軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3話 勇者集結

「――もういいや」

「もういいやとはなんだ!? オマエ、いったいどうなっ――」

一夜にして勇者となったニックが『聖剣ゼット』を鞘から抜くと、父親の首を切り落とす。

父親は『いったい何が起きているんだ』と言いたげな表情のまま、汚れた床に音をたてて頭ごとごろりと落ちた。

ワンテンポ遅れて、首が切断された胴体から血が噴き出す。

首を失った体が膝から崩れ落ちて床に倒れると、切断部から勢いよく流れ出ていた血は次第にその勢いを失っていく。

父親の血で顔、体、衣服を汚した母親はすぐに目の前の現実を受け入れることが出来ず、暫し呆然。

ようやく脳味噌が現実を理解すると、体から絞り出すような悲鳴をあげる。

「……いやぁぁぁぁぁッ! あ、あなた! にっ、ニック! どうしてお父さんを! お父さ――」

「うるさいな」

母親の悲鳴を心底うるさそうに、ニックは顔を顰めた。

両手は『聖剣ゼット』を握っているため、耳を押さえることが出来ない。

そのせいか彼は騒音の根本を断つように、悲鳴を上げ騒ぐ母親の首も父と同様に刎ねる。

息子の凶行を前に恐怖しきった母親の首が、空中を舞い父同様に床へと転がり落ちた。

母親の首を刎ねたお陰で、彼女は口を何度かパクパクしただけで声が出ず、すぐにその動きも止まる。

静かになった部屋を前に、ニックは満足そうに頷く。

「ようやく静かになったな。まったくぼくの両親とは思えないほど愚鈍だったな。しかも女神様に選ばれた息子の栄達を喜ぶどころか、邪魔しようとするなんて。とんでもない悪党だよ……。とはいえ、勢いで殺しちゃったけど、不味かったかな?」

ニックは聖剣を鞘に仕舞いつつ暫し考え込み、答えを出す。

「まぁいいや。両親が死んだ孤独な勇者っていうのも物語の定番だし。これはこれで勇者の旅立ちとしてはアリかもな」

彼は実の両親をその手にかけたにもかかわらず、後悔一つない。

むしろ物語の定番の勇者設定と同じ状況になったことに喜びすら感じていた。

もちろん、物語の定番の勇者は自分の手で両親は殺さない。元々孤児、モンスター、盗賊に両親を襲われ殺害されたりだ。

「お、おい! どうした! 凄い悲鳴が聞こえて――ッ!?」

母親の悲鳴が外まで聞こえたため、村の近所に住む男性達が手にクワなどを持ってニック家を訪ねる。

鍵などかかっていないため、扉を開くと、そこには……手に剣を持ち、首を切断された両親、返り血を浴びた息子が立っていた。

ようやく陽が昇り出したお陰で、朝日が部屋の中を照らし出し、嫌でも凄惨な光景を目にすることが出来てしまう。

「に、ニック! お、オマエがこんな惨いことをしたのか!? ぐぉ、おぇッ!」

「ひぃ! 嘘だろ……実の両親を殺すなんて……いったい何があったんだよ」

「そ、村長を呼んでこないと! ニック! その剣から手を離せ! 床に置け!」

あまりの惨い現場に吐き気を催す者、両親を手に掛けた意味が分からず現実を受け入れず呆然とする者、手にしたクワに力を込めてニックを睨みつけ指示を出す者――現場を目撃した男達がそれぞれ反応を示す。

そんな彼らに対してニックは、面倒臭そうに溜息をつき、肩をすくめる。

「やれやれ……どうして君達ってそろいもそろってタイミングが悪いのかな? 出発前に勇者のぼくに悪評がつくのは不味いんだよね。だから、仕方ないか」

ニックは面倒事に巻き込まれた主人公のような態度で聖剣を再び抜く。

「それに勇者の物語で最初、襲撃を受けて主人公だけ辛くも逃げ延びたけど村人は全滅っていうのも定番の始まりだし。これはこれでありだよね」

彼は独り言を漏らし迷わず、近所付き合いしてきた男達に刃を向けた。

――その日、人種のとある村が一つ地上から消滅する。

村人は老若男女問わず、全員首を刎ねられていた。

☆ ☆ ☆

ニックが女神から授かった『聖剣ゼット』には、物語同様7つの能力が備わっている。

その能力の一つ、所有していると空を駆けることが出来る力があった。故郷を滅ぼした後、彼は女神教総本山があるシックス公国へ向かって空を駆ける。

シックス公国へ到着すると、律儀に手続きを取り門を潜った。

ニックは人に尋ねつつ、女神教総本山を目指す。

女神教総本山の教会はシックス公国の北側、スラム側寄りに存在した。

別に公国側も女神教総本山を冷遇している訳ではない。

元々女神教総本山が北側にあって、貧しい者達へ施しをおこなっていたらスラムが形成されてしまったのだ。

また政治の道具にされないため、中立地帯であるシックス公国に女神教総本山が建築されたのもあり、『総本山』というにはあまり大きくはない。

シックス公国魔術学園の半分もないだろう。

各国からの 支援金(喜捨) も一応あるため、教会の見栄えは良い。

ニックは女神教総本山教会に辿り着くと躊躇いなく、中へと入る。

まるで自分の家に入室する気楽さでだ。

「…………」

中に入ると一斉に内部に居た者達の視線が集まる。

ニックを除く男性3名が、彼を見つめ――彼らはすぐに理解した。

ニックも一目で彼らが何者か理解する。

『仲間』……自分と同じ女神様に選ばれた勇者達だと。

神父服に、怒りを具現化したような槍を持つ『聖槍の勇者』。

背が低く、なぜか空中に浮いている『聖鎧の勇者』。

髪の毛を後ろにまとめたやり手商人のような風貌を持つ『聖印の勇者』。

そして『聖剣の勇者』ニック。

現代に古い神話時代、女神に選ばれた勇者達が勢揃いしたのだった。