作品タイトル不明
31話 ダークナイト
『UR 近接戦闘魔術ゴーレム ダークナイト レベル5000』
数年前、まだライトが『奈落』最下層で戦力を整えている頃、ダークナイトを含めたネムム、ゴールド、アーミラがパーティーを組みダンジョンを逆走攻略した。
その際、主力の攻撃を担当していたのが、ダークナイトだ。
レベル5000級では、最も戦闘能力が高い。
今回、反リリス派に『ますたー』など規格外の存在が混じり、攻めてくる可能性があった。
一応の警戒としてライトは、『奈落』最下層から人材を派遣して警戒しておくよう指示を出したが……。
ゴドー達が辟易していたように、王族の秘密通路は長年使用していないため埃が溜まり、非常に不快な環境で、陽も当たらないこんな場所で長時間滞在は誰だってしたくないが、配置しない訳にもいかなかった。
そこで長時間、埃が溜まり、陽がささず、あまり衛生的ではない場所で警戒し続けることが出来る人材として、近接戦闘魔術ゴーレムであるダークナイトが抜擢されたのだ。
ゴーレムのため呼吸をせず、陽がささない地下で長期滞在しても問題なし。
戦闘能力も高く、例え『ますたー』など規格外の存在と遭遇しても、一撃で倒されることはない。
もし本当に遭遇した場合は、地下通路を破壊して足止め、すぐに撤退指示も出している。
――問題があるとするなら、ダークナイトは普段、元魔人王国側『ますたー』の1人であるミキの監視作業を任せていた。
ゴーレムだけあり24時間、ミキが投獄されている地下牢を監視することに適している。
レベルも高く、人並み以上に判断力も高いため、問題が起きれば足止め、連絡など柔軟に対応することが出来るのだ。
そんな適材適所な人材を引き抜くのは若干、ライトも躊躇ったが……。
ダークナイトが今回の王族秘密通路監視に最も適しているのは確かなため、一時的に移動してもらう決断をしたのである。
一応、ミキの地下牢監視はダークナイトが一時的に抜けてしまったため、妖精メイド達の人数を増やし、戻って来るまで強化している状態だ。
そんなダークナイトを前にゴドーが戸惑った声をあげる。
「まさか我々の動きを読んで地下通路で待ち伏せしていた? いや、関節から煙? が出ている点を考えれば……人種などが入っている訳ではないようだな。この地下通路を護衛する王族所有のゴーレムの一種か何か?」
ゴドーは自分達のように地下通路を逆走し、王城に忍び込もうとする輩を排除するための警備兵士ゴーレムだと予想をつけた。
もし自分達の作戦がどこかで漏れて、地下通路を使って王城に忍び込もうと知っていたなら、もっと大勢の兵士を配置していたはずだ。
にもかかわらず、一体のゴーレムだけしか置いていないのは不自然である。
故にゴドーは『王家が所有する警備ゴーレムの一種』と予想したのだ。
(それにしては地下通路と違って、鎧部分に埃が溜まっていないようだが……)
しかし、それ以外、単体で通路に待ち構えている他理由がゴドーの頭、常識から思い付かない。
さすがに彼も『いざという時、対ますたーなど用に配置した人材』と分かる筈がなかった。
「まぁいい。所詮はゴーレムといえど、一体。さっさと倒して先へと進むぞ。槍持ち前に出ろ」
『御意!』
ゴドーの指示に従い子爵家家臣の騎士達が、数名ほど前に出る。
本来、狭い地下通路で槍など邪魔になるだけだが、王城内部で戦うことを想定していたため持ち込んでいた。
槍を構えると、狭い地下通路のお陰で数名でも槍ぶすまを作り出すことが出来る。
ゴドーは兵士の影に隠れながら指示を出す。
「そのガラクタをさっさと壊し、先へと進むぞ。槍兵、前進!」
彼の指示に従い槍兵達が前へと進む。
そのまま槍を振るって、ダークナイトを串刺し。
もしくは突き刺し、ピンに刺さった虫のように動きを止めて、鈍器を持つ騎士が回り込み鎧ごと潰そうと動き出す。
しかしダークナイトは、迎撃もせず、突然、両腕で弧を描き、胸の前で交差!
「な、なんだ? 武術の型?」
突然の意味不明なダークナイトの行動に、槍を振るおうとした兵士達、ゴドー、他の者達も困惑の色を深める。
ダークナイトは止まらない。
そのまま交差した腕は右は天へと翳し、左腕は脇腹へと持ってくる。
最後は左腕を胸の高さに持って行き、右腕を交差!
非常に格好を付けたポーズを取る。
「っ! おおぉッ……」
「こ、これは……ッ」
「くッ!」
ダークナイトの構えに、一部兵士達が驚く。
ダークナイトは『奈落』最下層で、男性陣、一部女性陣からの人気が高い。
理由は……見た目が非常に男心をくすぐるデザインで、ライトは最初に見た際、ダークナイトが今回のようにポーズを取るだけで年相応の男の子のように瞳を輝かせていた。
正直、ライトはダークナイトがあまりにも男心をくすぐるデザインなので、地上で活動する冒険者候補にも上げたが……。
実力はともかく、さすがに『中に人が居る』で押し通すのは難しく却下せざるを得なかった。
ダークナイトは感情がない。
戦闘になれば相手が誰であろうと全力で戦う、文字通り『戦闘機械』だ。
そこに哀れみや昂揚、嗜虐心など、『感情』が介入しない行動が揺らがないのがダークナイトの最も強い面だった。
しかし、自身を顕現してくれたライトに対して絶対的な忠誠心を抱き、『彼が喜ぶことをしたい』とも考えている。
故にライトが望めば何度でもポーズを取りたいと思っているし、格好良いと思われるポーズパターンも複数模索している。
今回、無駄にポーズを取っているのも、初めて地上に出て、任された仕事で、後日、ライトに報告する際、身振り手振りも交えて伝える際に楽しんでもらえるよう演出を付け加えていた。
そして、最後の締めとして、ライト、ナズナ、ゴールドの前でやった際、非常に評判がよかった演出をおこなう。
『…………』
『ドン!』とダークナイトの背後で爆発が起きる!
ダークナイトが攻撃魔術の応用で、ポーズを取った後、彼の背後で爆発が起き、爆炎と煙が舞い上がったのだ。
見た目は派手だが、威力は押さえられ、ポーズと合わさり見た者達から非常に評判が良かった。
ダークナイトが最も自信のあるポーズ&演出である。
この後、彼は狭い地下道で器用に空中で一回転して蹴りを放ったり、地面に着地する際に片腕、足を地面につけて赤いマフラーを靡かせたり、鋭い爪で敵の武器を切り裂いたりする予定だったが……。
「ぎゃぁぁあっ!」
「痛てぇ! 誰か、ポーションを!」
「ああぁ……ッ」
『…………』
いくら威力を弱めているとはいえダークナイトはレベル5000で、敵は低レベルの人種だ。
威力を押さえた攻撃魔術の爆発余波で、ゴドー達は吹き飛ばされほぼ全滅。
一部重傷者も出て死にそうになっていた。
ライト達からすればそよ風でも、低レベル人種からすれば命を落としかねない風の攻撃魔術状態になってしまっていた。
『…………』
これはさすがにダークナイトも予想外で、一瞬驚きでフリーズしてしまう。
だが、すぐに再起動。
この世に顕現してくれたライトから『情報を引き出すため、侵入者がいた場合、殺さず無力化してほしい』と命令を受けている。
指揮官であるゴドーなど、ほぼ前方にいたため、爆風の余波だけで死にそうになっていた。
ダークナイトは淡々と迅速に回復魔術を使いつつ、人種達を気絶させていく。
殺さず無力化のため若干の時間を要したが、それでも5分もかかっていない。
戦闘(一部、兵士の命を助ける救護も混じっていたが)を終えると、気絶した兵士達が秘密通路に倒れ、ダークナイトが一体だけが立つ。
倒した兵士達を回収するため、妖精メイドに念話で連絡を入れる。
以後、撤収指示時間が来るまでダークナイトは再び侵入者が来ないかの監視任務へと付く。
任務に就きながら――低レベルの人種の脆さを計算していなかった自身の行動を反省し、背後の爆発を起こさない『ライトが喜ぶであろう格好良いポーズ』の模索を始めたのだった。