軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39話 第一王子クロー

途中、トラブルが発生したが無事に『人種王国女王就任式典』は大成功のうちに終わる。

お陰で内外に『リリスこそが人種王国の女王だ』と喧伝することが出来た。

結局、安全上の理由から、ユメとリリス王女との面会は中止となった。

ユメは酷く残念がっていたが、やはり彼女的にも爆弾化させられた孤児の無事が優先のため非難ひとつ上げず、むしろ応援してくれたほどだ。

(本当にユメは僕にはもったいないほど良くできた妹だな……)

実妹の優しさに、兄として感心してしまう。

ユメが我が儘を言わず後押ししてくれたお陰で、無事に爆発するマジックアイテムを飲まされた孤児達を確保。

固定化した時間を1人ずつ解除し、体内からマジックアイテムを取る作業を既に終えている。

とくにトラブルも起きず、全員無事だ。

問題があるとすれば……。

(孤児達を助けたのはいいが、再び放り出すのもな……)

『助けましたが、結局野垂れ死にしました』では後味が悪い。

人種王国で養えれば一番なのだが……。

養えるなら最初から保護しているだろう。

なので『巨塔街』に引き取ることになった。

とはいえ黙って人種王国国民を連れて行く訳にもいかず、リリスに許可をもらう。

さらにリリスには、今回の反リリス派の主犯である子爵嫡男×2を、証拠と共に引き渡した。

リリス暗殺を企てた言い逃れできない証拠は山積みのため、反リリス派を潰すには十分だろう。

ただ何もかもリリスにとって上手くいったわけではない。

「お兄様……」

人種王国王城(城というよりちょっと大きめの屋敷程度の規模だが)の一室ベッドに1人の青年が寝かされていた。

リリスの実兄である元人種王国第一王子クローだ。

今回、孤児達に爆発するマジックアイテムを飲ませ、爆弾化した人物。元魔人王国『ますたー』であるミキに特徴を伝えた所、竜人帝国側の『ますたー』の1人であるセスタという人物だと判明した。

そのセスタという人物は事前にクローにマジックアイテムを飲ませて、彼が望む通り動かし、セスタの劣化能力、身体能力強化で『隔離塔』を脱出させた。

しかし、当然、利点だけではなく欠点も存在した。

ただの人種に無理矢理力を与えて行使させるせいで、使用者が反動から死亡してしまうのだ。

大剣プロメテウスの力で増えたナズナの1人がクローの後を追って、捕らえたが……。力を行使し過ぎて彼は死亡してしまう。

マジックアイテムを飲まされた人種奴隷達も、ナズナの機転で即座に取り押さえられ大剣プロメテウスで爆発や力を抑え込み助けることが出来たが……。

もしクローのように限界以上に体を動かし魔力を消費していたら、確実に命を落としていただろう。

クローの遺体は人種王国王城の一室へ秘密裏に運び込み、実妹――リリスと対面をさせた。

ちなみにナズナが最後に彼から聞いた言葉は『俺が王になるはず――』というものだ。

どうやら彼は最後まで『自分こそ王になるべきだ』と考えていたらしい。

リリスはクローが寝かされている側に膝を突き、ベッドシーツを涙で濡らす。

彼女は僕に聞かせる訳でもなく、独白を口にする。

「為政者として本来であれば、自身の治世を揺るがす存在であるお兄様は早々に処刑し、後顧の憂いを断つのが最善。……ですが私にはどうしても出来ませんでした。たとえお兄様から王座を奪ったせいで恨まれていると分かっていても……」

彼女の涙がさらにこぼれ落ちる。

「妹としてお兄様にはただ生きていて欲しかったのです。ただ生きてくれたら、それだけで、良かったのに……」

「…………」

僕は無言で、悲しむリリスを見守ってしまう。

その姿に、僕の実兄のことを思い出す。

僕自身、ただエルスにーちゃんには生きていて欲しかった。

しかし、現実は僕を守るために自死。

今はエリーの魔術で永続的に時を止めている状態だ。

兄クローの死に悲しむリリスの姿が、エルスにーちゃんを亡くした時の自分と重なってしまう。

無関係な孤児達、人種奴隷にマジックアイテムを飲ませて爆弾化したのもだが、あまりにも酷いやり口に、今回の事件を引き起こした竜人側『ますたー』に強い怒りを覚える。

一通り悲しんだリリスと、少し会話を交わしてから僕は『奈落』最下層へと転移した。

『奈落』最下層の執務室に転移すると、未だ落ち込んでいるナズナが僕を待っていた。

「ご、ご主人様、その……ごめんなさい。あたいがもっとしっかりしていればあのクソキモ野郎を捕まえられたかもしれないのに……」

ナズナは竜人側『ますたー』の1人、セスタという少年を戦闘では圧倒したが、セスタが自身の片脚と片腕を切り落とすという行為に及び、さらに敵の仲間増援が来たせいで取り逃がしてしまう。

しかし、これはナズナだけの責任ではない。

僕は彼女を慰めるように頭を撫でる。

「何度も言うけど、今回竜人側『ますたー』の1人を逃がしたのはナズナだけの責任じゃないよ。敵の増援があったのもそうだけど、孤児や人種奴隷達を助けるのに集中し過ぎた。でも、お陰で孤児や人種奴隷達を誰一人死なせず助けることが出来たんだ。だからナズナもこれ以上気にする必要はないよ」

「ご、ご主人様……」

涙目のナズナを慰めるため、さらに僕は彼女の頭を撫でた。

ナズナを慰めるため、口から出任せを言っている訳ではない。

実際、ナズナに任せておけば問題ないと思ったのもあるが、僕達の戦力をリリス護衛や人種救助に注ぎ過ぎた。

しかし、お陰でマジックアイテムを飲まされ孤児や人種奴隷達を誰一人死なせず助け出すことが出来たというのも事実だ。

「それに近いうちにドラゴへの復讐、今回の一件の落とし前に竜人帝国へ攻め込むつもりだから。その時に敵を倒せばいいさ」

「分かった! その時はあたい、マジで頑張るから!」

涙目だったナズナが、涙を拭って両手を握り締めやる気を取り戻す。

どうやら気持ちを切り替えることが出来たようだ。

(……とはいえ、今度戦う時、ナズナにはやりすぎに注意するようにしないとな)

なぜかというと……セスタとの戦いで、ナズナは大暴れしたせいで人種王国首都近くの森に深いダメージを与えてしまう。

最後、セスタの爆発も原因だが、ナズナが好き勝手に暴れたのも一因である。

森にはモンスターが住み着き、危険な場所ではあるが……。

薪を拾ったり、薬草、キノコ、果実など生活を支えるのに必要な側面もあるのだ。

森に大きなダメージを与えると、人々の生活に悪影響を与えてしまう。

さすがに ナズナ(身内) がやりすぎたため、現在進行形で森の修復作業をおこなっている状態だ。

ナズナ自身、悪気はないのだが……。

「やるぞ! 次にあったら絶対にぼこぼこにしてやるぜ!」

元気を取り戻したナズナが鼻息荒く、仮想敵相手に拳を振るう。

(根は真面目で、強くて頼りがいはあるんだけどな……)

今回の一件で竜人帝国『ますたー』を潰すのは決定したが、同時にナズナの攻撃力の高さもあらためて理解したのだった。