軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 雇用創造2

シリカは店で働く少女ミルクとの食事を終えた後、お湯で体を拭き、自室のベッドに横になる。

「新しい、女子供のためのお仕事か……」

シリカはベッドで横になりながら、『巨塔の魔女』から頼まれた新しい雇用についてアイデアを出す。

(女子供は力がないから、男性達が今やっている開拓仕事はできないし……。計算や読み書きが出来るかも怪しいんだよね)

『巨塔の魔女』曰く、人種王国首都から引き取るのは孤児と元人種奴隷達だ。

シリカの経験上、どちらも商売に必要な礼儀作法、読み書き、計算が出来ない。

(全員に仕事を作れって訳じゃなく。読み書きができる、または学ばせた後、出来る仕事を作ればいいんだろうけど……)

言うは易く行うは難し。

たとえば店番、ウェイトレス、掃除・洗濯代行などは良いだろうが……。

その席は既に埋まっている。

シリカが任されている店舗でも後1人ぐらいなら受け入れられるが、それ以上は難しい。

他店舗はもっと厳しいだろう。

『巨塔の魔女』の指示だからと、無理矢理雇うよう強制しては意味がない。

(温泉施設に作った販売店のようなのが新しく作れたら、一番話が早いんだけど……)

シリカのアイデアで温泉施設周辺に湧き出た温泉で作った卵、湯気で作った料理、健康飲料として温泉の湯が売られている。

他にも冷えた飲料水、温泉を使わず作った料理、小物の販売などをおこなっていた。

お陰で大勢の女子供が無理せず働ける仕事環境を作り出すことに成功している。

(でも、今更お店を作るほどの余裕はないしな……)

既にある程度の人数の女子供が無理せず働ける仕事環境を作り出したため、温泉関連についてはそれ以上参加させることが出来ない。

『巨塔の魔女』もそれを理解しているから、シリカに新しいアイデアを求めたのだ。

シリカがベッドの上でゴロゴロ転がる。

(男手なら『 巨塔街(きょとうがい) 』外縁部の 拡張工事(公共事業) に投入すれば楽なのに)

以前は拡張優先で妖精メイドとドラゴンが中心でおこなっていたが、最近は長期的公共事業の意味合いが強くなってきた。

なので妖精メイドが監督し、人種男性が中心となって拡張作業をおこなっている。

ドラゴンなどは、木々の根を引っこ抜いたり、埋まった岩の取り出し、外敵警戒などにしか使われていない。

重機兼ボディーガードである。

(いっそ外縁部の周辺にお店を作るとか? でも外縁部はどんどん先に進むから、進むたびにお店を建てる必要があるから無理だけど……)

自身の意見に苦笑したシリカだったが、

「……あっ! そうか、そうだよね。簡単なことだよ!」

お陰でアイデアが閃く。

彼女はベッドの上に行儀悪く座り、自身のアイデアを精査する。

コスト、利益、実際に女子供でも出来る仕事か、その場合の安全性、需要など――。

彼女は暫く眠るのを忘れて暗い部屋で1人、考え込んだ。

☆ ☆ ☆

数日後、シリカが妖精メイドを経由して『巨塔の魔女』にアイデアを上申。

その際、必要な道具、必要経費、需要、将来の展開などが綴られた詳細な書類も一緒に提出する。

シリカのアイデア&書類を『巨塔の魔女』は高く評価。

すぐに必要予算を割り当て、人員も配置した。

ではシリカが思い付いた商売のアイデアとは?

――約1ヶ月後。

「今日はここまでに致しましょう」

「了解です!」

「お疲れ様でした!」

「おつかれっした!」

午後、夕方前に外縁部の拡張仕事が監督役の妖精メイドの合図で終わる。

暗くなってから終わると安全性に問題があるため、日があるうちに終わるのだ。

外縁部拡張仕事に携わる男達が、首から提げているタオル等で汗を拭いながら、仕事道具を片づけつつ、仲間内で帰宅準備をする。

そんな男達をターゲットにリアカーを引いた若い女性、子供達が待ち構えていた。

リアカーには冷たい飲料水、食料、甘味、新品タオル、石鹸、お風呂セットなど、商品が詰め込まれていた。

片づけを終えた男達が、妖精メイドから日当を受け取ると、わらわらと集まり、商品を購入していく。

「冷たい果実水を頼む。汗を掻きすぎて喉がからからだ」

「おれはこの肉包みを。腹が減って街まで持たないぜ」

「ちょうど石鹸が切れていたから、こいつを頼む。帰りに温泉に入ってさっぱりしたいからな」

「ありがとうございます!」

少女達が笑顔でせっせと仕事に励む。

その姿を前に一部男性が、少女達に今晩の予定を尋ね出す。

妖精メイド達に手を出すのは御法度だが、彼女達は別だ。

むしろ、結婚を推奨している。

もちろん、嫌がっているのに無理矢理迫った場合、妖精メイド達から注意が飛ぶ。

あくまで主導権を持っているのは女性側だ。

男性達もそれを理解しているため、お気に入りの女性、少女などにアプローチする。

(どうやら上手く行きそうでよかった……)

アイデアを出したシリカが、休日を利用して現場視察に顔を出す。

彼女が出したアイデアは、リアカーを使った『移動販売所』だ。

シリカの両親は元行商人で彼女は街などに入る際、品物のチェック(違法品を持ち込もうとしていないか)、身分確認などを何度も受けた。

当然、入場に時間がかかり、行列が出来る。

その行列を目当てに女性、時には自分と歳が変わらない少女が首から箱を提げて、商品を売り歩いていたのだ。

所謂『売り子』である。

『外縁部に 男性達(需要) があり、店を構える訳にはいかないのなら、直接移動して売りにいけばいい』と思い付いたのである。

最初は個人個人、首から品物を乗せた箱を提げてた売り子スタイルを想定したがすぐに却下。

街から外縁部まで、販売をしに行くには体力を使い過ぎてしまう。

また持ち運べる量が少ないのと、金銭トラブルが起きても面白くない。

なので移動が楽で、大量に持ち運べて、集団で接客できるようリアカーを改造する案を思い付く。

シリカの狙い通り、一つのリアカー販売に10人前後の女性、少女達を配置することが出来る。

外縁部の 拡張工事(公共事業) の男性達は数多く働いており、移動先は多数あった。

お陰で売り上げ、評判も良いため、むしろ数が足りないほどだ。

何より若い男女の出会いの場としても狙い通り機能している。

まだ『移動販売所で働いていたのを切っ掛けに結婚しました』という報告は無いが、評判を聞く限りそう遠い未来でもない。

( 拡張工事(公共事業) が続く限り、移動販売所の仕事もなくならなそうだし、『巨塔の魔女』様の要求に応えられて本当に良かったよ)

『巨塔の魔女』――『新しい力の無い女性や子供が出来る仕事のアイデアをお出して欲しいですの』には十分答えられたはずだ。

シリカは肩の荷が下りたのを実感し、軽い足取りで店舗へと帰宅するのだった。

☆ ☆ ☆

――後日。

シリカと従業員ミルクが朝、店舗の準備をしていると妖精メイドの1人が訪ねてきた。

外で看板を出していたミルクが、慌てて内部で棚に商品を並べているシリカへと声をかける。

「し、シリカさん! 妖精メイドさまがシリカさんにお話があるとお越しになりました!」

「!? すぐに入って頂いて!」

妖精メイドがわざわざ訪ねてくるとは……。

シリカはすぐに自分が出したアイデアの件だと察する。

ミルクが彼女の返事を聞くと、外で待たせている妖精メイドを店内へと案内。

妖精メイドは特に気分を害した様子もなく、いつも通り女性でも惚れそうな浮世離れした美しさでシリカに声をかける。

「お忙しい所、失礼致します。『巨塔の魔女』様からのお言葉を預かって来ましたので訪ねさせて頂きました」

「は、はい! あ、ありがとうございます!」

シリカが緊張気味に返答。

ミルクも同様に緊張し、妖精メイドの続きを待つ。

妖精メイドはいつものように、優しげな微笑みを浮かべ告げる。

「『巨塔の魔女』様は、シリカ様のアイデアに大変ご満足しております。後日、感謝のお言葉を直接伝えたいのと、金一封を、そして――もし困ったことがあったら 巨塔の魔女(自分) に声をかけて欲しいとのことです。私達に声をかけて頂ければ、『巨塔の魔女』様のお耳に入るよう周知させておきますので。何かありましたら、どうぞお気軽にお声をおかけください」

「………………はい、あ、ありがとうございます」

その後、シリカが都合を聞き、『巨塔の魔女』と直接会ってお礼を告げてもらえるのと、金一封などについて話し合い調整する。

話し合いが終わると、妖精メイドが一礼して店を後にした。

妖精メイドが店を出た後、今まで黙っていたミルクが喜色満面、尊敬の念を込めた表情でシリカに賛辞を送る。

「す、凄いですよ、シリカさん! 『巨塔の魔女』様に直接お礼を告げられるだけじゃなく、直接言葉をお耳に入れる権利を得るなんて! もう本当にあたし、尊敬しちゃいますよ!」

「どうしてこうなったの……!?」

ミルクの言葉に、シリカは両手で顔を押さえ意味が分からないと台詞を口にした。

『巨塔の魔女』エリーからすれば『もし困ったことがあったら 巨塔の魔女(自分) に声をかけて欲しい云々』は、自分の無茶なお願いに応えてくれたシリカへの善意からの申し出だった。

生活が厳しいなら援助するし、欲しいマジックアイテムがあれば融通し、人手が足りないのなら手配する。

本当に善意からの申し出だ。

しかし、相手は『巨塔街』だけではなく、現在だと世界的に影響力が強い『巨塔の魔女』に直通で言葉を伝える権利を得たのだ。

一国の国王に意見できる権利を得た以上の重さがある。

極論、シリカの気分を害し、『巨塔の魔女』に忠言すれば、数万単位の人々を滅ぼすこともできるのだ。

彼女はそんなことを決して望まないが。

「……前向きに考えましょう。無事に依頼主からの仕事を完遂できたと。そう前向きに考えましょう」

「シリカさん?」

ミルクはぶつぶつと呟くシリカに小首を傾げる。

ただシリカは経験不足のため、この実績が周囲にどのような影響を与えるかまでは想像を巡らせることが出来なかった。

『巨塔の魔女』に直訴できる権利を持つ――と、『巨塔街』住人達に知られたシリカはまだ少女の年齢にかかわらず、周囲から一目置かれ、『魔女の金庫番』と噂されるほどの知名度を持つようになってしまう。

シリカ本人は望んでいないのに、彼女の名声が上がっていくのだった。