軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28話 孤児救出

人種王国首都王城内。

玉座の間には『巨塔の魔女』を始め、エルフ女王国、ドワーフ王国、獣人王国の使節団や、他関係者が勢揃いしていた。

その中を1人の女性が入場し、玉座の間を歩き出す。

玉座の上には王冠が置かれ、左右に人々が居る間を移動する。

階段を上がり、玉座に置かれた王冠を手に取ると、自身の頭へと頂く。

振り返り、彼女――リリスは宣告する。

「私、リリスは人種王国女王として即位し、以後、国のため、民のため、そして女神のため、この身を捧げ皆の平和を築くことを誓います!」

リリスの宣言後、玉座の間に拍手が満ちた。

『巨塔の魔女』を含めた、その場に居る皆が、リリスの即位を認め、祝うように手を叩く。

これで終わりではなく、まだ儀式は続く。

一通り終わった後、国民に『リリスこそが現人種王国女王だ』と告げるためのパレードがおこなわれる。

本来、式典が終わるまで『巨塔の魔女』は最後まで付き合わなければならない。

今や大陸で一番勢いのある『巨塔の魔女』がバックにいるから、リリスは『人種王国女王』と認められているためだ。

なので『巨塔の魔女』エリーは『途中で急用が出来たから、ちょっと抜けます』など絶対に出来ない。

とはいえ、ナズナが勘で孤児達の異変に気付き、体内にある爆発するマジックアイテムを発見。

ライトがユメに対して『孤児達を誰も死なせず助ける』と約束した。

そのために『巨塔の魔女』エリーの力は必要不可欠である。

なので現在、式典に参加している『巨塔の魔女』は偽者だった。

急遽、メラを呼びだし、入れ替わってもらったのである。

『UR キメラ メラ レベル7777』ならば、細胞を変化させた他者に姿を変えるのは朝飯前だ。

面倒な儀式に参加するのは億劫だが、敬愛するライトからの命令のため、喜々として任された仕事をこなす。

では、本物のエリーは現在、どこに居るのか?

☆ ☆ ☆

「孤児達に爆発するマジックアイテムを飲ませて、わたくし達が回収し隔離した爆発物の代わりにしようとするなど……。これを考えた輩は性根が腐りきった外道ですわ」

「(コクコクコク!)」

人種王国上空。

エリーは魔術で足場を作り出し、眼下に首都の街を見下ろす。

彼女の力で作り出した足場に、スズも立ち、エリーの言葉に何度も頷き同意する。

かなりの上空のため、目を凝らさなければ、2人を目にするのは難しいが、念のためエリーの魔術で他者に姿を認識されないように阻害してある。

そんなエリーの周りを魔術写本×4冊が回転している。

彼女は憂鬱そうに額を片手で押さえた。

「もしナズナさんが気付かず孤児達を放置してしまっていたら……。ぞっとしませんわね」

「(コク)」

エリーの台詞にスズが再度無言で頷く。

別に彼女達は、話をするため上空に移動した訳ではない。

ライトの指示で爆発するマジックアイテムを飲まされた孤児達全員を救い出すため、この場に移動したのである。

エリーはスズを相手に一方的な会話をしつつも、手のひらに収まるアメ玉のようなマジックアイテム――ナズナが発見、強引に摘出した孤児達が飲まされた爆発するマジックアイテムをサンプルに、同じ魔力を探し出しているのだ。

エリーの探査を補助するため、魔術写本が彼女の周囲を回転し、人種王国首都全てを探知。

どこに、どれだけ爆発するマジックアイテムを飲まされた孤児達が居るのか把握しているのだ。

本来、体内にあるマジックアイテムを発見するのは難しいが、サンプルとなるマジックアイテムが手元にある。

そのためサンプルの魔力を元に『SUR 禁忌の魔女エリー レベル9999』が能力のごり押しで、位置を特定しているのだ。

問題の孤児達を全員把握すると、エリーは側にいるスズへと指示を飛ばす。

「それではいきますわよ、スズさん、ロックさん!」

「(コクリ!)」

『オ任セクダサイえりー様。相方モ非常ニヤル気ニナッテイマスカラ!』

「心強いですわ。では、まず西南西、距離は――」

エリーが指示を飛ばすと、スズがその場で片膝を突き、言われた方角、距離、角度に向けて魔弾を発射!

エリーが指示した場所に居る孤児達を睡眠の魔弾で眠らせているのだ。

さらにエリーは並列思考で地上にいる妖精メイド達に、狙撃し眠らせた孤児達の位置を知らせる。

「次はそちらの路地裏に眠る孤児達の保護をお願いしますわ」

『畏まりました、エリー様』

孤児達は常に立ち止まっている訳ではない。

なのでどうしても、その場に足止めする必要があった。

故に指示を出すエリーの側にスズを置き、睡眠の魔弾で眠らせたのである。

もちろん睡眠の魔弾など使わず妖精メイド達が、エリーの指示で孤児達と接触する方法もある。

レベル500の妖精メイド達からすれば人種孤児を取り押さえるのは難しくない。とはいえ、暴れられて下手に傷を負ってもらっても困るため、今回のような方法を採らせてもらったのだ。

さらに妖精メイド達は孤児達を集めて保護するために、今回ライトからの指示で『UR 一時停止(タイム・ストップ) 』を使用する。

『UR 一時停止(タイム・ストップ) 』――敵単体に対して、時間を遅くして、敵を24時間停止させる。敵からすると1秒だけ停止したと誤認するが、実際の時間軸だと24時間経過している。1秒=24時間状態。

という『無限ガチャ』カードだ。

すやすやと眠る孤児達を妖精メイド達は確保後、指定された箇所――爆発しても被害を押さえられるように結界が張られた大広間がある家屋へと移動させる。

その後、『UR 一時停止(タイム・ストップ) 』で全員の時間を停止。

後日、解除して、即座に体内にある爆発するマジックアイテムを取り出す予定だ。

爆発するマジックアイテムを体内から取り出すのは容易ではなく、孤児達の数も多く、もたもたしていれば時間になって一斉に爆発する。

逆に言えば、時間が経過しなければ爆発はしない。

なので『UR 一時停止(タイム・ストップ) 』を使い時間を停止させ、孤児達を回収後、順番に爆発するマジックアイテムを体内から摘出する――以上がライトの出した救出案だ。

(ユメ様のお願いとはいえライト 神様(しんさま) も思い切った作戦をとりましたわよね……。今回仕掛けた敵からすれば、絶対に防ぐことが出来ない罠を張ったにもかかわらず、このような方法で皆を助けてしまわれるなんて。まさに夢にも思わないでしょうね)

エリーは位置特定、指示を出しつつも、頭の片隅でつい考えてしまう。

敵からすれば、例え孤児達の体内に爆発するマジックアイテムがあることを気付かれても、全員を助け出すのは不可能。

絶対に犠牲者は出て、街は混乱すると予想していたはずだ。

しかし結果はライトがエリー達の協力、『無限ガチャ』カードの力で正面からねじ伏せた。

敵側からすれば悪夢でしかない。

エリーは敬愛するライトの持つ力の大きさを改めて認識し、喜びに震える。

(さすがライト 神様(しんさま) ですわ! やはりライト 神様(しんさま) こそ、この世で最も偉大なお方ですわ!)

「?」

側で指示に従い射撃をするスズが、突然自分の体を抱きしめ喜びで震え出すエリーに気付き、怪訝な視線を向けてしまう。

若干訝しみつつも、スズは自身の仕事に専念した。

――こうしてライトの惜しみないカード放出、エリー、スズ、妖精メイド達の頑張りのお陰で爆発するマジックアイテムを飲まされた孤児達は全員無事に保護することに成功する。