そんなことは彼らのプライド的にも絶対に許されなかった。

「なら今すぐ邪教の聖女と神官を殺せばいいんだね」

「簡単に言いますが……問題はその2人がどこにいるか分からない点ですね。高価な転移マジックアイテムをあんな子供2人に使うとは……。これだから物の価値を分かっていない教師というのは……」

ニックの軽い口調に、元商人のアンレンは頭が痛そうに返答した。

シックス公国魔術学園教授のドマスがミヤとクオーネを助けるため、転移マジックアイテムを使用した。

お陰で勇者達は2人がどこに転移したのか一切分からず、殺そうにもその足取りは依然として掴めていない。

「既にあの2人には女神教が懸賞金をかけて情報を募っていますよ。もちろん裏に手を回してもいます」

『聖槍の勇者』コロルの言葉にモザが口笛を鳴らす。

アンレンが話を続ける。

「時間をかければ2人の足取りは掴めるでしょう。ですが、あまり時間を掛けすぎても、我々が腑抜けという評判が世間に回ってしまうので不味いんですよね……。できれば早急に発見して始末を付けたい所ですが……」

「でもあの2人が向かう先って『巨塔街』一本でしょ? 『巨塔の魔女』に頼る以外、俺達に対抗できる存在なんていないし」

「一応他にも候補が4つあります」

モザの空中にぷかぷか浮かびながらの指摘に、アンレンが4本指を立てて返答した。

「『人種王国』、『奈落』、『聖女ミヤ実家』、『神官クオーネ実家』ですね」

『巨塔街』は、2人が『巨塔の魔女』に直接保護を求めに向かった場合。

『人種王国』は、『巨塔の魔女』と深い繋がりがあるため、保護を求め、人種王国経由で彼女に連絡を取る可能性がある。

『奈落』は、もしかしたらレベルだが、一応候補には入れている。女神の神託で『奈落』最下層に『巨塔の魔女』が存在するらしいが、ミヤとクオーネが2人だけで地下深くに行くのは不可能だ。もしかしたら、『巨塔教』の聖女、神官ということで『奈落』に辿り着ければ『巨塔の魔女』と連絡を取る方法があるのかもしれないが。

『聖女ミヤ実家』、『神官クオーネ実家』は身を潜めて、隠れてやり過ごそうとする場合だ。『巨塔の魔女』への連絡は別に彼女達でやらなくてもいいのだから。別の人間経由で魔女に保護を求めてもおかしくない。

「……問題は『彼女達がどれを選択したのか』ですね」

アンレンは頭が痛そうな声で告げる。

モザやコロルもどこに2人が訪ねたか分からず、難しい唸り声を上げるが……唯一、ニックがあっけらかんと暴論を叩きつける。

「簡単じゃないか。ならぼく達で手分けをしてその5つ全部を潰せばいいんだよ」

彼の答えに他3人の勇者達は目を剥くが、『確かに』と納得の態度を取る。

「確かに悩む必要はありませんな。邪教の聖女や神官に与する者達など、滅びる方が女神様のためですから」

「だね。俺達なら例え1人でも、あのガキ2人を始末するどころか、村や街、国家の一つや二つ潰すぐらい簡単だしね」

「なら効率を考えて、手分けをしてそれぞれ向かって邪教の聖女達が逃げ込んでいないか確認しあいましょうか」

『聖槍の勇者』、『聖鎧の勇者』、『聖印の勇者』が賛同し、互いにアイデアを出していく。

『奈落』攻略のため、ダンジョン探査の専門家冒険者達を探し、依頼をしている最中だ。

その待ち時間の暇潰しに、『巨塔街』、『人種王国』、『ミヤ実家』、『クオーネ実家』をそれぞれが担当し、場合によって潰すことになる。

仮にこの4つの候補地に2人が居なければ、向かった先は恐らく『奈落』しかない。

その場合、シックス公国女神教本部に一度、再集合して『奈落』最下層を目指し、『巨塔の魔女』共々始末すればいい。

非常に効率が良い話である。

この決定に勇者達全員、乗り気になり賛同した。

そして彼らは『巨塔街』、『人種王国』、『ミヤ実家』、『クオーネ実家』へどの勇者が向かうのか、場合によってはどう滅ぼすのかを楽しげに話し合ったのだった。