作品タイトル不明
27話 ナズナの勘
「な、ナズナ!?」
ナズナの突発行動に、僕達は驚き一瞬固まる。
しかし、そのまま固まってはいられない。
ナズナはさらに手にしたカードを 解放(リリース) しようとする。
「ッ!」
僕のアイコンタクトに合わせて、メイ、ネムム、ゴールドが動く。
僕がユメの護衛に付き、メイは『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で路地裏に居る孤児達の意識を奪う。
ネムム、ゴールドはナズナの壁になって大通りからの視線を遮った。
ナズナはカードを 解放(リリース) 。
やはり取り出したカードは『SSSR 祈りの息吹(オーバーヒール) 』で、お腹をぶち抜いた孤児の傷は一瞬で修復される。
『SSSR 祈りの息吹(オーバーヒール) 』の光が漏れ出るが、ネムム、ゴールドが壁になったお陰でそこまで目立つことはない。
さすがに傷は癒えたが、お腹をぶち抜かれたショックで彼女も意識を失いその場に倒れ込む。
地面に倒れる寸前、メイが『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で受け止めた。
一連の出来事は数秒程度で僅かながら注目を集めたが、今はお祭りの最中。
『大道芸か何かの準備か』と疑問を抱かれたが、取り立て騒がれることはなかった。もしお祭り中でなければもう少し注目を集めていただろう。
僕はユメの手を握り締めつつ、ナズナの元へと急ぐ。
もしメイが孤児達を気絶させ、ネムム、ゴールドが大通りの目隠しにならず、カード使用を大勢の人々に見られでもしたら、より大きな問題になっていた可能性もあった。
だが、ナズナは神妙な顔で、孤児少女のお腹をぶち抜き引き抜いた手のひらを僕へと突き出し見せてくる。
「ご主人様、コレを見てくれ」
「! コレは……」
彼女の手のひらの上にはアメ玉のような物が乗っていた。
僕は目を細めてそれを確認した後、メイに視線を向ける。
メイは僕の視線に、気付き彼女の手のひらにあるアメ玉のような物を鑑定すると……。
「……ッ!? これは爆発する小型のマジックアイテムです」
メイが説明する。
このマジックアイテムを飲み込むと一時的に身体能力が上昇。高揚感も得て、傷、病気などを負っていても痛みを中和され、動くことが出来るとか。
但し一定時間経つと、周囲を巻き込むほどの爆発を引き起こすらしい。
僕達は一通りの説明を聞き終えると、あまりの内容に『ユメの耳を塞いでおけばよかった』と僕は後悔しつつ、声をあげる。
「何でそんなマジックアイテムが孤児の体の中にあるんだ? いくら身体能力が上がるとはいえ、最終的には自分もろとも爆発する危険物を自分から飲む筈がない」
いくら孤児達が切羽詰まっていても、内容を知っていたら普通はこんな危険物を自分からは飲み込まない。
メリットが『一時的に身体能力が向上する』程度で、デメリットが大きすぎるからだ。
先程の彼女達の態度を思い出す。
(3人とも見るからに孤児だけど、お祭りの雰囲気もあってどこか楽しげだったよな。自爆特攻を企んでいるような悲壮感なんて無かったし……。つまり何者かに騙されて、このマジックアイテムを飲み込まされたんだろう)
やり口が明らかに『マジックアイテムに爆弾を付与した手口』に似ている。
今回爆弾が付与されたのが、マジックアイテムか、孤児かの違いしかない。
僕は思わず舌打ちしそうになるが、手を繋いでいるユメが怖がらないように堪えた。
(恐らく反リリス派の奴らがやったんだろうな。でも、反リリス派の貴族子弟達は監視している。もし孤児を使って自爆なんてマネされたらすぐ気付くはずなんだけど……)
僕が胸中で考察していると、メイがナズナに声をかける。
「断りも入れず独断専行は問題行為ですが、孤児達の体内にこのような悪辣なマジックアイテムを発見したのはお手柄です。しかし、よく気付きましたね。他者の体内にあるマジックアイテムは気付き難いものなのですが……」
通常、体内に仕込まれたマジックアイテムは、肉体内部にあるため視覚で発見など出来ず、本人の魔力のせいで探知するのも難しい上、『どのようなマジックアイテムか』などまず分からない。
なのにナズナは一目でその危険性を理解し、問答無用で素手で抜き取り、『無限ガチャ』カードの力で回復させたのだ。
「……勘だよ。あたいが取り出したこの子の他にそっちの2人にも同じのが入っている。勘だけど、他の孤児達もこのマジックアイテムを飲ませられてるぞ」
「!?」
ナズナの発言にメイは息を呑む。
彼女達の他にも多数の孤児達が自爆用マジックアイテムを飲ませられている。
恐らく爆発するマジックアイテムを僕達に気付かれ、押さえられたことに気付いた反リリス派が、次は勝手に動く孤児達を首都混乱の代替にしたのだろう。
これはもう外道行為というレベルではない……!
ナズナが珍しく心底本気で不快そうに爆発マジックアイテムを握り締め、眉根を潜める。
「あたい、こんなマネした奴、大嫌いだ。マジで許せないぞ……ッ」
「ナズナちゃん……」
孤児達を一方的に利用し、勝手に動き回る爆弾化したことに怒るナズナに、ユメも同意して同情的な声で彼女の名を呼ぶ。
未だ僕と手を繋いでいるユメが、ぎゅっと手に力を込めてこちらを見上げてくる。
「にーちゃん……」
「大丈夫だよ、ユメ。僕達に任せろ」
ユメとナズナの気持ちと僕達の気持ちは同じだ。
孤児達を爆弾代わりにするなど、許せるはずがない。
ユメがお願いしなくても、爆弾化した孤児達を誰一人死なせず、全員救ってみせる!
僕は妹ユメを見下ろし、繋ぐ手を握り返し、一度頷くと、すぐに指示を飛ばす。
「ネムム、ゴールド、今日の観光は中止して宿に戻りユメの護衛を頼む。孤児達の位置を特定するためエリーの力が必要だ。メイはすぐにエリー、そしてメラとスズに連絡して、合流しよう。僕の名において誰一人死なせず全員助け出すぞ……ッ」
僕の言葉に、ユメは笑顔を浮かべ、ナズナが真面目な顔で同意の声をあげる。
他メイ、ネムム、ゴールドも僕の指示に従い早急に動き出したのだった。