軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21話 お祭り1日目、的当て1

「おおおぉおぉ! めっちゃ人がいる!」

人種王国首都は、現在『人種王国女王就任式典』がおこなわれているため、街全体がお祭り状態になっていた。

元々住んでいた住人だけではなく、今回のお祭りを商機と捉えた商人達、僕達のようにお祭りを楽しむため訪れた者達、警備兵士などが、大通りを埋め尽くす。

ユメと手を繋ぐナズナが、その人通りの多さに驚きの声をあげた。

「年越しのお祭りより人が多いよー」

数年間人種王国の首都で暮らしていたユメも感心するほど、人が多いようだ。

それだけ今回のお祭り、『人種王国女王就任式典』の注目度が高いのだろう。

僕達は道端に集まりながら、ユメとナズナに注意を飛ばす。

「二人とも見ての通り人通りが多いから、迷子にならないようにちゃんと手を繋いで行動するんだよ。それと僕達の指示にちゃんと従うこと。何か問題や疑問があったら、遠慮なく声をかけてね」

「分かったぜ、ごしゅ――ダーク様!」

「ちゃんとみんなの指示に従うから大丈夫だよ」

ナズナが『ご主人様』と僕のことを呼びそうになる。

一応、現在僕は立場上、大商の娘、その乳姉妹の二人を護衛する『黒の道化師』パーティーの一員でしかない。

なので、『ご主人様』や『にーちゃん』と呼ばれるのは不味いため、冒険者時の偽名である『ダーク』と呼ぶようにお願いをしていた。

ユメの『にーちゃん』呼びは誤魔化せなくもないが、さすがにナズナの『ご主人様』呼びは不味い。

早速、ナズナが口にしそうになったが、ギリギリ耐える。

若干の不安を覚えつつも、早速お祭り状態になっている街を練り歩く。

まずはやはり屋台に足が向いた。

「妹様、見て見て、お菓子が売っているぞ!」

ナズナが指差した先には、屋台があり、お菓子を売っていた。

ユメはナズナや僕達に得意げに語る。

「あれは木の実やドライフルーツなんかを混ぜて焼いたクッキーだよ。お祭りとかに必ず出てくる定番のお菓子なんだ」

「へぇ~、妹様は物知りだな!」

(街のお祭りではお菓子が売っているのか……)

個人的には村でのお祭りの時は、『肉やパンがお腹いっぱい食べられる』印象しかなかった。

新年を祝い、大人達は酒を飲み子供達はお腹いっぱいご飯が食べられる、一年で一番楽しみだった日である。

と言っても甘味まで手に入れる程の余裕はなく、お祭りで『お菓子を食べる』という習慣は一般的な村にはない。

街ならではと言えるだろう。

ユメは数年間住んでいただけあり、村のお祭りとの落差を気にしていないようだ。

折角なので、木の実、ドライフルーツが練り込まれた焼き菓子を買う。

メイが支払いを済ませ、焼き菓子を受け取る。

「懐かしい味だよ。派手な味じゃないけど、素朴っていうか、落ち着く味だよね」

「難しいことは分からないけど、妹様の言う通り美味いな、これ!」

ユメは焼き菓子を懐かしみつつ食し、ナズナは美味しそうに焼き菓子を口に入れる。

僕達も護衛だが、折角なので一枚ずつ口にした。

(確かにユメの言う通り、派手さはないけど、素朴な味だな)

『奈落』最下層で食べるお菓子などと比べると、一段どころか数段味は落ちる。だからと言って、この焼き菓子が不味いわけではない。

素材の質は低いが、知恵を絞り、少しでも美味しくなるように努力しているのが分かる。またそのためか、どこか懐かしさすら感じる味がするのだ。

「けけけけけ! スズおねえちゃん、あたしもあの焼き菓子を食べたい!」

「…………」

声に振り返ると、少し離れた場所にいる背丈が縮んだロリメラが、側に立つ頭からフードを被った少女――スズにじゃれつき年相応の少女の如く甘えた声をあげる。

二人とも、距離をとって外からユメを守るために付いている護衛だ。そのため、僕達とは無関係に見えるように独自に動いている。

メラは僕の指示で体を調整して、現在のユメと同世代程度の少女に姿を変化させている。少女単独で動くと目立つため、一緒にスズに姉妹設定で付いてもらっているのだ。

スズはメラに『おねえちゃん』と呼ばれて、微妙な雰囲気を漏らしていた。

「けけけけけけ! いいでしょ、スズおねえちゃん。あたしにも焼き菓子買ってぇ~!」

ロリメラは微妙な雰囲気を漏らすスズが心底面白いらしく、からかうように幼い少女の態度をとる。

周囲を行き交う人々はロリメラの可愛らしい容姿も合わさって微笑ましい視線をスズ達姉妹に向けていた。

その視線がさらにスズの微妙な雰囲気を加速させている。

(ある意味、自然なやりとりということで良しとしよう)

スズがギクシャクした動きで財布を取り出し、ロリメラの焼き菓子を購入。

僕もロリメラの演技に微苦笑を漏らし、意識をユメ達へと向け直す。

ユメが次に向かったのは大道芸がおこなわれている広場だ。

「見て、ナズナちゃん、ナイフ投げやっているよ!」

「ナイフなげ?」

ナズナがユメの言葉に首を捻る。

「あのね、ナイフ投げっていうのはね」

ユメ曰く、広場では大道芸――芸を見せて観客からおひねりをもらう者達が大勢集まっているが、一部お客に遊びをさせる者達も存在した。

その代表がナイフ投げである。

お金を払って的に向けて3本のナイフを投げる。

三本見事的の真ん中に刺されば、支払ったお金以上の金銭が戻される――という遊びだ。

ナイフと的さえあればどこでも出来るため、街のお祭りでは定番だとか。

「ユメが手本を見せてあげるね!」

ユメが興奮気味にナズナと僕の手を掴んで引っ張り、列へと並ぶ。

どうやら僕達に良い所を見せたいらしい。

僕の後ろにネムムも並ぶ。

メイとゴールドは列にこそ並ばないが、護衛として側についていた。

ユメの順番が来ると、メイから手渡された金銭を支払いユメがナイフを受け取った。

彼女はにこにこ笑いながら、振り返り告げる。

「見ててね!」

ユメが的へ向き直ると、投擲!

一本目は外れて、二本目は的まで届かず、三本目は的の端と刺さる。

「やった! 前にした時は一本も刺さらなかったけど、一本刺さったよ!」

ユメがきゃっきゃっと手放しで喜ぶ。

その姿が可愛らしかったのか、見物客から温かな拍手が届く。

「凄いな、妹様! それじゃ次はあたいがやるぜ!」

ユメの成果を褒めつつ、ナズナが腕まくりの仕草を見せて料金を支払いナイフを受け取る。

的に刺さったユメのナイフが抜かれて、指定された位置へと立つ。

ナズナはオヤジさんから手渡された3本のナイフを手で遊ばせながら、右手で一本ずつ投擲する。

「ほい、ほい、ほい!」

テンポよく、ナイフをポンポンと投げ、三本とも全て真ん中へと刺す。

見物客達は、ナイフが1本ずつ刺さるたび、歓声を大きくしていく。

最終的に三本全部が的の真ん中に刺さると、感心したように拍手を送ってきた。

ナズナは皆からの感心した拍手に大きな胸を張る。

レベル9999のナズナならこれぐらい楽勝だろう。

「凄いよ、ナズナちゃん! 全部、的の真ん中に刺さるなんて!」

「まぁ、あたいにかかればこれぐらい余裕だぜ!」

「いや、本当に凄いねお嬢ちゃん、はい、これ返金と賞金ね」

「ありがとう、おじちゃん!」

店のオヤジさんが、参加料金とその倍額をナズナへと渡す。

ナズナは笑顔でお礼を告げた。

次はいよいよ僕の番だ。

「頑張って!」

「ごしゅ――ダーク様! 頑張るんだぜ!」

僕がオヤジさんにお金を支払い、ナイフを三本受け取る。

背後からユメとナズナが声援を送ってきた。

(……兄として、『奈落』最下層を統べる主として絶対に的へと当てないと)

僕自身、妹達に良い所を見せて兄、主としての威厳を見せるため気合いを入れ直しナイフを構えたのだった。