軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11話 セスタの評価と保険

「アァァッ? セスタに手を貸して欲しいだァ?」

「はい、どうか頼めませんかね」

竜人帝国所属のマスター達が集まる部屋がある。

その一室で細目のヒソミが、禿頭で長身のルカンを連れて、元魔人国マスターのトップであるゴウへ仕事を依頼していた。

その仕事内容は『「巨塔の魔女」にちょっかいを出すセスタに手を貸して欲しい』というものだ。

早い話、『セスタが危機に陥ったら、助ける手助けをして欲しい』という、ある意味保険をかけるためのものである。

ゴウはソファーに大股を広げ座りながら、反論する。

「アァッ! 俺様が手を出すなと釘を刺したにもかかわらずオマエ達が『本当に報告通り禁忌の魔女が規格外の力を持っているかを確認したいから、セスタの息抜きがてら手を出すのを許可する』とかなんとか言ったんじゃねぇかァッ。なのに今更、保険云々言い出しやがって……舐めているのかァ?」

「ゴウ殿のお気持ちは分かります。ですが実際確認は大切ですし、セスタ殿も『P・A』関係の仕事ばかりでストレスが溜まっているようで、息抜きをさせないと変な方向に暴発されても困りますから……」

『ですが』とヒソミが続けた。

「こないだ魔術道具や人種奴隷を集めて欲しいと依頼を受けたのですが、どうも彼、久しぶりに暴れることが出来るせいか、タガが緩んでいるというか、気持ちが緩んでいるというか……。実力的には小生より高いですし、心配するのも烏滸がましいのですが、何かやらかしそうで。彼にはまだ仕事が残っているので、本当にいざという時は手助け出来るようにしておきたいのですよ」

「チッ! なら、今すぐあのクソガキを止めてくればいいだろうがよォッ」

ゴウが不機嫌そうに正論を告げる。

この指摘にヒソミは気まずそうに愛想笑いを浮かべた。

「そうしたいのはやまやまですが……。一度許可した手前、撤回するのはちょっと……」

「お役所かよォ。本気で面倒だな……。クソが、最悪またあの化け物と対峙することになるかもしれないのかよォッ」

ゴウは以前戦ったナズナの姿を思い出し、彼には珍しく怯えの色を見せたが、すぐに引っ込める。

彼の性格上、自身の弱気な態度を表に出し続けるなど出来ない。

そんな彼に向かい側のソファーにヒソミと一緒に座っていたルカンが口を開く。

「この保険には私も参加させてもらう予定です。私、ヒソミ君、ゴウ君が揃えば、セスタ君が少々失敗してもどうにでも挽回できるかと」

「他にも戦力的に 黒(ヘイ) 殿の協力が欲しかったのですが……」

「アァッ…… 黒(ヘイ) がカイザーの側を離れるなんて、よほどの事がないと無理かァ」

ヒソミの言葉にゴウが納得した表情を作る。

黒(ヘイ) は実力こそ高いが、カイザーの側を離れたがらないため、戦力として換算するのはなかなか難しい。

ヒソミが肩をすくめて微苦笑する。

「 黒(ヘイ) 殿の穴埋めではないですが、お忙しいルカン殿の協力を取り付けることが出来ました。後はゴウ殿が協力してくれれば、問題ないと小生は考えているのですが……」

「……チッ! わーったよ。ルカンには借りがある。その借りを返す機会だと割り切ってやるさァ」

ゴウは竜人帝国側マスターと合流する前、ルカンに依頼して体に付着した追跡用のメラの血を洗い流してもらった。

その借りを返すため、渋々ながら了承する。

ゴウの協力を取り付けることが出来て、ヒソミが安堵の溜息を漏らす。

「ありがとうございます。これで小生も安心できますよ」

「私としても、ゴウ君が協力してくれるなら心強い。ですが、セスタ君の実力的にそうそう後れをとるとは思えませんがね。ヒソミ君の今回の根回しも正直に言えば、やや勇み足ではないかと思っているぐらいですよ」

「……まぁルカンの指摘通り、あの化け物以外、 セスタ(クソガキ) が実力的に後れをとることはないだろうと思うけどな」

ルカンの言葉に『 セスタ(クソガキ) 』と口にするゴウすら、彼の実力は認めていた。

二人の指摘にヒソミが肩をすくめる。

「小生だって、セスタ殿の実力は認めていますよ。さらに言えば、セスタ殿のあの性格か天性の才能かは分かりかねますが、人の嫌がることをやらせたら、我々の中で一番ですからね。そうそう後れはとらないでしょう」

ヒソミの言葉にゴウが同意の声をあげる。

「ハッ! 確かにあの セスタ(クソガキ) の性格の悪さは、俺様でも足下に及ばないぜ。その性格の悪さから相手の嫌がることをすぐに察して、躊躇いなく行動できるのがあいつの強みといえば強みだな。そういう意味でマスター連中の中で一番性格が悪いんじゃないかァ?」

「性格の悪さなら小生的には、魔人国のドク殿一択だと思いますよ? 小生が言えた義理ではありませんが、『人種の未来のため云々』と叫びながら、実験動物以下の扱いするとか……」

「ドクのクソ野郎はイカレているから、性格云々なんて関係ねぇよ。今頃、『巨塔の魔女』達に殺されているだろうがなァッ」

ヒソミの反論に元魔人王国『マスター』リーダーらしい分析をゴウが口にした。

ドクの場合、自身の研究所で人種を残酷な実験動物以下の扱いをし続けてきた。

しかし、彼自身、本心から『人種の未来のため』と考え、研究を続けてきたのだ。その方法に目さえ瞑れば、性格自体はセスタほど悪くはないと言えるのかもしれないが。

「私としてはセスタ君は『性格が悪い』というより、相手の弱点を突くのが上手いイメージですけどね。まぁそれを『性格が悪いせい』と指摘されたら、反論できませんが」

「アァアッ、ルカンは相変わらずゲロ甘いな。あの セスタ(クソガキ) の場合、単純に底意地が悪くてずる賢いだけだろうがァッ」

ルカンの発言にゴウが食いつく。

彼の反論にルカンは、反発せず、微苦笑を浮かべて肩をすくめるだけだった。

ルカンの大人の対応にヒソミが助け船を出す。

「とりあえず、セスタ殿が危なくなったら小生達で手助けするということで。あくまで小生達は保険。危なくならないことが一番なのですが。 黒(ヘイ) 殿が手を貸してくださるとより安全度は増すのですが……」

「 黒(ヘイ) はなァ……」

「 黒(ヘイ) 君はカイザー君にべったりだからね……」

ヒソミが場をまとめて話題を別の方向へと反らした。

ゴウ、ルカン、どちらも 黒(ヘイ) の良く言えば首尾一貫、悪く言えば頭の固い態度に溜息を漏らすのだった。