軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 雇用創造1

『巨塔街』に温泉が湧き出た。

それをライトの指示の元整備して、温泉施設を作り出す。

『巨塔街』に住む者達なら金銭さえ払えば入浴できるシステムになっている。

モヒカン達に助けられた後に『巨塔街』に来たシリカも、温泉を楽しんでいる1人だ。

ただ彼女の場合、つい口を滑らせたことで、温泉に関する商品開発をしなければならなくなってしまう。

温泉に浸かりながら、新しく従業員になった少女ミルクと話していた『温泉のお湯を売ったり、温泉で卵を茹でたり、蒸気で料理した物が商品になる』ことを、偶然妖精メイドが耳にしたのが発端だ。

『 巨塔街(きょとうがい) 』は人口が増加しているが、仕事が足りない状況だ。

『巨塔』側が街拡張のための公共事業を作り、なんとか人々を受け入れている状態である。

力がある男性ならそれで良いが、女子供を受け入れる仕事が足りていない。

そこでシリカの話を耳にした妖精メイド達が、『女子供でもできる新しい雇用を生み出せるかもしれない』と考え、その説明のためにシリカを『巨塔の魔女』の元へと連れて行ったのだ。

シリカは『巨塔の魔女』と対面しつつ、事細かに自分が知る情報を伝える。

結果、彼女のお陰で新たな仕事が創設されたのだ。

無事に温泉を利用した雇用が軌道に乗り、アドバイスをしたシリカもほっと胸を撫でおろす。

褒美として金一封も与えられたが、それ以上に嬉しかったのは……。

(『巨塔の魔女』様が直接声をあげた事業だもの。絶対に失敗は許されないから無事に成功して本当に良かったよ……)

シリカはただ知っている情報を伝えただけだが、事業が失敗していた場合、どのようなことになるか分からない。

なぜなら以前、従業員として勤めていたミキという美少女が、ある日、『巨塔』の二階以上に上がって以降姿を消したのである。

妖精メイドに尋ねたら『ミキ? そんな少女は居ませんよ』と返答されたのだ。

慌てて自宅兼店舗に帰ると、ミキの部屋には何も無く、彼女が使っていたコップ一つさえ残っていなかった。

妖精メイドに性的な意味で襲いかかった男性が、最初から『居なかった者』扱いされることはあったが、ミキは少女だ。

性的な意味で襲いかかって等のことはありえない。

もしくはそれ以上の何か、または――シリカは考えるのを止めた。

とりあえず新しい事業と仕事が出来たのだ。

それを喜ぶべきだろう。

シリカは人種王国を追放された少女ミルクを従業員として、2人で小さな店舗を営んでいる。

――そんな彼女の元に再び胃が『ギリリ』と痛む依頼が舞い込む。

その依頼とは?

「さらに新しい、女性や子供が出来る仕事のアイデアを出して欲しいですの」

「…………」

『巨塔』三階応接間にて、シリカは2回目の『巨塔の魔女』とのお茶会(強制呼びだし)をおこなっていた。

妖精メイドに案内され応接室ソファーにシリカが座り、正面に『巨塔の魔女』が腰掛ける。

『巨塔街』では決して口に出来ない高級品の茶菓子、お茶が並べられ、シリカも口にするが緊張感からまったく味が分からなかった。

とりあず呼び出しを受けた理由は、先程『巨塔の魔女』の台詞から分かる通り、『さらに新しい女子供でも出来る仕事の創造』だ。

では急遽、シリカを呼びだしてまでこんな話をしているのか?

『巨塔の魔女』側にも言い分があった。

正面ソファーに座る『巨塔の魔女』が、フード越しに頬を片手で押さえ説明してくれる。

「つい最近、人種王国で式典があり、その際、色々あって、孤児と人種奴隷達を引き取ることになりましたの。男性の場合、わたくし達が用意している公共事業があるためなんとかなりますが、どうしても力のない子供、女性のお仕事が少なくて……」

『巨塔の魔女』が憂鬱そうに溜息を漏らす。

フードで顔は確認できないが、溜息する姿すら気品があり、美しかった。

人によってはその姿を見ただけで美しさに惚れ惚れするだろうが、現在のシリカにそんな余裕はない。

「もちろん孤児院や女性でも出来る仕事をわたくし達も準備する予定ですが……。短期的にはともかく、長期的にはなかなか難しいので、温泉の件で素晴らしいアイデアを出したシリカさんにまた是非、何かアドバイスを頂ければと思ったのですわ。どうかお力をお貸しくださいまし」

「……か、畏まりました」

「ありがとうございますわ! もちろんアイデアが出なくても、気にしないでくださいまし、別に咎めるつもりはありませんので」

シリカからすれば他に返答しようがない。

彼女は胃を『キリキリ』と痛めながらも、再び『 巨塔の魔女(上司) 』――というか自分達を守護して下さっている神のお願いによって、雇用創造に挑むことになったのだった。

☆ ☆ ☆

「す、凄いですね。まさか『巨塔の魔女』様から直接お仕事を任されるなんて!」

「わたし的にはただただ胃が痛いだけだよ……」

その日の晩、シリカは唯一の従業員である同世代で少女のミルクと夕食を囲みつつ、呼び出された一件について説明をした。

ミルクが作った晩ご飯のシチューを口にしながら、彼女が賛辞する。

「シリカさんの気持ちは分かりますけど、巨塔街の主であるあの『巨塔の魔女』様に頼られるなんてやっぱり凄いですよ!」

ミルクの手放しの賛辞にシリカはパンを千切ってシチューに付けながら、眉根を下げた。

「わたしとしても凄いことだとは分かっているけど……」

「けど?」

ミルクが話の続きを待つ。

もし失敗した場合、ミキのように『最初からいない者』扱いを受けるかもしれない。

自分だけならまだいいが、従業員のミルクまで巻き込むことになったら。

想像するだけでシリカの胃が痛む。

もちろん『巨塔の魔女』エリーにそんなつもりは一切無い

単純にシリカを頼っているだけだし、別にアイデアが出なくても、実践して失敗したとしても責任を取らせるつもりは毛頭無い。

もちろんシリカ自身『巨塔の魔女』がそんなことをするとは考えていないが……。

まったく影響ゼロと信じるほど純粋でもなかった。

「――なんでもないよ。ご飯を食べたら頑張ってアイデアを考えないと」

「あたしに手伝えることがあったら何でも言ってくださいね! 頑張って協力しますから!」

ミルクが純粋な笑顔で協力を申し出る。

その笑顔を間にシリカは少し気持ちが軽くなったのだった。