軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38話 ナズナvsセスタ4

「なんだあの霧は? どうして突然、あんな霧が森の奥から溢れ出てくるんだ?」

「なんだか分からないが逃がさないためにも突撃だぜ!」

ナズナ×2がセスタの後を追いかけてミルクのように濃い霧の中にへと突撃する。

とはいえナズナはレベル9999で戦闘技能が『奈落』メンバーの中で最も高い。

故に例え濃い霧で視界を遮られても、気配と音、血の臭いでセスタの行方を苦もなく追うことが出来た。

当然、森の奥から複数の敵が自分達目掛けて突撃してくることにも気付いている。

ただ姿を現した敵があまりにも予想外だった。

「魚!?」

「どうして地上の森で魚が泳いでいるんだ!?」

霧を掻き分け、尖端がダーツのように尖った魚型モンスターが数百の群を作り、地上を泳いでいる。

大きさはサンマ程度で小魚レベルだ。

まるで霧そのものが水中にいるようにその動きは滑らかで、森の木々すら苦もなく回避しナズナ×2へと襲いかかってきた。

彼女達は驚きつつも迎撃する。

「しゃらくせぇ!」

「ちょっと驚いたけど所詮魚! あたいの敵じゃないぜ!」

大剣プロメテウスを振るって迫り来る数百の魚型モンスターを切り払う。

振り下ろすだけで衝撃波が発生し、魚型モンスターだけではなく霧、木々、土なども派手に巻き上げる。

ナズナ×2が1度ずつ大剣プロメテウスを振るうだけで、魚型モンスターの群は一匹残らず消滅する――が、

『シャアアァァァァ!』

「うげ! 今度はもっと大きな魚が来たぞ!」

「いや大きな魚だけじゃないぞ! またあの小さい魚も来た!」

ナズナの1人が大型、約2m前後あるナイフのような歯がびっしりと並ぶ鮫のようなモンスターが数十匹押し寄せてきた。

さらに後から、先程迎撃した尖端がダーツのように尖った魚型モンスターの群が連携するように襲いかかってくる。

どちらも本来海中に生息する魚型モンスターで、本来ならば鮫型モンスターにダーツ型小魚が補食されるだけの存在だ。

海中でもしダーツ型小魚が鮫型モンスターを発見したら一目散に逃げ出すのが普通である。

にもかかわらず逃げ出すどころか鮫型モンスターと連携するように有機的に動き、ナズナ×2の動きを阻害してくるのだ。

さらにナズナ×2にダーツ型小魚が接近すると、『ドンッ』と爆発する。

「小魚に爆弾が付与されている! 逃げているあいつの仕業だな!」

「小魚だけじゃなくて、大きい魚にまで爆発する奴が紛れ込んでいるぞ! 一匹一匹は強くないけど、数が多すぎる! あーもーめんどくさいぞ!」

ナズナ×2からすれば、鮫型もダーツ型モンスターもたいした強さではない。

しかし、数が多く、ときおり爆発するのが紛れ込んでいるため、ダメージこそ負わないが、目の前で突然爆発することが煩わしいし、音がうるさい。

傷を負うことはないが、非常に苛立ちを覚える攻撃だった。

さらに逃げたセスタの後を追って、森の奥へと進むに連れてより霧が濃くなって、魚の爆発などの妨害もあって、ナズナですら感覚が狂い出す。

(魚の爆発、濃い霧で視界なんかを奪うことであたい達の感覚を狂わせて、追わせないつもりだな)

(でも無駄だぞ。あたいが殴り飛ばした際、左腕が千切れかけているせいで、血が点々と落ちている。その後を追えば迷わず追いつけることができるんだぞ!)

ナズナは地面や木々、草についたセスタの血を的確に見抜き、彼の後を追いかける。

血が続いている方へ突撃するたび、地上を泳ぐ魚型モンスターの密度も濃くなっていった。

濃くなっていくたび、ナズナは『こちら側にセスタが逃げている』、『敵の増援が自分を足止めするためモンスターの数を増やしている』と実感する。

お陰でナズナ×2のやる気は逆に上がって、より距離を縮める速度が上がる。さすがにナズナ×2の足止めは厳しいらしく、次第に魚型モンスターの密度が低くなっていく。

彼女達の速度がさらに上がる。

気付けば濃い霧でも人影を捉えることが出来る距離まで近付く。

「追いついたぞ、こらぁぁぁッ!」

「他にも仲間が来ているようだけど、そいつらも一緒に捕まえてやるぜ!」

ナズナ×2は人影を捉えたことに気勢を上げる。

人影も『逃げられない』と悟ったのか、足を止めて太い1本の木を背にナズナ×2へと振り返った。

人影が振り返り、濃い霧でも姿形を捉えることができる距離まで近付くと、ナズナ×2が驚きの表情で足を止める。

「……誰だオマエ?」

「あのキモい人種じゃない? ゴーレム?」

ナズナ×2が追いかけていたのは、顔パーツも、髪の毛も、歯もない肉の塊だった。

肉の塊は二本足で、衣服を纏っていた。

手にはセスタのらしき左腕、右脚を握っており、そこからポタポタと血が滴り落ちている。

見るからに『先程切断しました』と言いたげな新鮮な腕だ。

さらに罠が張られていた。

「「ッ!?」」

フレッシュゴーレムが握るセスタの片腕、脚から異常な危機感を知覚したナズナ×2が、慌てて大剣プロメテウスを盾に後方へと全力で下がる!

刹那――。

彼女達の退避がスイッチだったかの如く、セスタの左腕と右脚が大爆発を起こした。

『ダストプレス』に 恩恵(ギフト) 『爆弾魔』で爆発属性を付与した攻撃の比ではない。

もし直撃すればナズナでもそこそこのダメージを負うほどの高威力の爆発が起きたのだ。

セスタと増援の敵は、左腕と右脚を犠牲に自分達の存在まるごと隠蔽するようにナズナ×2を攻撃し、森林ごと吹き飛ばしたのだった。