作品タイトル不明
8話 勇者達の要求
ドカドカと部外者達――自称、女神に選ばれた勇者達が、無遠慮に『地下魔術実験場』へと足を踏み入れる。
魔術学園の教授であるドマスは彼らの態度に眉根を潜めた。
まず勇者達が制止する警備員達を力尽くで押しのけ、『外部見学者腕輪』をつけていないことから、学園に許可を取らず無断に侵入している事。
さらにこれからドマスが発見した実験を街外へ出ておこなうのを邪魔しているため、彼は眉根を潜めたのだ。
ドマスはシックス公国魔術学園教師として彼らに注意する。
「君達は『外部見学者腕輪』を身に着けていない上、警備員達の様子から、部外者のようだが……。シックス公国学園は部外者の無断侵入を許していない。さらに見たところまだ若い人種のようだ。『地下魔術実験場』の扉は私が直しておこう。これ以上、大事になる前にさっさと学園外に立ち去りたまえ」
「黙れ! 低レベルの魔人種如きが! 我々はこの世界を創造してくださった女神様から直接力を授かった勇者ぞ! ただの人種ではない! 種の枠を超えた 超人種(ハイヒューマン) だ! 我々の聖なる行動を咎めるとは、なんたる不敬!」
下手に大事になって自身の実験を邪魔されたくなかったドマスが穏便な提案をするが、勇者達の中で最も背が高い元聖職者の『聖槍の勇者』コロルが、彼の台詞に激昂し大上段で叫ぶ。
ミヤ、クオーネ、ドマス、警備員達は『自分達は 超人種(ハイヒューマン) って……一体何を言っているんだ』といった表情を作るが、他勇者は『彼の発言は正しい』という態度を取り続けている。
どうやら勇者達の間では、女神に選ばれた自分達は既存の六種を超えた 超人種(ハイヒューマン) ということになっているようだ。
あまり関わり続けたい相手ではないことを理解したドマスは、それ以上の問答を避けてなぜ彼らがここに来たのかを聞いて、さっさと用件を片づけてお帰り願おうと頭を切り換える。
「で、その君達はいったい何のために学園に? 入学をしたいというなら受け付けに試験を希望すればいい。マジックアイテムの購入、製作依頼なら街にある店を訪ねるべきだと思うが」
「ふん! そんな低俗な理由で我々がこんな下賎の場に来たわけではない」
『聖槍の勇者』コロルはあからさまにドマス達を見下し、鼻で笑う。
そして、わざわざ『下賎』と下に見るシックス公国魔術学園に勇者全員で足を運んだ理由を告げる。
コロルがドマスの側に居るミヤ、クオーネを指さす。
「赤髪に小柄、金髪に巻き毛の二人組。貴様達が『巨塔教』の聖女ミヤと神官クオーネだな。その2人の身柄を引き渡せ!」
「「!?」」
ミヤとクオーネは自称女神に選ばれた勇者達が姿を現した時点で、嫌な予感を抱いていた。
女神教が『巨塔の魔女』を魔王認定。勇者による討伐を宣言したのだ。
クオーネが一応警戒し、街の外に出てポーション製作の薬草を摘むことを渋っていた。ミヤ的には何かの間違い、また自分達が狙われるとは考えておらず危険を軽視していた。
何より街中に居て北区にある女神教に近付かなければ問題ないと考えていたのだが……。
まさか直接シックス公国魔術学園に乗り込んでくるとは想定していなかった。
怯えを見せるミヤとクオーネに対して、勇者×4名はニヤニヤと嗜虐的な笑みを浮かべる。
彼らの視線を遮るようにドマスが2人の前に立つ。
「ミヤ君とクオーネ君を捕らえるために、各国から中立であるシックス公国魔術学園に乗り込んできたのかね。まったく理解に苦しむ……。それで彼女達を引き渡したら、どうするつもりかな?」
「ぷっ、嘘、分かんないの? これで世界最高の魔術師学園の教師とか。ちょっと低レベル過ぎない?」
「聖鎧、所詮、外を知らず学園内部でごちゃごちゃやっている教師に常識を求めてもしかたありませんよ」
空中に浮き続けている背丈の低い元冒険者の『聖鎧の勇者』モザが、あからさまに馬鹿にした台詞を漏らす。
元商人の『聖印の勇者』アンレンがモザの言葉に反応し、嫌味ったらしい台詞を告げ肩をすくませる。
馬鹿にされている態度など気にせず、ドマスは返答を待つ。
『聖槍の勇者』コロルが代表して、告げる。
「そこの2人は『巨塔の魔女』を女神様と同列の神と崇める邪教の聖女と神官。当然、我々勇者の力を持って神罰を与える」
「……つまり、2人を殺害すると?」
「然り。邪教を裁く事こそ女神に選ばれた勇者の勤め! そやつらの首を女神様に捧げる贄とし『巨塔の魔女』、そして世界各国に我々勇者が本気で魔王を討つと知らしめるのだ!」
「…………」
コロルの声にはマグマより熱い熱意が込められていた。
嘘偽り無くミヤとクオーネを殺害し、その死を持って『巨塔の魔女』、そして世界各国に本気だとアピールすると告げていた。
ドマスが返答に目を細める。
そこには愚かな者を見るような、哀れみが混じっていた。
彼は溜息を漏らし、首を振る。
「馬鹿馬鹿しい。女神教が『巨塔の魔女』を魔王と認定したと耳にはしていたが、だからと言って彼女達を殺害してどうなるというのだ。それで本気で『巨塔の魔女』や世界に影響を与えられると思っているのかね?」
『第一に』とドマスは続ける。
「彼女達は私の生徒だ。引き渡されば殺害されると知って引き渡す教師が居ると本気で思っているのかね?」
「そっちこそ正気なの? ぼく達は女神に選ばれた勇者だよ? 物語に出てくる伝説の武器を持って、レベル7000もある。いくら魔人種でも凡人がぼく達相手に勝てると思っているの?」
極々自然な態度で『聖剣の勇者』ニックが尋ねる。
他勇者も危険な臭いを漂わせているが、彼が一番危ない空気を醸しだしていた。
ニックは自身の言葉を証明するようにステータスを表示。
他勇者達も一斉にステータスを表示する。
『!?』
ミヤ、クオーネ、警備員達全員がそのステータスに驚愕する。
レベル7000。
子供時代、両親などから聞かされた物語に登場する勇者の如く、神話的、規格外のレベルだったのだ。