軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コミックス3巻発売毎日更新短編 ゴールドの素顔?

エルフ女王国の国境近くにドワーフ王国の街がある。

なぜこんな国境近くに街があるのかと言えば、単純にこの場所に人々にとって有用なダンジョンが出来たからだ。

気付けば人が集まり、街を形作ったのである。

そしてその結果、あまりにダンジョンによって作られた街と国境線が近すぎたせいで、ドワーフ王国とエルフ女王国が昔から揉めていた。

そんな街の飲み屋でゴールドは地上で知り合った人種冒険者達と酒を飲む。

「ちくしょう! ネムムさんに告白したけど振られちまった!」

「いやむしろ、オマエのようなむさい万年、 E級(半人前) 冒険者がどうしてあの高嶺の花のネムムさんと付き合えると思ったんだよ」

『UR アサシンブレイド ネムム レベル5000』は、ライトの冒険者仲間としてゴールド同様、地上で冒険者として活動していた。

そんな彼女の容姿は地上では飛び抜けて高い。

お陰で告白された数は数えられないほどだが、即決で断り切り捨てるのが常だ。

ネムムの機嫌が悪い時は睨みつけたり、相手がしつこく食い下がり体に触れてこようとした際は鉄拳制裁も厭わなかった。

基本的に彼女は自身に言い寄って来る男性に対して非常に手厳しいのだ。

それでもダーク(地上で活動するライトの偽名)に向ける優しい表情、愛おしげな横顔、献身的な態度を目にした冒険者男性が『あんなに子供に優しいなら自分でもいけるんじゃないか?』、『子供好きの良い子なんだろうな』、『地上に舞い降りた女神だ!』と惚れて言い寄ってくるのだ。

結果、ネムムに言い寄る冒険者は後を絶たない。

一方でダークを除き、唯一、ネムムと肩を並べて行動するゴールドは……本来なら男性のため目の敵にされてもおかしくなかったが、ほぼそんなことはなかった。

ではなぜか?

単純にゴールドが話しやすい性格で、コミュニケーション能力が高く、基本種族や老若男女関係なく、仲良くなるからだ。

他の理由として――。

「ゴールドさんは良いですね。ネムムさんと一緒に居られて」

「自分、雑用でもなんでもするんで、パーティーに入れてくださいよぉ~」

「断る。今の連携を崩したくないからな!」

ゴールドが『奈落』最下層の酒とは比べ物にならないのを口にしつつも、陽気な雰囲気で要望を却下する。

ゴールドが所属する『黒の道化師』パーティーには秘密が多すぎて、他の誰かを入団させる訳にはいかない。

ゴールドは木製ジョッキを片手に呆れた声で告げる。

「第一、それほどネムムに惚れるか? 個人的にはもっと年上で、色気があってゴールドが似合う女性の方が良いと思うのだが……」

ゴールドが嫉妬心を抱かれない他の理由として、『ネムムが好みではない』と公言しているからだ。

嘘偽りではなく、口調や具体的な要望から、『本当に好みではないんだな』と納得されていた。

彼の好みを理解できない冒険者達が、口では否定せず、彼を持ち上げる話題を振る。

「好みは人それぞれですからね。でも、ゴールドさんは稼ぎもあるし、腕っ節もいいですし、面倒見もいいから女性冒険者達の間では結構、狙って居る 娘(こ) 達がいるんですよ。マジよりどりみどりですよ?」

「おれも聞いたことあるわ、それ。あーでも……いつも素顔を隠しているから正体が分からなくて怖いから踏み込めないとも聞いたかな」

「? 別に正体を隠しているつもりはないぞ。騎士として『常在戦場』の心構えで、フルフェイスヘルムを被っているだけなのだが……」

『予想外の反応だな』と言いたげにゴールドは顎を撫でた。

周囲にそんな風な感想を抱かれているとは、彼の中では思っていなかったらしい。

ゴールドが語る。

「腕や足ならともかく、頭部のダメージは意識混濁、失神、障害を引き起こしかねん。最悪の場合、即死の可能性すらあるからな」

「だから、不意打ちを警戒していつも被っているんですか?」

「やべぇ~マジゴールドさん、『常在戦場』じゃないですか。騎士様の鏡っすよ」

「ははははははは! 黄金の騎士として当然の嗜みだな!」

ゴールドは彼らの言葉に頷き機嫌良さげに笑い声を上げた。

『UR レベル5000 黄金の騎士 ゴールド』で、防御特化の彼のフェイスヘルム無し頭部を攻撃して、ダメージを与えられる存在が地上にどれだけいるのか?

正確な数は分からないが、非常に少ないのは確かだ。

上機嫌のゴールドが、フェイスヘルムに手をかける。

「我輩の顔に興味があるのなら、折角だからこの場で外してやろうか?」

「マジッスか!」

「お願いしますよ、ゴールドさん! 他の奴らに自慢できますから」

「だよな! ゴールドさんの素顔を見たって知ったら、女冒険者に囲まれておれでもワンチャン彼女が出来る可能性があるかもですし!」

「わははははは! その可能性は低いと思うが、折角だから見せて進ぜよう!」

ゴールドはツッコミを入れつつ、フェイスヘルムを外すため両手を顔に伸ばすが――。

「!?」

突然ゴールドはテーブルを掴むと、まるで雑草でも引っこ抜く気軽さで、持ち上げ椅子から立ち上がり移動する。

飲んでいた冒険者は突然の行動に驚愕した。

テーブルは分厚い木の丸板で、上には酒、ツマミ、空き皿があるのだ。決してあんな空き皿を運ぶような気軽さで動かせる物ではない。

もし自分達が同じ事をおこなおうとしたら、ゴールド以外が全員で協力して、声を合わせて動かす必要があるだろう。

突然のゴールドの行動に驚いていると、答えがすぐ脇から転がり倒れてくる。

「!?」

「クソが! よくもやってくれたな!」

「黙れ! この間男が!」

「間男はオマエだろうが!」

ゴールドがテーブルを急遽掴み移動したのとほぼ同時に、冒険者男性が転がり倒れてきた。

もしあのまま何もしなければテーブルは倒れ、折角の酒やツマミは床にぶちまけられていただろう。

ゴールドは倒れてくる冒険者男性にいち早く気付き、テーブルを動かしたのだ。

倒れこんできた男は頭に血が昇っていたため、謝罪も口にせず再度争っている相手に突撃する。

ゴールドはテーブルを元に戻しつつ、

「危なかったな。大将が作ってくれたツマミと女将が入れてくれた酒が無駄になるところだったぞ」

「ゴールドさん、マジ凄いッスね。咄嗟にクソ重いこのテーブルを持ち上げるなんて」

「これぐらい軽い物だぞ。なんせ我輩は黄金の騎士ゴールドだからな!」

ドヤ顔でゴールドが返答する。

彼らが会話を交わしている間にも1人の人種女性冒険者を巡り、同種族の男性冒険者×2名が殴り合う。

女性冒険者は『私のために争わないで!』と言いつつも、ある意味自分に酔って本気で止めようとはしていない。

気付けば『どちらが勝つか』で賭けが始まっていた。

「おれはあっちの冒険者だ!」

「いや、勝つのはあっちの男だろ!」

「自分はどちらも女に振られるに賭けるぞ!」

「なら我輩は最終的に三人が仲良くなるのに賭けるぞ!」

もちろんゴールドも悪ふざけで賭け騒ぎに乗る。

しかも大穴一点買いだ。

おおよそ賭け終わると結果が出る。

結果は――ゴールドの賭けた『男性冒険者×2、女性冒険者の三人で仲が良くなる』だった。

男冒険者達が互いに殴り合い認め合って、女性冒険者も2人のどちらも選べず最終的にそういった形に落ち着いた。

大穴を当てたお陰で結構な金額がゴールドの手元に残った。

ゴールドはこのあぶく銭を懐にしまわずに、店に声をかける。

「大将、女将よ! この金で酒場にいる全員に飲ませて、喰わせてくれ! 皆の者! 今夜の支払いは我輩が払う! 今宵の出来事を祝福し飲もうではないか!」

『オオオオオォォォォッ!』

ゴールドの太っ腹な大盤振る舞いに店にいた客達が歓声をあげる。

ゴールドは宣言通り、当てた大穴のお金を全て使いその場に居る客全員に振る舞い、盛大に盛り上がり酒を酌み交わした。

お陰でゴールドの『素顔を拝む』という話をしていたことを一緒に飲んでいた冒険者達も忘れて、非常に楽しそうに酒盛りしだす。

ゴールド本人も楽しそうに知らない冒険者と酒を酌み交わした。

いつかゴールドの素顔を拝むことが出来るだろうか?