軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36話 ナズナvsセスタ2

「…………う、嘘だろ……僕様ちゃんの準備した爆殺トラップをこんな力技で破るとか……」

時間をかけて準備した『爆殺の空間』をナズナが単純に踏み砕き無力化したことに、普段へらへらとした態度を取るセスタが絶望顔を作る。

一方、ナズナはというと……戦う意思もない孤児達を、騙して無自覚に爆弾化したセスタに対して怒りを覚えていたが、罠を文字通り踏み砕いたことに対して喜びも何もない。

彼女にとってこの程度、虫を踏みつぶすほどで驚きにも値しない。

ここでようやく実力差と自分の置かれている立場に気付いたセスタが、絶望顔から一転、ナズナに媚びるような笑みを作る。

「君、めっちゃ強いね。僕様ちゃん、負けちゃった。孤児達のことも、君達にちょっかいを出したことも謝るから、もう許して欲しいなぁ☆」

「はぁ? キモ」

男性にもかかわらず美少女に見えてしまうほど整った顔立ちのセスタは、自分の容姿を生かして媚びを売り、許しを請う。

実際、セスタの美貌は女性だけではなく、男性すら虜にするほど整っている。そんな彼が媚びを売り、謝れば耐性の無い一般人ならすぐに許してしまうほどの魅力があったが……。

ナズナには通じない。

むしろ、孤児達を爆弾化したセスタに対して嫌悪感しかないため逆効果ですらあった。

彼女の辛辣な言葉に笑みを作っていたセスタの額に青筋が浮かぶ。

自分の容姿に自信があったため、躊躇いもせず罵ってきたナズナに腹が立ったのだ。

笑みを作ってたセスタが、激怒する。

「このクソガキが! 僕様ちゃんが穏便に手を引いてやるって言っているのに無視しやがってよ! 空気を読めよ空気を! だったら、こっちにも考えがあるぞ!」

セスタは感情的に叫ぶと、彼の体内で魔力が動く。

動いただけで彼自身に変化はないが……。

『ドンッ』と遠方――『隔離塔』から爆発音が響いてくる。

「…………」

ナズナが爆発方向に意識を向けて気配を探ると、1人彼女達が居る場所とは反対方向に逃げる気配を感じ取った。

セスタが『ニヤリ』と不適に笑う。

「気配を察して分かっているだろうが、今逃げているのは人種王国女王の実兄の、人種王国第一王子クローだよ。僕様ちゃんが以前、言いくるめてマジックアイテムの珠を飲ませておいたのさ。孤児達に飲ませたのとは訳が違う。僕様ちゃんが時間をかけて作った特別製で、飲んだ者は身体能力を強化され、外部からある程度操れるし、劣化だけど僕様ちゃんと同じ能力を使用することが出来るようになる」

彼がナズナを見下しながら続ける。

「所詮素体が人種だから、身体能力を強化してもタカがしれているけど、劣化とはいえ僕様ちゃんと同じ能力を使えるんだ。『巨塔の魔女』や女王にとっては、 クロー(あいつ) はまだ殺したくも、逃がしたくもないんだろう? まぁ逃げられて外部に人種王国臨時政府なんて作られたら面倒だしね。なのに僕様ちゃんにかまって、 クロー(あいつ) を逃がしてもいいのかな?」

『さらに』と彼がアイテムボックスから、大量の 人間(人種) を取り出す。

その数は100人だ。

セスタが調子にのった笑い声をあげた。

「『巨塔の魔女』と直接戦う可能性もあったから、一応用意した 人種爆弾(切り札) さ! アイテムボックスは生物を入れることはできないけど、逆に言えば『アイテムボックスに入れる時に生きてさえなければ』入れておくことが出来る。彼、彼女達は僕様ちゃんがちまちま作ったマジックアイテムを飲ませて仮死状態にして対魔女用にアイテムボックスへいれておいたのさ! 飲ませたマジックアイテムを通して仮死状態にして、人種王国女王の実兄のように僕様ちゃんが操ることが出来るのさ!」

棒立ちの状態の人種達に隠れながら、完全に立場が逆転したと考えたセスタが自慢げに告げる。

「オマエ達が『巨塔の魔女』の部下なら『 人種(ヒューマン) 絶対独立主義』を守らないといけないよね? せいぜい頑張って殺さず 人種爆弾(無能) 達を助ければいいと想うよ。僕様ちゃんはその間に悠々と逃げさせてもらうけどね。あと 人種爆弾(無能) 達を殺したり、 ファイト達(あのアホ達) のように凍り漬けにしても爆発するから気を付けてね。それじゃ 人種爆弾(無能) 共! あいつら、特にあの生意気なチビの足止めをしろ!」

『ォオオオォォオォッ!』

仮死状態のままだが、セスタの指示に従い人種爆弾達がナズナ、アイスヒートを目掛けて突撃する。

セスタに飲まされたマジックアイテムの効果で、その動きは人種と思えないほど素速い。

もちろんナズナ、アイスヒートからすれば欠伸が出るほど遅いが、数も多く、下手に傷つければ爆発し死亡してしまう。

さらに現在進行形でナズナ達とは反対方向へリリス兄のクローが逃走中である。そちらにも対処しなければならない。

セスタは2人が対応に追われている間にさっさと逃げる算段のようだ。

これが強者であっても通常の範囲の相手ならば、彼は逃げ切ることが出来たかもしれない。

相手がナズナでさえなければだ。

ナズナが大剣プロメテウスを抜き、世界に干渉する。

「摂理をねじ曲げろ! プロメテウス!」

ナズナが叫ぶと共に大剣プロメテウスが世界に干渉し、彼女が3人+100人に分裂。

「……はぁ?」

セスタは目の前の状況が受け入れられず、逃走しようとした足を思わず止めてしまう。

分裂した100人が、襲いかかる人種爆弾達を押さえ込み、内部のマジックアイテムが爆発する前に、大剣プロメテウスで干渉する。

『摂理をねじ曲げ爆弾に干渉しろ! プロメテウス!』

100人に分裂したナズナが人種爆弾達の内部にあるマジックアイテムに干渉し、爆発を押さえ込む。

「よし、これでこの人達の中にあるマジックアイテムは爆発しないな!」

本体であるナズナが満足そうに声をあげる。

セスタの対『巨塔の魔女』の切り札である人種爆弾達が数秒で解決させられ、彼は呆気にとられてしまう。

そしてようやく思い出す。

元魔人王国側『マスター』のリーダーでレベル9000を超えていて、近接格闘技能力ならセスタ達も認めているゴウを一方的に蹂躙し、ゴウが『ヤバい化け物』と断言した人物の名前を――ナズナが分裂する姿を見て、ようやくセスタは思い出したのだ。

「『SUR 真祖ヴァンパイア 騎士(ナイト) ナズナ レベル9999』……」

『巨塔の魔女』への嫌がらせばかりを考え、優先していたため、すっかり頭から抜けていた。

ゴウから聞かされた『ヤバい化け物』、『面倒なクソガキ』、『天才を超える天才』など、傲慢なゴウが恐怖を覚えつつある意味手放しで讃えた人物。

正直、ゴウが自身の敗北を誤魔化すための吹かし程度にしか考えていなかったが。

セスタは自分達以上の理不尽な存在に初めて出会ったのだった。