軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9話 返答

勇者達がステータスを見せびらかすように表示する。

全員がレベル7000。

一般的に種の成長限界はおおよそ人種でレベル100、獣人種で200~300、ドワーフ種が500、魔人種が300~1000、エルフ種と 竜人種(ドラゴニュート) が1000と言われている。

あくまで常識的な目安で、絶対ではないが。

にもかかわらず勇者達は人種の成長限界を圧倒的に超えて、エルフ種、竜人種の成長限界をも大幅に上回っているのだ。

さらに『聖鎧の勇者』、『聖印の勇者』が見た目で分かり易いが、彼らは女神から伝説の武器を与えられている。

ドマスが魔人種でシックス公国魔術学園の教師とはいえ、レベル7000で伝説の武器を持つ勇者×4人を相手にするのは無理を超えて無謀である。

まず勝利することは出来ないし、その片手一本ですら相手にならないだろう。

それを理解しているため、猫がネズミをいたぶるようにステータスを表示した勇者達はニヤニヤとドマス達の反応を楽しむように、見下した視線を向ける。

圧倒的な戦力差に、警備員達が青い顔で勇者達から1歩、2歩と後退った。

彼らの自分達を畏怖するような態度に、勇者達は自尊心を満たした顔をする。

元商人の『聖印の勇者』アンレンが主導権を握ったやり手の商人のような顔で、ミヤ達の身柄を要求する。

「 此方(こちら) と劣等種たるあなた方との差は理解できましたよね。痛い目に遭いたくなければ大人しく『 巨塔教(邪教) 』の聖女と神官を引き渡してください」

「ただ引き渡すだけでは問題ありですよ。ぼく達、勇者で種を超えた存在である 超人種(ハイヒューマン) に無礼な態度と舐めた口を訊いたんだから、ちゃんと謝罪をしてもらわないと。けれど上位者として下位存在に対して度量を見せるため、命までは取らないよ。土下座して床に額を擦りつけて、心から謝罪すれば許してあげるよ」

元農村出身者の若者である『聖剣の勇者』ニックが『当然の要求』という表情で、ドマス、警備員達の土下座謝罪も要求してきた。

他勇者も彼の要求を止めず、ニヤニヤと笑みを浮かべるだけだった。

勇者達の要求にミヤ、クオーネが明らかに顔色を青くする。

このまま勇者達に身柄を引き渡されたら、自分達は殺害される。さらにすぐに殺害されるだけならマシで、異端審問として拷問にかけられ、女性の尊厳を汚すことすら平気でやりかねない。

そんな狂気が勇者×4人からは漂っていた。

「…………」

ドマスは黙り込み目を閉じ、軽く溜息を漏らす。

彼は瞼を開くと、真っ直ぐ勇者達に向き直り断言する。

「断る」

『…………』

今度は勇者達が黙り込んでしまった。

勇者達はドマスの返答の意味が理解できず、全員、頭上に『?』を浮かべる。

時間が経ち、少しずつ彼の返答を理解すると、ニヤニヤと上から目線で見下していた表情を驚愕の色に変えた。

「はぁ、はぁ!? あ、貴方は状況を理解しているんですか? 此方(こちら) はレベル7000で、伝説の武器を持ち、女神様のお言葉という大義名分もあるのに逆らおうとするなんて!」

『聖印の勇者』アンレンが勇者達の驚きを代表して叫ぶ。

彼の言葉にドマスは淡々と返答する。

「先程も告げたが、ミヤ君、クオーネ君は学園の生徒だ。生徒を売り渡す教師などいるはずがない」

『それに――』と彼はワンテンポ溜めを作った。

「教師以前に、娘とほぼ変わらない女子供を殺害されると理解していながら引き渡すほど私は情けない男ではないよ。君達はどうかね?」

ドマスが勇者達を止めようとした警備員達にどこか愉快気な視線を向けた。

その視線に気付いた警備員達が、勇者達のレベルに驚いていた表情を、僅かな時間で覚悟を決めた意地を張った男臭い笑顔に変える。

「もちろん、自分達の職責は不審者の排除、生徒達の安全を守ることです」

「なにより先生の仰る通り、ここで女子供を売り渡すほど男は捨てちゃいませんから」

「むしろ、ここで素直に彼女達を引き渡したことを妻に知られたら、何を言われるか。下手すら三行半を告げられ捨てられますよ。なので元々逃げ道なんてありやせんや」

絶対に勝てないと頭では理解しながら、警備員達は引かずむしろ抵抗する意思を見せ愉快そうに笑う。

この光景をドマス自身、誇らしげに笑い眺め、勇者達は『理解できない』と言いたげな表情を作っていた。

ドマスが改めて勇者達に向き直る。

「シックス公国魔術学園は例え女神教でも、他国、個人にかかわらず、決して権力には屈しない。どの権力の影響も受けない中立地帯だ」

ドマスが改めて告げる。

「もう一度言おう。出て行きたまえ。ここは君達のような無頼漢が足を踏み入れていい場所ではない。ここは知の研鑽を積む学舎なのだから」

『……ッ!』

勇者達はようやく自分達が馬鹿にされていることに気付く。

女神から神託を受け、『女神教』の名前を出し、勇者と名乗っている以上、ここまでされて引き下がる選択肢は彼らには無い。

「こ、この不届き者共が! 低レベルの魔人種の分際で我々女神様に選ばれた勇者、選ばれし『 超人種(ハイヒューマン) 』に逆らうなどなんたる不敬! 死を持って詫びよ!」

女神教の神父でもある『聖槍の勇者』コロルは女神を軽んじられて血管が切れそうな勢いでブチ切れ、アイテムボックスから赤い槍を取り出す。

穂先から終わりまで赤い槍だ。

単純に赤いだけではなく、見ているだけで物理的に熱を感じるほど赤い。

「こいつら、本気でぼく達と戦えると思っているのかな?」

「身の程を弁えていないだけでしょ」

「もしくは遠回しに自殺したい愚か者なのでしょうね」

コロルに続いて、『聖剣の勇者』ニック、『聖鎧の勇者』モザ、『聖印の勇者』アンレンが攻撃態勢を取る。

勇者達を前にドマス、警備員達は一歩も引かない。

革鎧に、触れると相手を雷で失神させることが出来る警棒を取り出し構える。

ドマスもミヤとクオーネを守る位置に立ちつつ、懐からマジックアイテムを取り出す。

「知らないのかね。男には負けると分かっていても戦う時があるのだよ。『今がその時』というだけだ」

――彼らの、絶対に勝てない戦いが始まる。