軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

29話 爆発するマジックアイテムの処理

『ヒュッ』と空気を切り裂く音が微かに木霊する。

上空に居るスズが、爆発するマジックアイテムを飲まされた孤児達を睡眠の魔弾で眠らせている音だ。

パレードが通る大通りから筈れた裏路地にある建物の見張りをしている妖精メイド達が、時折聞こえてくる風切り音を耳にしながら会話を交わす。

「元々の作戦の他に、まさか孤児達を助ける作戦を実行することになるとか。予想外にも程があるっていうか~」

「し、し、仕方ないよ。このまま放置したら、元々の作戦にもし、支障が出るわけだし」

現在、上空と地上で連携して、孤児達を救出する作戦が実行されている。

本来、参加する予定がなかった妖精メイド達が、『奈落』最下層から呼び出され眠らされた孤児達を回収し、とある家屋へと輸送していた。

ナズナが勘で偶然爆発物があることを発見したので、完全に予定外の行動である。

「それにユメ様がこ、こ、こ、孤児達を哀れんでご当主様にお願いして、実行されている以上、失敗はありえない。逆に考えれば、お陰で元々の作戦に影響が出ずに済んでラッキーと考えればいいし」

「まぁねぇ。それにしても孤児達を助けようとするユメ様、本当に天使。もちろん、孤児達を哀れんで助ける許可を出したライト様も優し過ぎるっていうか」

「で、でもその結果、ユメ様の身柄の安全を考えて、楽しみにしていたパレード見学が中止になったとか。まだお祭りを回る時間もあったのに。ユメ様、お可哀相……」

現在、ユメはネムム、ゴールドが護衛につき宿泊していた高級宿屋へ帰宅。店員達の目を考え建前上、部屋にいることになっているが、安全を考えて『奈落』最下層に帰還している。

予定外の孤児爆弾が発生したため、万が一を考えての処置だ。

「けどさ、地上のお祭りって正直微妙じゃない? お祭りの雰囲気はいいけど、屋台の料理もあんまり美味しくないし、甘味系も微妙で、水すら不味いし」

ギャル系妖精メイドが素直な感想を告げる。

妖精メイド達も折角の地上ということで、休憩時間中に屋台などを回っていた。

地上で活動する『奈落』メンバーからの評判は元々あまり良くなかった。

もちろん全部が全部不味いわけではない。

ゴールドなど一部の者が地上の珍味、酒類、ゲテモノ系などを『美味しい』、『癖になる』、『味わい深い』と評価していた。

とはいえ全体的にはあまり評価が高くなかったが……。

『なら、実際、どれほどのものなのか』

気になるのが人情である。

妖精メイド達は羽根を隠し、目立たぬ服装で初めて地上で飲食したが……。

耳にしていた通り、『奈落』と比較してあまり美味しくなかった。

オタクっぽい妖精メイドが同意の声をあげる。

「た、確かに美味しくなかったよね。お肉は硬いし、なんか臭みがあって、味付けが基本塩味だし」

「そうそう、っていうか。果実水すら不味いとかどうなの? あんまり甘くない上、雑味があって、果実の美味しさを殆ど感じないとか」

『奈落』最下層の飲食は、ライトの『無限ガチャ』カードで賄われている。

『無限ガチャ』から排出される飲食カードにもレア度があり、当然高い方が美味しい。

例えば小麦など、明らかに高い方が甘みが高く、ただ焼いたパンだけでも地上にある高級宿屋が作るパンより圧倒的に美味しかった。

「だからユメ様もパレードはともかく、これ以上、お祭りに居ても多分得られる物がないっていうか。むしろ、ライト様やユメ様が不衛生で怪しげな料理を口にしなくてよかったかも」

「た、た、た、確かにそれはある」

ライトはレベル9999で毒物無効化の耐性を持っている。

ユメはマジックアイテムで同じく無効化しているため、例え猛毒を飲まされても問題はないのだが。

妖精メイドの心情的にこれ以上、主人に怪しげな物を口にしてもらいたくはなかった。

「――と、そろそろ時間っていうか」

愚痴り合っていると、予定していた時間……最初に反リリス派が街中に流し込んだ『爆発するマジックアイテム』の起爆時間が近付く。

事前に気付いたライト達は孤児のを除いた『爆発するマジックアイテム』を全て回収。

それらはパレードがおこなわれる大通りから外れた裏通りの一角にある、とある建物に集められていた。

この一角にある建物は無人で、老朽化にともない元々壊す予定だった。

そこに『爆発するマジックアイテム』を集めて、エリーが周辺に結界を構築。

上部分だけ何も手をつけておらず、爆発すると上空に向けて爆発する力が逃げる仕組みになっている。

パレードがおこなわれる大通りから遠すぎず、近すぎない無用な建物を破壊させることで『反リリス派が問題をおこした』とし、彼らを処分するため建前を作ろうというのだ。

念のため周辺から人が近付かないよう、エリーが『迷いの結界』を張っているため、人気は無し。

妖精メイド達が建物の側に見張りとして居たのもあくまで『念のため』である。

オタクっぽい妖精メイドが、懐中時計を取り出す。

「ば、爆発1分前……」

時間が近付くと秒読みを開始する。

「5、4、3、2、1――ゼロ」

彼女の秒読み通り、『爆発するマジックアイテム』が予定通り爆発。

爆発するエネルギーが四方を結界に阻まれ、唯一あいている上空へと逃げる。

煙突のようにかなり上の方まで結界が伸びているため、爆発エネルギーは地上から大分離れた場所で解放された。

お陰で地上にはまったく被害が無い。

音も小さく、煙も舞い上がるが連続して爆発する訳でもないのですぐに霧散してしまう。

近くにいた人々も最初こそ、突然の爆発に驚いたが、特に被害らしい被害がないのと、爆発音が続かず、それ以上特に変化がないためざわめき程度でしか広がらない。

近くにいた警備兵士が事前の通達通り『問題はない』と触れ回っているお陰で、騒ぎもすぐに集束してしまう。

ただし、遠くから首都の混乱を窺う者達――反リリス派からすれば非常に良い目印になるだろう。

それが例え自分達の破滅を意味する目印だとしてもだ。

「さて、あーし達の用件も終わったし、報告しに戻ろうっていうか」

「りょ、了解」

見張りを終えた妖精メイド達も、報告するためその場から離脱する。

後に残ったのは、元々取り壊す予定だった建物の残骸だけだった。