軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 メラの戦力強化2

「ケケケケケ! 邪魔するぜトントン」

「ブヒ! ブヒ!」

『UR キメラ メラ レベル7777』が、断りを入れて『奈落』最下層内部でも特殊な領域――カードから出た宝物、マジックアイテム、武器防具などを扱う管理倉庫へと転移する。

管理倉庫は物理的に出入口が無く隔離されており、さらにライト、メイ、アオユキ、エリーの許可がないと、『SSR 転移』カードを使用しても辿りつかない仕組みになっていた。

許可を得ていないと例え『禁忌の魔女』であるエリーですら、『転移』で内部に入ることが出来ない。

もちろん何事も例外はある。

その例外である『SSR 財宝好きのトントン レベル100』が、メラの入室を歓迎するように声をあげた。

「ケケケケケ! 元気そうだなトントン」

「ブヒ!」

片方が天使、片方が悪魔のような羽根を生やした子豚が、メラの挨拶に反応して片手を上げる。

レベルは低いが宝物に鼻が利くため、ライトに管理倉庫を任されているのだ。

管理責任者であるトントンはライト達の許可を取らずとも出入りは自由。そんなトントンに早速メラが用件を伝える。

「ケケケケケケ! 最近、良い武器や防具が『無限ガチャ』カードから排出されたって聞いてな。戦力増強のために良さそうなら装備しようと思って。ご主人さま達の許可は取っているから見せてもらえないか?」

「ブヒブヒブヒ」

トントンはメラの話を聞くと何度か頷き、移動を開始する。

小さな脚をちょこちょこ動かして、彼は管理倉庫の奥へと移動する。

(ケケケケ! やっぱりあの羽根で飛ばないんだ……)

前回、管理倉庫を訪れた際も、トントンは天使、悪魔の羽根を動かし空を飛ばず、わざわざ脚を動かし移動した。

足は短いが、移動速度が遅いわけではないのでストレスは感じないが、メラはついつい胸中で再度ツッコミを入れてしまう。

ときおり、トントンが振り返りメラがちゃんと一緒に移動しているか確認する。

倉庫内部にはエリーによって魔術がかけられ、例えメラでもトントンとはぐれて移動した場合、迷ってしまうほどだ。

なのでトントンはメラが外れないように気を遣いときおり振り返っていたのだ。

数分して武器エリアの一角に到着する。

「ブヒブヒ!」

まず最初にトントンが鼻先で指したのは、真っ白な槍だった。

刃から、持ち手の尖端まで全て初雪のように純白の美術品のような槍が設置されていた。

これが最近、『無限ガチャ』カードから出た武器の一つらしい。

正直、見た目は武器というより、美術品のようである。

「ケケケケ! これが今回新しく『無限ガチャ』カードから出た武器か。随分、綺麗な槍だな」

メラは興味深そうに手を伸ばす。

「ブヒ! ブヒ、ブヒ!」

「ケケケケケ! 分かっているよ。随分と扱い辛い槍なんだろう?」

トントンの注意を受けつつ、メラは純白の槍を右手で握り締める。

重さは極々普通で、今の所、見た目が美術品のように綺麗以外、変わった点はないが……。

「ッ!? マジかよ。注意を受けたから覚悟はしていたが、これほど反動が強いとは……」

メラが警戒しつつ、軽く槍の力を解放する。

同時に彼女の右手が凍り付いてしまう。

メラは槍を棚に戻しつつ、凍り付いた右手を切断。

同時に右手が粉々に砕けてしまう。

メラは生物の集合体キメラのため、ダメージはほぼゼロだ。失った右手もすぐに再生した。

彼女は再生したばかりの右手で形の良い顎を撫でつつ、純白の槍『SSSR 永久凍土の槍』を改めて見つめる。

『SSSR 永久凍土の槍』――神話時代の永久凍土から作り出された槍。その力は非常に強力だが、使用する力に比例して使用者にも相応のダメージを与える槍。

武器としてランクは高い方ではないが、威力だけならUR以上はあるかもしれない。

ランクが低い理由として『使用する力に比例して使用者にも相応の氷系ダメージを与える』というデメリットがあるからだ。

「ケケケ! 確かに随分と強力な槍だが、ちょっと反動がきつくてアタシ向きではないな……。トントン、次の案内を頼めるかい」

「ブヒ!」

メラは『SSSR 永久凍土の槍』を諦め、次の武器へと向かう。

トントンが次に向かったのは武器……というより鎧に近いマジックウェポンだった。

「ブヒブヒブヒ!」

「ケケケケケケケ! これはまた……変わったマジックウェポンだな。こういうのは初めて見たぞ」

メラの目の前に金属製の鎧が置かれていた。

しかし、決定的に通常の鎧と違う点は……胴体、手足、兜のようにバラバラではなく、頭から爪先まで一体になっているのだ。

所謂、パワードアーマーである。

『UR マルチウェポンマジックパワードアーマーEM.Ⅲ』と『無限ガチャ』カードには記されていた。

大きさは約3mあり、ドラム缶に手足をつけたような無骨なデザインをしている。少々変わった金属製ゴーレムのような見た目だ。

男の子はこういった無骨なデザインを好ましく思うだろうが、女子からは不評そうなデザインだろう。

『UR マルチウェポンマジックパワードアーマーEM.Ⅲ』――搭乗者の魔力を吸い取り、動くマジックパワードアーマー。その戦闘能力は一級品で遠距離、近接共に問題なく戦え、対魔術、物理防御能力、機動性も非常に高い。また魔力を注ぐ量に応じて能力が増す。ただし動かすための魔力消費はとてつもなく高く、燃費は悪い。

メラは興味深そうにパワードアーマーを眺める。

「ケケケケケ! なぁトントン、これ武器エリアに置かれているけど、鎧じゃないのかい?」

「ブヒブヒ」

トントンは首を横に振り否定する。

どうやら見た目は鎧だが、分類上は武器扱いされているようだ。

メラがなぜか感心したように溜息を漏らす。

「ケケケケケ! へぇ~、これが武器ね……。まぁ折角だし試してみるかね」

メラが『UR マルチウェポンマジックパワードアーマーEM.Ⅲ』へと乗り込むが、魔術的力が働き彼女に合わせた形にフィットする。

同時にパワードアーマーが、起動するが……。

『ぐうぅうッ!』

「ブヒ!?」

パワードアーマーの内側からメラの苦痛の声が響く。

トントンは驚きで小さな手足をバタバタ動かし、慌ててしまう。

すぐにパワードアーマーの乗り込み口が開き、メラが抜け出る。

「ケケケケ! 『動かすための魔力消費はとてつもなく高く、燃費は悪い』とは聞いていたが、想像以上だな! 魔術師ではないから魔力量はそこまで高くないとはいえ、レベル7777のアタシでも動かすだけでしんどいとは思わなかったぞ……」

メラは残念そうに肩をすくめた。

とはいえ、仮にパワードアーマーを扱えたとしても、内部に入って操作する必要があるため、メラの『状況に応じて体を変化させる』という強みが消えてしまう。

なので元々相性はあまり良くない。

気を取り直し、新しく入ってきた他の武器や防具なども見せてもらうが……。

『SSR 爆裂ナイフ』――投擲専用ナイフ。刺さると爆発し、投擲後、使用者の手元に戻る。

『UR リボルバーハルバート』――回転シリンダー内部に魔術をストックしておくことが出来る。トリガーを引くと、順番に魔術が起動する。

『SSSR 幻覚の鞭』――鞭で攻撃した敵へ、一定の確率で幻覚をみせることが出来る鞭。

『UR ビキニアーマー』――胸と下半身の一部しか隠せないが、なぜか防御能力が高く、筋力増強、スピード増強、魔力増強などもの効果も付与される。ただし装備するのを躊躇うほど面積の狭い鎧。男女どちらでも装着可能だ。

「ケケケケケ! アタシ向きの武器、防具は今回もなさそうだな……」

これ以外にも色々と『無限ガチャ』から排出された武器、防具を確認したが、どれもメラには合わない物ばかりだった。

とはいえ完全に無駄足だった訳ではない。

メラには不必要だが、非常に興味深いマジックアイテムを発見したからだ。

そのカードは……『ラッキーコイン』というアイテムカードである。

『UR ラッキーコイン』――持っていると幸運をもたらせてくれるかもしれないコインだと、トントンから説明を受けた。

「ケケケケケ! 初めて見たなこんなアイテムカード。アタシには必要ないが、運を上げたいアイスヒートにはちょうど良さそうだな。トントン、このラッキーコインを持っていってもいいかい?」

「ブヒ!」

メラ自身、ライトから事前に戦力増強のための持ち出し許可を得ている。

一応、管理者であるトントンにも許可を得るため尋ねた。

トントンは『問題無い』と言いたげに、可愛らしく鳴き声をあげる。

メラは自身の戦力増強こそ叶わなかったが、運が低いのを嘆くアイスヒートに良い土産が出来たことを喜び笑い声を漏らす。

「ケケケ! これで少しはアイスヒートの運が良くなればいいんだがね」

「ブヒ~……」

ガチャランクは高いが、本当に運が良くなるかは未知数だ。

とはいえ、気休め程度にはなるだろうとメラは考え、ラッキーコインを手に、管理倉庫を後にするのだった。